蚊帳
蚊帳(かや、かちょう[1]、ぶんちょう[1]、蚊屋)は、蚊などの害虫から人などを守るための網。
概要
1mm程度の網目となっており、虫は通さず風は通すため、麻などの繊維、のちに化学繊維でも作られている。
歴史
蚊帳の使用は古代にまで遡り、エジプトのクレオパトラが愛用していたという[2]。18世紀にはスエズ運河の建設など、熱帯地方での活動に蚊帳が使用された記録がある。
日本には中国から伝来した。当初は貴族などが用いていたが、江戸時代には庶民にも普及した。「蚊帳ぁ、萌黄の蚊帳ぁ」という独特の掛け声で売り歩く行商人は江戸に初夏を知らせる風物詩となっていた。
現在でも蚊帳は全世界で普遍的に使用され、野外や熱帯地方で活動する場合には重要な備品であり、大半の野外用のテントにはモスキート・ネットが付属している。また軍需品として米軍はじめ各国軍に採用されており、旧日本軍も軍用蚊帳を装備していた。
現在、蚊帳は蚊が媒介するマラリア、デング熱、黄熱病、および各種の脳炎に対する安価で効果的な防護策として注目されている。国連および世界保健機関(WHO)は普及を積極的に推進しており、アフリカ諸国や東南アジアなどで蚊帳を約2.50ドルから3.50ドルで配布している。日本も2003年よりODAやユニセフを通じた支援を実施、3年間で200万張以上の蚊帳を世界各国に配布している。ナイジェリアでは、テレビドラマやコマーシャルを通じたPR活動が行われた。
海外支援用の蚊帳については、ピレスロイド系殺虫剤を練り込んだ蚊帳をWHOが採用している。これは、蚊が触れるだけで殺虫効果があり、5年間ほど効果が持続する[3][4]。2000年、世界保健機関(WHO)から蚊帳の増産とアフリカへの無償技術移転を依頼された住友化学はタンザニアに工場を2箇所建設している[5]。
使用
就寝時に用いることが多く、簡単に取り付け、取り外しができるよう長押(なげし)のくぼみが鉤(かぎ、フック)をかけるのに利用された。また、長押に鉤を打ち付けておき、それに輪型の釣具を掛ける方式もある。その長押は、今日の日本家屋からは消滅しつつある。
生活環境の変化、すなわち殺虫剤や下水の普及による蚊の減少および気密性の高いアルミサッシの普及に伴う網戸の採用、さらに空調設備の普及により、昭和の後期にはほとんど使われなくなった。しかし蚊帳は電気も薬品も使わない防蚊手段であり、エコロジーの観点や薬品アレルギー対策として見直され始めている。
バリエーション
現代では傘を伏せたような形状の小型で折り畳みの式のワンタッチ蚊帳も販売されているほか、乳幼児用のベビー蚊帳も販売されている。
歩きながら使える形式、また帽子にとりつけて顔のみを覆う形式の蚊帳もある。
ワンタッチ蚊帳とほぼ同じ形状のものであるが、害虫から食品を一時的に保護するためのものは蝿帳という。