蘭奢待
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蘭奢待(らんじゃたい、蘭麝待とも表記)は、東大寺正倉院に収蔵されている香木。天下第一の名香と謳われる。
正倉院宝物目録での名は黄熟香(おうじゅくこう)で、「蘭奢待」という名は、その文字の中に"東・大・寺"の名を隠した雅名である。
その香は「古めきしずか」と言われる。紅沈香と並び、権威者にとって非常に重宝された。
特徴
長さ156cm、重さ11.6kgの錐形の香の原木。
成分からは伽羅に分類される。
樹脂化しておらず香としての質に劣る中心部は鑿(ノミ)で削られ中空になっている(自然に朽ちた洞ではない)。この種の加工は900年ごろに始まったので、それ以降の時代のものと推測されている。
由来と歴史
東南アジアで産出される沈香と呼ばれる高級香木。日本には聖武天皇の代(724年–749年)に中国から渡来したと伝わるが、実際の渡来は10世紀以降とする説が有力である。一説には『日本書紀』や聖徳太子伝暦の推古天皇3年(595年)記述という説もある。
奈良市の正倉院の中倉薬物棚に納められており、これまで足利義満、足利義教、足利義政、土岐頼武、織田信長、明治天皇らが切り取っている。
2006年(平成18年)1月に大阪大学の米田該典(よねだかいすけ准教授、薬史学)の調査により、合わせて38か所の切り取り跡があることが判明している。切り口の濃淡から、切り取られた時代にかなりの幅があり、同じ場所から切り取られることもあるため、これまで50回以上は切り取られたと推定され、前記の権力者以外にも採取された現地の人や日本への移送時に手にした人たち、管理していた東大寺の関係者などによって切り取られたものと推測される。
文献
- 米田雄介・杉本一樹『正倉院美術館』p348-351(講談社、2009年)ISBN 4-06-215887-6
- 米田該典 全淺香 黄熟香の科学調査 正倉院紀要 第22 平成12年 3月