自由振動
テンプレート:出典の明記 自由振動(じゆうしんどう、テンプレート:Lang-en、テンプレート:Lang-en)とは、ある系がその固有振動数で振動することである。減衰のない自由振動では強制振動とは異なり、系に外部から力が作用しなくても運動しつづける。
単振動
フックの法則
テンプレート:Main 多くの弾性体では変形の量が小さい限り復元力<math>\mathrm{F}</math>と変形量<math>\mathrm{kx}</math>の間に比例関係がある。 テンプレート:Indent これをその発見者である17世紀のイギリスの物理学者ロバート・フックの名にちなんでフックの法則とよぶ。フックの法則は、板や棒の曲げのような、伸び縮みとは別種の変形でも同じように成り立つ。
単振動という運動
単振動(Simple harmonic motion)とは、等速円運動の正射影の運動と同一である。等速円運動に光を当てると影ができる。この影の運動が単振動なのである。単振動している物体を調和振動子と呼ぶ。
単振動は等速円運動の正射影であるために、その性質が等速円運動と非常によく似ている。例えば、周期 T は等速円運動と同じように、
であらわされ、当然、回転数(単振動では回転数のことを振動数という。定義は回転数と同じ)f も等速円運動と同様、 テンプレート:Indent とあらわされる。
単振動の運動方程式
バネに支えられる質点の運動を考える。原点 O をバネの重力とのつり合い長さ時にとり、上方向を x 軸正方向とする。このとき物体には、(1-1) の力が働く。ここで、ニュートンの運動方程式 <math>\mathrm{F = ma}</math> より、 テンプレート:Indent 両辺をmで割ると、 テンプレート:Indent (1-6) 式の x を満たす関数としては、
- <math>x=-\sin \sqrt{k \over m} t</math> … (1-7)
- <math>x=\cos \sqrt{k \over m} t</math> … (1-8)
の二つの特殊解が考えられる。線型微分方程式の性質から、この 2 つの特殊解を線形結合させた テンプレート:Indent も、(1-6) の解であり、方程式が 2 階であることと (1-7),(1-8) の一次独立性から、これ以外の解はない。つまり (1-9) が (1-6) の一般解である。ここで、<math>\omega = \sqrt{\tfrac{k}{m}}</math>と定めると、(1-9) 式は、 テンプレート:Indent ここで三角関数の合成を利用すると、(1-10) 式は、 テンプレート:Indent,\ \sin\phi = {B\over \sqrt{A^2+B^2}}</math>}} を満たした φ を用いて、 テンプレート:Indent とあらわされる。ここで、<math>\sqrt{A^2+B^2} = C</math> とすると、(1-11)は、 テンプレート:Indent となる。ここで(1-12)の各数値はそれぞれ以下のような物理量である。
よって、(1-12)であらわされる単振動の x-t グラフを描くと、図 1-5 のような正弦曲線を描く。 初期位相によって時刻 0 のときの物体の位置が決まる。このグラフの場合は以下の通り。
- 初期位相 <math>-\tfrac{\pi}{2}</math> … 時刻 0 のときの座標 -C
- 初期位相 <math>{0}</math> … 時刻 0 のときの座標 <math>0</math>
- 初期位相 <math>\tfrac{\pi}{2}</math> … 時刻 0 のときの座標 C
調和振動子のエネルギー
振動している物体の運動エネルギーと位置エネルギーについて述べる。運動エネルギーは テンプレート:Indent で与えられるが、位置エネルギーは力学の保存力の場合における力とポテンシャルの関係から、 テンプレート:Indent となる。したがって、<math>\mathrm{m\omega ^2=k}</math>であるから、全エネルギー<math>\mathrm{E}</math>は次式となり テンプレート:Indent 全エネルギーが振幅の2乗とばね定数に比例し、一定値を取ることになる。これは力学的エネルギーの保存則と矛盾しない。
単振動の合成
単振動を2つ以上加え合わせることを単振動の合成という。1つの質点に、平行な2つの単振動の合成を行うとき、この質点の運動は次のように扱うことができる。
始めに振動している質点の運動の解が
テンプレート:Indent
別の振動による質点の運動の解が
テンプレート:Indent
これは具体的に、板の上で単振動している質点があり、さらにその板が地面に対して同じ方向に単振動している場合に当たる。この解は一般にかなりの複雑な運動を表すが、角振動数がある特別な整数比になる場合には、比較的簡単な扱いができる。例えば、初期位相が0で振幅と角振動数がいずれも2:3になる場合には、
テンプレート:Indent
2つの単振動の振幅が等しい場合には、(1-17)は
テンプレート:Indent}</math>
<math>{}=2C\cos\left(\frac{\omega_1-\omega_2}{2}t+\frac{\alpha-\beta}{2}\right)\cos\left(\frac{\omega_1+\omega_2}{2}t+\frac{\alpha+\beta}{2}\right)</math>
テンプレート:Indent
}}
のように書き換えられる。角振動数がほんのわずかだけ違っている場合には、
テンプレート:Indent
となり、因子Δωを含む振動項は非常にゆっくりと振動し、一方の振動項ははじめと同じ振動<math>(\omega_1\approx \omega_2)</math>を続けることとなる。したがって、ゆっくりと振動をする部分のために、うなりという現象が生じる。ちょうど因子Δωを含む振動項の1周期Tの間に2度うなりを感ずるので、はじめの2つの単振動の振動数をそれぞれと<math>\gamma_1,\,\gamma_2</math>すると、このうなりの振動数fは次式となる。
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自然界における単振動
単振動は最も基本的な振動運動であり、自然界においてもよくみられる。特に、ポテンシャルU(x)がある位置x=x0において最小値U(x0)=U0を持つような力学系の場合は、ポテンシャルの最小点x=x0付近での微小な運動は単振動として近似することができる。
このポテンシャルU(x)をx=x0でテイラー展開すると テンプレート:Indent となるが、運動をx=x0から微小な範囲に限定すると、x-x0は微小量となるため3次以上は無視できる。また、x=x0でポテンシャルU(x)が最小値をとることから、 テンプレート:Indent である。これらのことを考慮すると、 テンプレート:Indent となる。このポテンシャルによる力Fは テンプレート:Indent で与えられるので、U''(x0)=k(>0)とおくと、 テンプレート:Indent これはx0を中心とする単振動を表す方程式である。
このことから、固体分子・原子の熱振動のような微小な振動運動は、単振動であることがわかる。