ハイギョ

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テンプレート:生物分類表 ハイギョ(肺魚)は、内鼻孔などの両生類的な特徴を持つ魚で、肉鰭綱肺魚亜綱に属する。

約4億年前のデボン紀に出現し、化石では淡水産・産を合わせて100種以上[1]が知られるが、現生種は全て淡水産で、オーストラリアハイギョ1種、ミナミアメリカハイギョ1種、アフリカハイギョ4種の、計6種のみが知られる。「生きた化石」と呼ばれている。

特徴

空気呼吸と夏眠
ファイル:Dolloi.jpg
Protopterus dolloi 呼吸のため、水面に顔を出したところ

ハイギョは他の魚類と同様に(内鰓)を持ち、さらに幼体は両生類と同様に外鰓を持つ[2]ものの、成長に伴ってが発達[3]し、酸素の取り込みの大半をではなくに依存するようになる[4]。数時間ごとに息継ぎのため水面に上がる必要があり、その際に天敵ハシビロコウサンショクウミワシなどの魚食性鳥類に狙われやすい。その一方で、呼吸を水に依存しないため、乾期に水が干れても次の雨期まで地中で「夏眠」と呼ばれる休眠状態で過ごすことができる[2]。この夏眠の能力により、雨期にのみ水没する氾濫平原にも分布している。アフリカハイギョが夏眠する際は、地中で粘液と泥からなる被膜に包まったの状態となる。「雨の日に、日干しレンガの家の壁からハイギョが出た」という逸話はこの習性に基づく。

産卵

オーストラリアハイギョ水草にばらばらに卵を産み付けるのに対し、その他のハイギョでは雄が穴の中で卵が孵化するまで保護する。ミナミアメリカハイギョの雄は繁殖期の間だけ腹鰭に細かい突起が密生し、酸素を放出してに供給する[5]

内鼻孔

ハイギョは陸上脊椎動物と同様に外鼻孔内鼻孔を備えている。正面からは吻端に開口する1対の外鼻孔が観察でき、口腔内に開口している内鼻孔は見えない。肺魚類と四足類は内鼻孔を持つという共通項から内鼻孔類とも呼ばれた。

食性と消化器官

ハイギョの歯は板状で「歯板」と呼ばれる。これは複数の歯と顎の骨の結合したもので貝殻も砕く頑丈なものである。獲物をいったん咀嚼を繰り返しながら口から出し唾液とともに吸い込むという習性を持つ。現生種はカエル、タニシ、小魚、エビなどの動物質を中心に捕食するが、植物質も摂食する。頑丈な歯板は化石に残りやすいため、歯板のみで記載されている絶滅種も多い。ハイギョの食道には多少の膨大部はあるものの、発達したはない。このためにじっくりと咀嚼を繰り返す。ポリプテルス類、チョウザメ類、軟骨魚類と同様に、腸管内面に表面積拡大のための螺旋弁を持つ。総排出腔は正中に開口せず、必ず左右の一方に開口する。糞はある程度溜めた後に、大きな葉巻型の塊として排泄する。

系統・進化

硬骨魚類肉鰭類条鰭類の2系統に分かれており、四足類は肉鰭類から進化したとされる。肉鰭類の魚類は現在シーラカンスとハイギョのみである。かつての総鰭類(肉鰭類から肺魚類を除いた群)は分岐学に基づいて妥当性が見直され、さらに、現生種に対して分子遺伝学手法が導入された結果、シーラカンスよりもハイギョが四足類に近縁とする考えや、それに基づいた分類が用いられるようになった。

┏━━━━━━━━━サメ・エイ  ・軟骨魚類
┫  ┏━━━━━━大半の魚    ↑硬骨魚類↑条鰭類
┗━┳┻━━━━━━ポリプテルス |    ↓
  ┗┳━━━━━━シーラカンス |    ↑肉鰭類
   ┗┳━━━━━ハイギョ      |    |   ↑内鼻孔類(肺魚四足型類)
    ┗┳━(オステオレピス) |    |   |   ↑四足型類
     ┗━━━━イモリ・カエル↓    ↓   ↓   ↓   ・四足類

現生種

ファイル:Queensland Lungfish (Neoceratodus forsteri).jpg
オーストラリアハイギョ Neoceratodus forsteri
オーストラリアハイギョ
  • ネオケラトドゥス・フォルステリ Neoceratodus forsteri (Krefft, 1870)
オーストラリア北東部に分布する。全長約1.5m。対鰭状で、発達した肉質部を持つ。幼魚の体色は黒色だが、成長と共に褐色へ変化する。ワシントン条約で保護されている。縄張りを持たず、他のハイギョ類に比べて性質は穏やか。ネオケラトダス、ネオセラトダス、ネオセラトドゥスという表記もある。
ファイル:Lepidosiren paradoxa 0.jpg
ミナミアメリカハイギョ Lepidosiren paradoxa
ミナミアメリカハイギョ
  • レピドシレン・パラドクサ Lepidosiren paradoxa Fitzinger, 1837
南アメリカアマゾン川流域やラプラタ川流域に分布する。全長は60cm-90cm前後。胴が長く、ひも状の対鰭を持つ。幼体は黒地に黄色の水玉模様をしているが、成長につれ薄くなり、成体では灰色単色となる。
ファイル:Marbled lungfish 2.jpg
アフリカハイギョ(エチオピクス) Protopterus aethiopicus
ファイル:Annectens.jpg
アフリカハイギョ(アネクテンス)Protopterus annectens
アフリカハイギョ African lungfish
アフリカハイギョの一種。サブサハラ広域に分布し、アフリカ西部と南東部でそれぞれ亜種アネクテンス(P. a. annectens)と亜種ブリエニー(P. a. brieni)とに分けられる。全長約80cm。
アフリカハイギョの一種。アフリカ熱帯亜熱帯域に分布し、ナイル川流域に基亜種のエチオピクス(P. a. aethiopicus)、コンゴ川流域に2亜種コンギクス(P. a. congicus)とメスメケルシー(P. a. mesmaekersi)が報告されている。全長約1.5-2m。ひも状の対鰭を持つ。
ヴィクトリア湖ではかつて大量に水揚げされていたが、ナイルパーチの移入と増加により、他の固有種と共に生息数やサイズの低下が起きた。
アフリカハイギョの一種。東アフリカに分布する、全長約60cmの最小のハイギョ。胴が短い。他のアフリカハイギョと同様に対鰭はひも状だが、胸鰭後方の放射が発達している。外鰓は成体でも痕跡が残る。
  • プロトプテルス・ドロイ P. dolloi Boulenger, 1900 - Slender lungfish or Spotted lungfish
アフリカハイギョの一種。コンゴ川オゴウェ川流域に分布する。全長は1m以上で、プロトプテルスでは最も胴が細長い。ひも状の対鰭を持つ。ベルギー領コンゴで発見され、肺魚研究で知られたルイ・ドロー(en)イグアノドンの二足直立型の復元や進化不可逆の法則で著名)にちなんで命名された。

絶滅種

ファイル:Scaumenacia curta & Bothriolepis canadensis.JPG
Scaumenacia curta & Bothriolepis canadensis
  • ディアボレピス Diabolepis (en)
中国雲南省の前期デボン紀の地層から産出し、最古の肺魚とされる。
  • ウラノロフス Uranolophus (en)
アメリカワイオミング州の前期デボン紀の地層から発見。最古級の肺魚。
  • ディプテルス Dipterus (en)
化石肺魚の中では最も早くに記載された種(1828年)。記載者の一人セジウィックデボン紀を命名した。
  • グリフォグナトゥス Griphognathus (en)
が前方に伸びた独特の形態を持つ種。
  • スカウメナキア Scaumenacia (en)
カナダケベック州の、現在世界遺産に登録されているミグアシャ国立公園内のデボン紀の地層から発見された種。発達した背鰭が特徴。
  • ケラトドゥス(セラトーダス) Ceratodus (en)
アガシーが記載。中生代に世界各地で繁栄したグループで、18種以上が知られる[1]。後に、これに酷似した現生種のオーストラリアハイギョが発見され、当時話題となった。

飼育

  • 入手法(2009年現在)
  • 管理
    • ヒーター : 冬季はヒーターで25-30℃程度を維持する必要がある。
    • 水槽 : 泳ぎ以外(歩行・捕食・呼吸など)の観察であれば体長の1.5倍程度で足りる。水面を完全に塞ぐと溺死の危険がある。ただしフタがないと跳んで逃げる。穴を掘る習性があるため、水草は流木や石などに固定するか、のないものにする。オーストラリアハイギョ以外は単独飼育を基本とするが、レピドシレンは闘争心が薄いので複数飼育も可能とされる。
    • 餌 : 本来は生きた水生動物を捕食するが、飼育下では生き餌のほか肉食魚用飼料でも飼育される。
    • 繁殖 : 海外では研究・商業目的で増殖が行なわれているが、日本国内では行なわれていない。完全に輸入に頼っているのが現状である。しかし国内で繁殖に挑戦している個人や組織も存在する。

脚注

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参考文献

関連項目

  • シーラカンス:ハイギョと同じ肉鰭類の魚
  • ポリプテルス:現生種では条鰭類の最古の系統とされ、ハイギョとも複数の共通形質を持つ
  • 生きた化石:ダーウィンがハイギョを指して用いた表現
  • ゲノム:ハイギョのゲノムサイズ(C値)は動物界で最大。高等な哺乳類よりも高く、C値パラドクスと呼ばれる。

外部リンク

テンプレート:Sister

テンプレート:Sister
  1. 1.0 1.1 Marshall, 1966 には、肺魚55属122種(当時)の一覧が載る
  2. 2.0 2.1 ネオケラトドゥスを除く
  3. オーストラリアハイギョは1室、アフリカハイギョ、ミナミアメリカハイギョでは2室が発達
  4. 依存度に関しては、内鰓、肺の前後での二酸化炭素と酸素の分圧変化を調査したSzidonら,1969 に詳しい
  5. 1932年、Cunninghamらが確認。これを疑問視するFoxonとの議論は、1933年6-8月のNature誌上で展開されている
  6. プロトプテルス・アンネクテンスとも書かれる