耐震診断
テンプレート:Refimprove 耐震診断(たいしん しんだん)とは、既存の建築物の構造的強度を調べ、想定される地震に対する安全性(耐震性)、受ける被害の程度を判断する行為。地震による破砕・倒壊を未然に防ぐため、その恐れの有無を把握する目的で行われる。
耐震診断の方法には、以下の3種類がある。
- 一次診断
- 二次診断
- 三次診断
過去に起きた大地震の地震波を用いる方法も広く使われている。
耐震診断の結果によっては耐震改修などが求められる。なお静岡県をはじめとする多くの自治体では、耐震診断や耐震改修に補助金を助成している。
安全の判定基準は Is≧0.6かつCT・SD値≧0.3となっているが、自治体によって異なり、安全側に1割増のIs≧0.7やIs≧0.8を要求する施主もいるので確認する必要がある。 一般的に公営住宅には0.6以上、学校施設では0.7以上が求められる。
目次
安全の判定基準
Is値
Is値とはSeismic Index of Structure:耐震指標 の略称である。 Is= Eo x SD x T
Eo:保有性能基本指標(建物が保有している基本的な耐震性能を表す指標) =C (強度の指標) × F (粘り強さの指標)
SD:形状指標(平面・立面形状の非整形性を考慮する指標) 1.0 を基準として、建物形状や耐震壁の配置バランスが悪いほど数値 が小さくなる
T:経年指標(経年劣化を考慮する指標)
Is≧0.6の0.6という数字は1968年十勝沖地震(M7.9、震度5)および1978年宮城県沖地震(M7.4、震度5)で中破以上の被害を受けた鉄筋コンクリート造建築物の2次診断の結果を比較した経験から導き出されている。
分布によると震度5程度では、Is値が0.6以上の建物に中破以上の被害が生じていない。また、Is値が0.6を下回るとIs値が低くなるに従って被害を受ける可能性が高くなる。
- Is<0.3またはq<0.5:地震の震動及び衝撃に対して倒壊し、又は崩壊する危険性が高い。
- 0.3≦Is<0.6または0.5≦q<1.0:地震の震動及び衝撃に対して倒壊し、又は崩壊する危険性がある。
- Is≧0.6かつq≧1.0:地震の震動及び衝撃に対して倒壊し、又は崩壊する危険性が低い。
CT・SD値
CT・SD値とは、鉄筋コンクリート造が主な構造の建物が持っている、地震による水平方向の力に対して対応する強さをいう。 学校施設では0.3を超えることとされている。
((財)日本建築防災協会 既存RC造の耐震基準による)
q値
q値とは、鉄骨造が主な構造の建物が持っている、地震による水平方向の力に対して対応する強さをいう。 学校施設では1.0以上に補強するよう求められている。
(公立学校施設に係る大規模地震対策関係法令及び地震防災対策関係法令の運用細目の規程による)
一次診断
主に壁量にチェック。 各階の柱と壁の断面積とその階が支えている建物重量から計算する最も簡便な方法。 比較的壁の多い建物には適しているが、壁の少ない建物では耐力が過小評価される。 設計図面が残っていれば建物の詳細な調査を行わなくても短時間で計算できる。
二次診断
主に柱、壁の強さと粘りのチェック。梁は考慮しない診断方法である。 設計図面が残っていることが前提である。 各階の柱と壁のコンクリートと鉄筋の寸法から終局耐力を計算して、その階が支えている建物重量と比較する。 その他2種要素、極短柱、下階壁抜け等の検討をする。 コンクリートの圧縮強度・中性化等の試験、建物の劣化状態(ひび割れ・漏水・鉄筋錆・コンクリート爆裂)などの調査が必要となる。 1次診断より結果の信頼性が高く、公共建築物(学校・庁舎等)で最も多用されている。 この方法で補強を行った建物は、近年の新潟県中部地震などでも被害があまり報告されていない。 想定地震力は400gal程度といわれる。(保有水平体力計算は1000gal)
三次診断
柱、壁の強さと粘りに加え、梁を考慮した診断方法である。 設計図面が残っていることが前提である。 2次診断の柱と壁に加えて梁も考慮して計算する、現行建築基準法の保有水平耐力計算とほぼ同程度のレベルで 建物の終局耐力を計算する方法だが、保有水平耐力計算という計算方法の、計算上の仮定に最も左右されやすい。 計算結果通りに建物が終局耐力に達するか否かについて、十分注意して判断する必要がある。 高層建築や鉄骨造が対象となる事が多い。
現地調査項目例
診断用ソフト提供
関連事項
関連項目
- 耐震基準 - 建築基準法
- 耐震補強 - 防災 - 減災 - 危機管理
- 建築士 - 耐震診断資格者 / 日本建築防災協会
- 構造計算用語
- 耐震偽装(構造計算書偽造問題) - 欠陥住宅
- 構造力学 - 材料力学