窮奇
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清・汪紱『山海経存』より「窮奇」
窮奇(きゅうき、テンプレート:ピン音)は、中国神話に登場する怪物の一つ。四凶の一つとされる。
中国最古の地理書『山海経』では、「西山経」四の巻で、ハリネズミの毛が生えた牛で、邽山(けいざん)という山に住み、犬のような鳴き声をあげ、人間を食べるものと説明しているが、「海内北経」では人食いの翼をもったトラで、人間を頭から食べると説明している[1]。五帝の1人の少昊に不肖の息子がおり、その霊が邽山に留まってこの怪物になったともいう[2]。
『山海経』にならって書かれた前漢初期の『神異経』では、前述の「海内北経」と同様に有翼のトラで、人語を理解し、人が喧嘩していると正しいことを言っている方を食べ、誠実な人がいるとその人の鼻を食べ、悪人がいると獣を捕まえてその者に贈るとしている[1]。
思想書『淮南子』では、「窮奇は広莫風(こうばくふう)を吹き起こす」とあり、風神の一種とみなされていた。日本の風の妖怪である鎌鼬を「窮奇」と表記することがあるが、これは窮奇が風神と見なされたことや、かつての日本の知識人が、中国にいるものは日本にもいると考えていたことから、窮奇と鎌鼬が同一視されたためと考えられている[1]。春秋左氏伝や後漢書にも登場する。