発電設備の運用

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発電設備の運用(はつでんせつびのうんよう)とは、需要家に適切な電力を供給するため、需要に合わせた発電所の運用を行うことである。

電力の蓄積は難しいため、過不足無く発電する必要がある(これを同時同量と呼ぶ)。発電の過不足は電圧周波数を不安定にしてしまうが、これは電気製品の動作に支障がでる場合があるため、発電量と電力消費量の一致はこの面からも求められている。

  • 特に周波数の制御は重要であり、0.5Hzの動揺がタービンブレードの異常振動やタービン軸のねじれなどお引き起こすことになる。それゆえ日本の電力会社は、周波数の変動を±0.2Hzに抑えることを目標としており、また電気法規でも同様に定められている。

日本では、電力会社と新規の事業者の間では、30分単位で発電量と電力消費量を一致させるシステムで運用されている。 電力会社としては、需要と供給のバランスが崩れたときの補正を行っているので、30分より短い周期で管理している。発電機の出力を全部中央給電指令所に集めており、その合計と需要との差が周波数偏差として現れるので、発電所の出力補正量としての地域要求量を算出し、補正信号を出す仕組みとしており、インフラの整備と制御機器の整備および運用にかなりの費用と人手をかけている。これと無効電力供給などのサービスを合わせてアンシラリーサービスとして託送料金に含めて、新規参入事業者に賦課している。

運用方法

ベース運用

最低要求発電量として、点検時以外、24時間一定出力が確保されなくてはならない。ベースロード用とも呼ばれる。建設費用等の初期投資額が高くても、連続運転能力、ガバナフリー容量が大きい、ランニングコストの低廉なものが最適とされる。
地熱発電・流れ込み式水力発電・再熱再生サイクル式大容量超臨界圧火力発電・原子力発電などで行われる。発電原価は原子力で5.3~13円程度とされている。

ミドル運用

ピーク時に常用最大出力、その他の時間帯は需要に合わせた出力で運用する。
石炭汽力発電などで行われる。発電原価は燃料費によって大きく変わるが、最も効率的なLNG火力の場合は数年前に7円を切っていて最も効率的であるといわれていた。

ピーク運用

ピーク時に、燃料費が安くなるように制御し、その他の時間は停止または最低出力で運用する。
揚水発電・調整池式水力発電・ダム式水力発電・コンバインドサイクル発電石油汽力発電などで行われる。揚水発電の発電原価は東京電力の試算で30円を超えている。また、関西電力が試算した火力発電所での発電原価も同じく30円を超えている。東電の揚水発電所は100万kWのものが稼働率10%で計算されているもので、これが実際に運用されている3%程度ということで再計算するなら1kWhは100円を超えるものとなる。この為、最近では電力会社は夏場のピークを落とすための電力料金体系を出してきている。
さらには一日数十分あるいは年間数十時間といった尖頭負荷に対しては、ランニングコストよりも建設費が低廉で、かつ始動から全負荷までに要する時間の短いガスタービンエンジンによる発電設備も各国で稼働中である。

軽負荷時の周波数調整

夜間などの軽負荷時は、全体の需要規模が小さくなるが、短周期の負荷変動の量はそれほど変わらないので、周波数変動の幅が大きくなる。しかし、ミドル運用・ピーク運用の発電所はほとんどが停止しており、ベース運用でまかなわれているため、需給の変化に伴う周波数調整能力が低い(電力会社が、夜間電力の割引を行い需要の開拓するのはこのためである)。
このため、揚水発電機をポンプ動作させ系統に対する負荷として、見かけ上の需要規模を大きくすることにより、周波数変動特性を改善すると共に、発電機の周波数調整能力が期待できる出力帯に置けるようにしている。最近では、揚水時の消費電力を可変し需給の変化に対応する可変速揚水機が注目されている(また、可変速揚水機は無効電力の調整能力も有るため、夜間の無効電力の負荷としても注目されている)。

脚注

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関連項目