熊野筆
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熊野筆(くまのふで)は、広島県安芸郡熊野町で生産されている筆。「熊野筆(くまのふで・クマノフデ等)」の名称は、2004年(平成16年)に団体商標に登録されており、熊野筆事業協同組合の許可なく使用することは禁止されている。
熊野筆には、一般的に使用される書道用筆、絵画を描く際に使用される画筆、化粧に使用する化粧筆、記念品として作られる誕生筆などがある。原料の毛は主に中国やカナダなどから輸入され、軸は主に国内各地の竹と中国や台湾などからの輸入品が使用されている。熊野筆製造の従事者は2500人余りいると言われ、そのうち伝統工芸士は2014年(平成26年)4月現在22人いる。また、近年熊野の化粧筆は海外からも注目され高い評価を受けている。2011年(平成23年)、サッカー日本女子代表への国民栄誉賞の記念品として贈呈された化粧ブラシ7本セットも、熊野町内の化粧筆メーカー(有)竹田ブラシ製作所の製品である。[1]
歴史
江戸時代末に農閑期を利用して大和国へ出稼ぎに行った農民が帰りに奈良で筆や墨を仕入れ、行商するとともに自ら製造し販売したことが始まりと言われ、広島藩の生産奨励も手伝って発展した。明治時代に入り教育の普及が進むにつれて生産量が増大。戦後は画筆や化粧筆も生産されるようになり、1975年(昭和50年)に伝統的工芸品の指定を受けた。しかし一方で、近年は筆製造にたずさわる方々の高齢化と後継者不足により、中国からの製品の輸入が増え続けている。