炭素循環
炭素循環(たんそじゅんかん、テンプレート:Lang-en-short)とは、地球上の生物圏、岩石圏、水圏、大気圏の間で行われる炭素の交換という生化学的な循環で、これらは炭素の保管庫(リザーバー)となっている。
炭素循環は、一般にこの4つのリザーバー、具体的には大気、陸域生物圏(陸水系は普通ここに含まれる)、海洋、堆積物(化石燃料を含む)と、その間を相互に移動する経路で成り立っている。年間の炭素の移動は、リザーバー間で起こる様々な化学的、物理学的、地質学的、生物学的なプロセスを経て行われる。地球表層付近での最も大きな炭素の保管場所は海洋である。
全球の炭素収支は炭素リザーバーの間、もしくは特定の循環(特に大気 - 海洋間)での炭素交換のバランス(吸収と放出)で示される。炭素収支を吟味することで、リザーバーが二酸化炭素の吸収源となっているのか発生源となっているのかを判断することができる。
大気中の炭素
大気圏中の炭素は気体、主に二酸化炭素ガスの状態で存在する。全大気のなかでは少量(増加しつつあるがおよそ0.04%)であるが、生命活動が維持されるための重要な役割を果たしている。大気中に存在する炭素を含む気体には、他にメタンやクロロフルオロカーボン(ほとんどが人為起源)があり、これらは全て温室効果ガスと呼ばれる。大気への放出はここ数十年劇的に増加し、地球温暖化の原因とされている。
炭素は大気から二つの経路で除去される。
- 植物が太陽光によって光合成を行い、二酸化炭素から炭水化物を合成し、その過程で酸素を放出する。森林で急速に樹木が生長すること等から、この過程が最も二酸化炭素を吸収すると考えられている。
- 極域付近の海洋表層では海水が低温なため、より多くの二酸化炭素を溶かし込む(溶解ポンプと生物ポンプ)。
炭素は様々な過程を経て大気に再び放出される。
- 植物や動物の呼吸による放出。これは発熱反応で、グルコース(もしくは他の有機分子)が二酸化炭素と水に分解される過程である。
- 動物と植物の分解(腐敗)。菌類やバクテリア又は古細菌が動植物の遺骸を構成する有機物質を分解し、炭素を、酸素がある場合は二酸化炭素、酸素が無い場合はメタンに変える。
- 有機物の燃焼(炭素を含む物質の酸化反応を含む)による排出。石炭や石油製品、天然ガス等の化石燃料の燃焼で放出される炭素は、何百万年もかけて地圏に貯蓄されたものであるが、この燃焼が、現在の大気中の二酸化炭素レベルの増加を招いている、大きな理由とされている。
- 石灰岩反応による放出。石灰岩、大理石、チョークは主に炭酸カルシウムで構成されている。これらの岩石の堆積物は水で浸食されると、炭酸カルシウムは分解され最終的に二酸化炭素と、炭酸に分解される。セメントや酸化カルシウム(生石灰)は石灰岩が熱せられることで形成されるが、この過程でも無視できない量の二酸化炭素が生成される。
- 海洋表層での大気への放出。海水に溶解した二酸化炭素は温暖な海域では放出されやすい。
- 火山活動による大気への炭素の放出。
生物圏の炭素
炭素は地球上の生命活動で基本的な物質で、細胞骨格、生化学、栄養作用において重要な物質である。また、生命は炭素循環においても重要な役割を果たしている。
- 独立栄養生物は大気中、もしくはその生息環境に存在する水に含まれる二酸化炭素と、から有機化合物を自ら生産する生物である。これには太陽光などのエネルギー源を必要とする。炭素循環で最も重要な生物は、陸上の森林の樹木と海洋の植物プランクトンである。
- 炭素は生物圏の中で従属栄養生物に摂取・変換される。菌類やバクテリアによる発酵や腐敗という、生物の遺骸や排出物の分解も含まれる。
- 生物圏から排出される炭素は、呼吸によるものが最も多い。酸素が存在する環境では、好気呼吸の作用で二酸化炭素を周囲の大気や水に放出する。一方、嫌気呼吸ではメタンを周囲の環境(大気圏や水圏)へ放出する。
- 遺骸として分解されずに生物圏に残留炭素することもあるが(泥炭のように)地圏移行するものもある。特に炭酸カルシウムでできている動物の殻(サンゴや貝殻など)は堆積過程を経て石灰岩となる。
貯蔵量
地球上の炭素の分布概要は、炭素換算で、大気での二酸化炭素7,500億トン、陸上の有機炭素2兆トン(土壌1兆5000億トン、陸上生物5500億トン)、海洋における溶存二酸化炭素39兆トン、溶存有機炭素7,000億トン、堆積物1,500億トン、海洋生物30億トンの貯蔵量である。化石燃料は5〜10兆トンである[1][2]。地殻、マントル最上部を含めたリソスフェア(岩石圏)中では重量比で0.03%の炭素が含まれている[3][4]。
炭素循環モデル
気候の変化を予測するための全球気候モデルを炭素循環モデルと結合させることによって、海洋と生物圏の相互作用応答を組み込み、将来の CO2レベルをモデル予測できるようになる。
物理的生化学的なサブモデル(特に後者)には無視できない不正確さがあるが、これらのモデルは気温と二酸化炭素の間に正のフィードバック効果があることを典型的に示す。
例えばZengほか (GRL, 2004 [1]) ではの炭素循環を加味したモデルでは、大気中のCO2が90から2000ppmvに増加し(炭素循環を組み込まないモデルで予測された以上)、これは 0.6 ℃ 以上の温暖化を導く(これが更に大気中CO2濃度を増加させる)という結果を見出している。
脚注
参考文献
関連項目
- 地球温暖化
- 気候変動
- 溶存無機炭素
- カーボンフットプリント
- ちきゅうをみつめて 炭素循環をテーマとしたプラネタリウム向け全天周映画。
外部リンク
テンプレート:生物地球化学的循環テンプレート:Link GA- ↑ 3ページ(ちょっと環境学習) 出展ブース 海は巨大な炭素貯蔵庫『環境学習みえ』2005年 冬号, 三重県環境学習情報センター
- ↑ 生物環境科学概論 第5・6話 (基礎生態学配布20110119)(doc) 国立大学法人 宮崎大学農学部 海洋生物環境学科
- ↑ 地殻中の元素の存在度テンプレート:出典無効
- ↑ テンプレート:Cite web