溶接ロボット
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
テンプレート:出典の明記 溶接ロボット (Welding robot) は、溶接を行う産業用ロボットである。
溶接は高熱と有害な紫外線とヒュームを発生する過酷な作業であり、産業用ロボットの需要の高い作業である。大別するとスポット溶接を行うものとアーク溶接を行うものがある。また少数だが、レーザー溶接やガス溶接を行うものもある。スポット溶接ロボットは比較的大型なロボットが用いられ、自動車の車体溶接ラインなどで数多く使われている。アーク溶接ロボットは比較的小型なロボットが用いられるが、溶接部分を水平に保つ必要があるので、ワークを保持するポジショナーなど周辺設備が大きくなる。アーク溶接ロボットは建設機械や鉄骨フレームなどの溶接に広く使われている。
アーク溶接ロボットシステムの例
- ロボット
- ロボット本体のこと。アーク溶接では5kg可搬から10kg可搬のクラスのロボットが使われる。ロボットを2台以上使うシステムも珍しくない。自動車の車体溶接ラインでは数十台の大型ロボットが使われる。
- ロボットコントローラ
- ロボットを制御する装置。サーボアンプとコンピュータにより構成される。豊富なインターフェースを持つ。シーケンサを内蔵するものも多い。一般にロボットシステムに含まれるあらゆる装置はロボットコントローラにより制御される。複数のロボットを制御できるコントローラもある。
- 制御盤
- ボタンや簡易的な表示装置が取りけられた操作パネル。システム全体の起動、停止など基本的な操作をするためのもの。ラインの稼動中はこれだけで操作するようになっている。
- ポジショナー
- ワークを支持する装置。ワークを適切な角度で傾けるために使われる。大きなものは10t以上の積載能力を持つ。
- ガントリー
- ロボットを移動させる装置。走行装置、走行台車とも言う。ポジショナー、ガントリーは大きい上にロボットと同等の精度が求められる。実際のロボットシステムでは、ロボットよりもこれらの装置の方にコストがかかることが多い。
- トーチ
- 溶接トーチ。ここで溶接を行う。電気と芯線、シールドガスはここで供給される。ガン、ノズルと言うこともある。トーチに供給される電流は500Aを超えることもある。ロボットは長時間の溶接が可能なので、トーチが焼きついたり熔けたりすることがある。そのため大型の溶接ロボットでは水冷トーチが使われることが多い。
- 溶接電源
- トーチに電気とシールドガスを供給する。単に溶接機とも言う。
- 供給装置
- トーチに芯線を供給する装置。溶接電源により制御される。
- ホース
- 供給装置とトーチを繋ぐホース。芯線、シールドガス、クーラントを流すためのホースが束ねられている。ロボットの動きを良くするために束ねたホースは牛の皮革などで包まれる。
- バランサー
- ホースがロボットの動きを妨げないようにするための吊り下げ装置。
- ショックセンサー
- トーチとロボットの間に付けられ、トーチがワークなどと干渉するとロボットが停止する。
- 治具
- ワークを取り付ける装置。精度と強度、使い勝手が求められる重要な装置。ワークの種類によって取り替える。
- 油圧ポンプ
- 治具に油圧を供給する。
- 安全柵
- ロボットシステムの周囲に設けられる。ドアにはセンサーが取り付けられ、人が侵入するとロボットは停止する。
- 光電管
- 光センサーのこと。作業エリアへの人の侵入を検知するために用いられる。安全柵の代わりに取り付けられることがある。
- 遮光幕
- アークから出る有害な紫外線を遮るために設ける。ふつう安全柵に取り付けられる。
- ワーク
- 加工対象物のこと。ロボットシステムには含まれないが言葉の説明のために記した。
- トーチクリーナー
- トーチを清浄する装置。ノズルに付着したスパッタを除去するワイヤーブラシ、スパッタ付着防止剤を吹き付ける装置などで構成される。
- ワイヤーカッター
- 芯線を適切な長さにカットする装置。
- トーチチェンジャー
- トーチを交換する装置。
- 稼働率モニタ
- ロボットや溶接機の稼動状態を監視する。
- 警報装置
- ロボットの稼動状態をライトや音声で知らせる。いわゆるパトライト。
- 配線
- ロボットシステムの各装置を繋ぐ電気ケーブル。大きなロボットシステムでは、配線の量は全部で数tにもなる。アーク溶接ロボットでは非常に丈夫なケーブルが使用される。
- ピット
- 配線を収めるために床に掘った溝のこと。配線を収めるピットには蓋がされる。また、ワークを回した時に床にぶつからないように、ポジショナーの下にピットが設けられることもある。ピットの中には溜まったガスを検知するセンサーが取りけられる。炭酸ガスや燃焼性のガスが溜まると危険だからである。