水難救助隊
水難救助隊 (すいなんきゅうじょたい)は、日本において消防や警察が河川や海浜や港内で発生した水難事故に対応するために設置した救助隊。小型ボートや浮き袋・アクアラング・投光器などの資器材を用いて水難救助活動を行う。
消防
消防の水難救助隊は、救助隊(特別救助隊)の一つに位置づけられる。各消防本部は「救助隊の編成、装備及び配置の基準を定める省令」に基づき、原則として5人からなる救助隊を消防署に1隊ずつ置くこととされているが、水難救助隊はこの救助隊の一形態である。同省令は、水難救助隊の装備資器材として、潜水器具一式、救命胴衣、水中投光器、救命浮環、浮標、救命ボート、船外機、水中スクーター、水中無線機、水中時計、水中テレビカメラを列挙している。これらの資器材を使用して、救助隊員が水難救助活動を展開する。また、航空隊の消防防災ヘリコプターやはしご車隊などと連携した活動も展開する。
ほとんどの消防本部では、水難事故に際して、通常の救助隊が水難救助隊として兼任活動しているが、中には、消防学校などでの専門研修修了者をもって、専任の水難救助隊を編成している消防本部もある(例→東京消防庁#水難救助隊)。 また、新潟市消防局や岡山市消防局のように特別高度救助隊など高度な救助部隊を水難救助対応部隊とする消防本部もある。[1]
多くの消防本部が救助隊が兼任活動しているために潜水に関する講習などに参加し潜水士免許を取得したり、海保などと訓練を行ったりしている。
東京消防庁では第八方面本部(臨港消防署:臨港水難救助隊、日本橋消防署:浜町水難救助隊)、第二方面本部(大森消防署:大森水難救助隊)、第六方面本部(足立消防署:綾瀬水難救助隊)、第七方面(小岩消防署:小岩水難救助隊)、第八方面(調布消防署:調布水難救助隊)が置かれている。臨港・調布水難救助隊は航空連携降下指定隊に指定され東京消防庁航空隊ヘリと連携した活動を行う。 また、第六消防方面本部の消防救助機動部隊(ハイパーレスキュー)が大規模水害(都市型水難。ただし水面上の救助)に対応している。
大規模災害時に備えて、全国の消防機関が編成する緊急消防援助隊 においても、特殊装備部隊の一カテゴリとして水難救助隊が設けられており、2006年4月1日現在で全国の消防本部から計34隊が登録されている(緊急消防援助隊登録部隊数(PDF) - 総務省消防庁)。 東北地方太平洋沖地震に伴う東日本大震災でも緊急消防援助隊として東京消防庁の水難救助隊が気仙沼において救助活動を行った。
なお東京消防庁では、山岳救助隊 (消防)内に「スイフトウォーターレスキュー隊(急流救助隊)」を設置している。 この救助隊は、レジャー客が中州に取り残された水難事故(玄倉川水難事故)を機転に創設されており、急流救助に対応できる知識・技術を持ち、専門の資機材を装備している(あくまでも水面上の救助)。第六方面本部消防救助機動部隊もスイフトウォーターレスキューを担当している。
警察
警察の水難救助隊は全国都道府県警察の機動隊に設置されている。
警視庁水難救助隊は第二機動隊(墨田区)に4個小隊(小隊長:警部補)、第七機動隊(調布市)、第九機動隊(江東区)に各2個小隊置かれている。 隊員は水難救助がメインの業務ではなく、普段は制服で重要施設の警備やデモ・祭礼警備、重点パトロールなど水難救助以外の活動にあたっており、月に数回程度、水難救助の任務が充てられた際にのみ、水難救助部隊として活動する。
実際には、警察の水難救助隊が到着する頃には消防隊により救助が完了、あるいは救助作業が始まっている事が多く、警察の水難救助隊は人命救助というよりも、ダイバーとして水死体の引き上げや水中に投棄された犯罪の証拠物の捜索がその主任務である。
その他
水難救助隊に類似する部隊として、海上保安庁が特殊海難のために設置している羽田特殊救難基地の隊員や各管区の機動救難士がある。また、歴史的にも古く、日本の航空救難の先駆けとなった救難員で知られる航空自衛隊の航空救難団救難隊や海上自衛隊の機上救護員、降下救助員も海難救助を行う。
三機関合同の訓練
近年は消防・海保・警察による三機関合同の水難救助訓練が各地で行われている。
関連項目
脚注
- ↑ 「われら消防レスキュー隊」(イカロス出版)によれば、新潟市消防局は水難救助隊員育成が難しいことから特別高度救助隊を水難救助専任隊としており、名古屋市消防局第一方面特別消防隊(特別高度救助隊)も水難救助が主任務の一つとされている。また岡山市消防局ホームページ及び季刊誌「Jレスキュー」(イカロス出版)2011年11月号によれば、岡山市消防局と堺市消防局も同じく特別高度救助隊の全員に潜水士資格を取得させ特別高度救助隊に水難救助に従事しているとされている。