一人親家庭
一人親家庭(ひとりおやかてい)とは、父親または母親の片方いずれかと、その子(児童)とからなる家庭をいう。単親世帯ともいう。
父と児童の家庭を父子世帯(ふしせたい)あるいは父子家庭、母と児童の家庭を母子世帯(ぼしせたい)あるいは母子家庭という。かつてはこれらをまとめて欠損家庭と言っていた。ひとり親家庭、単親家庭(たんしんかてい)とも言う。また、そのような家庭の親は、父親の場合はシングルファーザー、母親の場合はシングルマザーと称される。
なお、英語に由来する「シングルマザー」(single mother)という呼称は、池上千寿子の著書「シングル・マザー 結婚を選ばなかった女たちの生と性」(1982年)によって日本で広まった。
発生原因
- 父母の一方が子の出生後に死亡
- 父親の死亡後に子が出生
- 父母の一方が行方不明(蒸発)
- 父母の離婚
- 父母の一方が法令の規定により拘禁されている
- 父母の一方が精神障害により措置入院させられている
- 父母の一方に重度の障害があるために他方が養育している
- 父母の一方による虐待・遺棄などにより他方が養育している
- 婚姻関係を結ばず出生
- 捨て子などで、母が懐胎したときの事情が不明
ただし父母の一方が単身赴任等で生活拠点を別に置いている場合は含まれない。
日本の単親家庭の現状
日本の単親家庭数は、母子世帯が122万5,400世帯、父子世帯が17万3,800世帯(いずれも平成15年11月1日現在)となっている。国民生活基礎調査(平成15年6月調査)の全世帯数(4580万世帯)との割合でみると、母子世帯は2.7%、父子世帯は0.4%。年代別では20歳~30歳後半が多く母子家庭では76万人を占めている。[1]
2008年の青少年白書(特集 「家庭,地域の変容と子どもへの影響」)によると、困難な状況にある家庭は、2007年に母子世帯は1.7%、父子世帯は0.2%となっている[2]。
要因は、離婚の増加である。父子家庭と母子家庭の割合については、母子家庭の方が多い。子供がいる夫婦が離婚する時に父親と母親、どちらが親権者になり子供を引き取るかについてみると、1960年は父親が親権者になる割合が47%と母親よりも多かったが、その後比率は逆転し、1996年は母親が親権者になる割合は78%となっている[3]。
母子家庭と父子家庭とでは行政支援内容に差がある(後述)が、これは母子家庭の方が絶対数が多く(上述)、就業状態や収入等経済状態が父子家庭よりも劣悪な環境に置かれるケースが多いためである(父子家庭は就業している者のうち、75.3%が常用雇用。一方母子家庭は常用雇用は50.7%。収入平均は父子家庭:422万円。母子家庭:229万円。他に持ち家率も低い[4]。
父子家庭、母子家庭の収入状況は、父子家庭の平均は年間約310万円、母子家庭の場合は約160万円となっている。ただし、一般的な家庭は約500万円台となっており、父子、母子両方とも一般的な家庭より低くなっている[5]。
また、母子家庭のうち生活保護を受けた家庭では、子供の4割が成人後に生活保護を受けている[6]。
町田市調査では、十代の若者による出産は、家族構成に関しては母子世帯の子どもによく見られ、荒川区の分析では「若年出産の場合、その親も若年出産のケースが多い」と指摘がある[7]。 生活保護母子世帯は中卒、高校中退同士が離死別した場合が多く、その後非婚のまま出産する婚外子の出現率は25.7%と高い[8][9]。前夫との問題との関連性[10]や、その子どもも同じライフコースをたどる連鎖も指摘[11]されている。
生活保護を受給している独立母子世帯の数は、1997 年以降に増えており、2000 年代に入ってからは概ね7-8 世帯に1世帯の割合で生活保護を受給している。生活保護を受給したシングルマザーは非受給者より正社員希望の確率が14.0 ポイントも低いことが分かっている。生活保護期間中にできたキャリアブランクが長ければ長いほど、子供が成人した後も、母親が生活保護に頼らざるを得ない可能性は高くなる[12]。
行政支援
一人親家庭は、両親がいる家庭に比べ経済的、精神的に不安定なケースが多いため、地方自治体が主体となって育児、医療等に対し助成金などの支援が行われている。また就業支援や職業訓練などの各施策が行なわれている。
また、一人親家庭のみを対象としたものではないが、経済的に窮乏状態の家庭に対しては生活保護や就業相談、また子育ての相談窓口などを設けている。さらに行政機関ではないものの、母子寡婦福祉連合会が行政機関と連絡をとって支援を行っている。
父子家庭と母子家庭における公的支援の格差
国・地方自治体による支援制度は、父子世帯と比べて経済的に苦境にあることの多い母子世帯を中心として構成され、これに父子世帯の子育てサポート制度が備わる。母子及び寡婦福祉法では母子家庭の定義に「等」を付け加えることで父子家庭を含むとしている。
さらに同法では母子家庭等を未成年者(20歳未満)の子がいる家庭に限定している。子が20歳になった時、母子家庭の母だった女性は「寡婦」として引き続き支援を受けられるが、父子家庭の父だった男性は支援の対象になっていないなど、母子家庭や寡婦に比べて父子家庭や寡夫への支援は薄いのが現状である。
父子家庭については従来、経済的な支援よりも家事や子育ての相談などの支援の方がニーズが高いとされ、従来から経済的支援以外の支援は行われていたが、今後の父子家庭の絶対数の増加が言われており、さらなる支援の重要性が指摘されている[13]。
一方で、近年の非正規雇用の増大の結果、父子家庭であっても必ずしも経済的に恵まれているわけではない家庭の存在が浮かび上がってきており[14]、栃木県鹿沼市や千葉県野田市、東京都港区などでは児童扶養手当(父子家庭には受給権無し)相当の手当を独自に設定していた事例があった[15][16]。2010年8月からは児童扶養手当の支給対象に父子家庭も含まれることになった。
単独特別養子縁組
テンプレート:See also 単独特別養子縁組とは一人親の再婚時に連れ子を特別養子となる制度で対象者は配偶者の6歳未満の連れ子で、親となる者の一方が実母・一方が養父でできる特別養子縁組制度。しかし養父は戸籍上「父」と知らされ、母は引き続き親となる親で知らされる。斡旋方法は各施設からの引取りではなく、実母が養父となるものと再婚するまで監護ができること。特別養子縁組申立も特別養子縁組届も実母の申請で届出が可能である(普通特別養子の場合は養親のみしか届出ができない)。目的は「連れ子の福祉」、普通養子縁組とは違い実父との関係は終了する。戸籍では実父の戸籍→実母の戸籍→養父の戸籍に実母と同時に入籍→父の名前を変更の順番となる。家裁の申立で実母は「養父となるものと再婚し、引き続き親として監護できます」と記入。特別養子縁組届では実父母との続柄の欄に養父の姓を記入し、養親となる者の下の空欄に「養父となる者の妻」「養子となる者の母」と記入して届け出をする。
脚注
関連項目
外部リンク
- 厚生労働省・母子家庭等関係
- 母子及び寡婦福祉法(昭和39年法律第129号)
- 特定非営利活動法人リトルワンズ
- 父子家庭支援全国組織 | NPO法人 全国父子家庭支援連絡会
- 財団法人全国母子寡婦福祉団体協議会
- ↑ 総務省統計研修所調査より
- ↑ 平成20年版 青少年白書
- ↑ 平成10年版厚生白書
- ↑ 母子家庭及び寡婦等の家庭生活及び職業生活の動向に関する事項を参照)
- ↑ 『平成15年全国母子家庭等調査』(厚生労働省)
- ↑ 2007年10月6日号 週刊東洋経済
- ↑ 公益財団法人荒川区自治総合研究所子どもの貧困・社会排除問題研究プロジェクト最終報告書「地域は子どもの貧困・社会排除にどう向かい合うのか― あらかわシステム」p32-32 2011年8月
- ↑ 生活保護と日本型ワーキングプアP97 道中隆 ミネルヴァ書房2009年
- ↑ 厚生労働省第6回社会保障審議会生活保護基準部会議事録 道中隆委員発言 2011年10月4日
- ↑ 北海道大学「生活保護受給母子世帯の自立支援課題」p86 杉村宏 2003年3月
- ↑ 生活保護vsワーキングプアp71 大山典宏 php研究所 2008年
- ↑ シングルマザーの就業と経済的自立 労働政策研究・研修機構 2013年11月20日閲覧
- ↑ 第164回通常国会参議院厚生委員会(平成18年3月29日)における中野冬美の発言など
- ↑ 児童扶養手当・父子家庭に独自支給
- ↑ 児童扶養手当「父子家庭にも」の声広がる
- ↑ 増える非正社員 父子世帯困窮 低収入でも児童扶養手当の対象外