平田オリザ
平田 オリザ(ひらた オリザ、男性、1962年11月8日 - )は日本の劇作家、演出家。劇団青年団主宰、こまばアゴラ劇場支配人。代表作に『東京ノート』『ソウル市民』三部作など。80年代に小劇場において見られた絶叫型の劇に対して、淡々とした会話とやりとりで進行していく「静かな演劇」と呼ばれるスタイルを打ち出し、新しい現代口語演劇の作劇術を定着させた[1]。戯曲集のほか『現代口語演劇のために』など理論的な著書も多い。
桜美林大学文学部助教授、桜美林大学総合文化学群教授、東京大学教育学部講師、早稲田大学文学部講師などを歴任。2009年より内閣官房参与。現在大阪大学コミュニケーションデザインセンター教授、首都大学東京客員教授、日本劇作家協会理事を務める。
祖父は医師の平田内蔵吉、父はシナリオライターの平田穂生。母は心理カウンセラーの平田慶子。母方の叔父に映画監督の大林宣彦がいる。歌手・舞台女優のひらたよーこと1989年に結婚したが、2011年離婚。
経歴
東京都に生まれる。平田オリザは本名で、ラテン語のoryza(正確な発音は「オリューザ」に近い)が「稲」を意味することから、オリザの父平田穂生によって「子どもが食いっぱぐれないように」との願いをこめてつけられた。目黒区立第一中学校を卒業して都立駒場高校定時制に進学。高校2年、16歳のときに高校を休学(のち中退)し、自転車による世界一周旅行を決行。その後世界26カ国を放浪し、1981年に旅行記『十六歳のオリザの未だかつてためしのない勇気が到達した最後の点と、到達しえた極限とを明らかにして、上々の首尾にいたった世界一周自転車旅行の冒険をしるす本』(晩聲社)として出版している。
大学入学資格検定試験を経て1982年国際基督教大学に入学。同年に処女作を執筆。翌年に劇団青年団を結成。84年、国際教育基金の奨学金により韓国の延世大学に1年間公費留学する。1986年、国際基督教大学教養学部人文科学科卒業。 その後すぐ父親が自宅を改装、借金をしてつくったこまばアゴラ劇場の劇場経営者になる。1994年、代表作『東京ノート』初演。同作品で翌年第39回岸田國士戯曲賞を受賞。同作は1999年の韓国公演以来、青年団により世界15カ国で海外公演されている。その後は1998年に『月の岬』で読売演劇大賞優秀演出家賞、2002年『上野動物園再々々襲撃』で同優秀作品賞、および日韓国民交流記念事業『その河をこえて、五月』で朝日舞台芸術賞グランプリ、2006年にモンブラン国際文化賞を受賞。
1999年桜美林大学文学部総合文化学科助教授就任(2005年に教授)。2006年、大阪大学コミュニケーションデザイン・センター教授に就任。大阪大学教授就任後は大阪の文化活動にもかかわっている。大阪創造都市市民会議発起人、シューレ大学アドバイザーとしても活動した。2009年、鳩山由紀夫内閣の内閣官房参与に任命され、所信表明演説の草稿を、他の参与らと共同で執筆[2]。鳩山首相に当日2時間にわたり、間の取り方や強調の仕方等、演劇の手法を直接伝授した[3]。2010年2月29日に開かれた「友愛公共フォーラム発会記念シンポジウム」で内閣参与としての自身の考え「近代国家をどう解体するか」等を示した[4]。 2010年、菅直人内閣で国際交流担当の内閣官房参与に任命される。同年12月。韓国民団が企画した「第4回永住外国人地方参政権シンポジウムin鳥取」で基調講演を行い、在日韓国人の地方参政権付与に賛意を示した[5]。
2011年、富士見市文化芸術アドバイザーを委嘱される[6][7]。同5月韓国ソウルでの講演会にて、日本が福島第一原発の汚染水を海へ捨てたことを、「米政府からの強い要請で(海に)流れた」と発言。公式発表されている事実(汚染水排水は日本政府が判断)を否定したが[8][9][10]、翌18日には発言は「勘違い」だったと述べて謝罪した[11]。 福島第一原発事故では、政府、自治体は、最早非力であり、国民各位がお互い支え合って難局を克服されたい旨の3月20日付の首相談話の草稿を書いた。 2012年、平田オリザと青年団に焦点を当てた想田和弘監督による長編ドキュメンタリー映画『演劇1』『演劇2』が釜山国際映画祭でワールド・プレミアされ、日本でも劇場公開された。
作風
テンプレート:出典の明記 平田は、現代口語演劇理論なるものを提唱している。平田は、日本における近代演劇は西洋演劇の輸入と翻訳にウェイトを置いて始まったものなので、戯曲の創作までもが西洋的な論理に則って行われてきたのではないかと批判し、このためその後の日本演劇は、日本語を離れた無理のある文体、口調と論理構成によって行われ、またそれにリアリティを持たせるための俳優の演技も歪んだ形になっていったのではないか、と考えたテンプレート:要出典。これを改善するために提唱されているのが、現代口語演劇理論である。
平田オリザの演劇の外見的特徴として「ときに聞き取れないようなぼそぼそした声で喋る」「複数のカップルの会話が同時進行する」「役者が客席に背を向けて喋る」などが挙げられるテンプレート:要出典。また、登場人物たちはただただ舞台上で淡々と会話を続けていく。これらはみな、「人間の日常はドラマティックな出来事の連続ではなく、静かで淡々とした時間が多くを占めるが、人間のそのものの存在が十分に劇的であり、驚きに満ちている」という理念から来ており、これまでのありのままの日本語から乖離した演劇理論を見直して、日本人のあるべき自然な言葉を舞台上に再構築し、それを見つめ直していこうという意思が込められているテンプレート:要出典。
著書・関連書籍
戯曲
- 『東京ノート・S高原から 戯曲集1』(1995年 晩聲社 のちハヤカワ文庫)
- 『転校生 戯曲集2』(1995年 晩聲社)
- 『火宅か修羅か・暗愚小伝―平田オリザ戯曲集〈3〉』(1996年 晩聲社)
- 『南へ・さよならだけが人生か―平田オリザ戯曲集〈4〉』(2000年 晩聲社)
- 『バルカン動物園』(2001年 ENBU研究所)
小説
- 『幕が上がる』講談社、2012
評論
- 『十六歳のオリザの未だかつてためしのない勇気が到達した最後の点と、到達しえた極限とを明らかにして、上々の首尾にいたった世界一周自転車旅行の冒険をしるす本』(1981年 晩聲社 のち「十六歳のオリザの冒険をしるす本」講談社文庫)
- 『受験の国のオリザ』(1983年 晩聲社)
- 『道路劇場、バヌアツへ行く』(1992年 晩声社)
- 『平田オリザの仕事〈1〉現代口語演劇のために』(1995年 晩聲社)
- 『平田オリザの仕事〈2〉都市に祝祭はいらない』(1997年 晩聲社)
- 『演劇入門』(1998年 講談社現代新書)
- 『冒険王』(2001年 ENBU研究所)
- 『対話のレッスン』(2001年 小学館)
- 『芸術立国論』(2001年 集英社新書)
- 『「リアル」だけが生き延びる』(2003年 ウェイツ)
- 『地図を創る旅―青年団と私の履歴書』(2004年 白水社)
- 『演技と演出』(2004年 講談社現代新書)
- 『演劇のことば』(2004年 岩波書店、2014年 岩波現代文庫)
- 『わかりあえないことから コミュニケーション能力とは何か』(2012年10月 講談社現代新書)
- 『新しい広場をつくる―市民芸術概論綱要』(2013年10月 岩波書店)
共編著
- 『gikyoku―workshop』山岡徳貴子共著(2001年 演劇ぶっく社)
- 『話し言葉の日本語』(2002年 小学館) 共著:井上ひさし
- 『16歳親と子のあいだには』(編著 2007年 岩波ジュニア新書)
- 『ニッポンには対話がない 学びとコミュニケーションの再生』北川達夫共著(2008年 三省堂)
- 『ことばの見本帖』(編著 2009年 岩波書店)
- 『コミュニケーション力を引き出す 演劇ワークショップのすすめ』蓮行共著(2009年 PHP新書)
- 『総理の原稿 新しい政治の言葉を模索した266日』松井孝治共著 岩波書店 2011
脚注
- ↑ 平田オリザ 『平田オリザⅠ 東京ノート』 ハヤカワ演劇文庫、2007年、207頁(内田洋一解説)および見返し。
- ↑ 毎日新聞2009年11月3日号
- ↑ 「所信表明演説:平田オリザさんが「演出」 誤算はヤジ」毎日新聞 2009年11月02日
- ↑ 「鳩山さん、あなたはガンジーじゃないから」 週刊現代 2010年4月17日号
- ↑ 山陰中央新報社 2010/12/10 [1]
- ↑ 富士見市文化芸術アドバイザーを委嘱しました(富士見市ホームページ、2011年5月20日閲覧)
- ↑ 平田オリザが富士見市文化芸術アドバイザーに(シアターガイド、2011年5月19日)
- ↑ 米要請で汚染水放出…平田オリザ氏、韓国で語る YOMIURI ONLINE(2011年5月18日13時13分 読売新聞)
- ↑ 【放射能漏れ】平田オリザ参与、汚染水放出は「米政府の要請」 政府否定 SankeiBiz 2011.5.18 13:14
- ↑ 平田オリザ氏の米要請発言、細野首相補佐官否定 YOMIURI ONLINE(2011年5月18日17時28分 読売新聞)
- ↑ 平田オリザ参与「撤回して謝罪」 「汚染水放出は米要請」発言 JCastニュース 2011/5/18 20:42
外部リンク
- welcome to seinendan site - 青年団の公式サイト。
- こまばアゴラ劇場 web site - こまばアゴラ劇場の公式サイト。
- 映画『演劇1』『演劇2』 web site - 平田オリザと青年団についてのドキュメンタリー映画『演劇1』『演劇2』(2012年、想田和弘監督)公式サイト。