左うでの夢
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テンプレート:複数の問題 テンプレート:Infobox 左うでの夢(LEFT HANDED DREAM)とは、坂本龍一の3作目のオリジナルアルバム。1981年10月5日にリリース。
解説
「歌はうまさじゃなく声色、ヘタでも自己表現としては音楽の中で最高のもの」ということで、坂本のヴォーカルが大々的にフィーチャーされている(10曲中6曲がヴォーカル曲)。1、2作目と比較するとシンプルなメロディー・構成の曲が増え、和音によるバッキングやカデンツ(終止形)を避けるなど、西洋音楽のボキャブラリーからの脱却がモチーフになっている。また、ファンク的なリズムを意識的に避けることと「祭りの音楽」がコンセプトとしてあったようだ。 共同プロデューサーにロビン・スコットが名を連ねているが、後に、このアルバムの数曲を基にロビン主導の12インチシングル『アレンジメント』が作られている。 制作にはキング・クリムゾンのエイドリアン・ブリュー、高橋幸宏、細野晴臣、仙波清彦などが参加した。
発売当時のレコードには、糸井重里の手になる「スナオサカモト」のコピーが付けられていた。タイトルについては、当初ロビン・スコットが「同盟」というタイトルを提案したが却下、矢野顕子が「左うでの夢」を提案したところ、それが採用された(坂本は左利き)。
1992年、93年にCD化された際にはMIDIレーベルから再発された。
収録曲
- ぼくのかけら
- 作詞:糸井重里 / 作曲:坂本龍一
- ゆったりとした3/4拍子のリズムに乗り、何本ものシンプルなメロディーが複雑に絡み合っていく。後にダンスリーとの共演アルバム『the End of Asia』で再演されている。
- サルとユキとゴミのこども
- 作詞:糸井重里 / 作曲:坂本龍一
- 三線(サンシン)を模したようなチープな音色のシンセ・リフとシンプルなメロディー、朴訥とした歌詞が特徴。ベースは坂本が弾いていると思われる。
- かちゃくちゃねぇ
- 作詞:矢野顕子 / 作曲:坂本龍一
- 「かちゃくちゃねぇ」はごちゃごちゃしていていらいらする様子という意味の津軽弁。そのいらだちを、坂本の声はうまく表現していて微笑ましい。ひたすらシンプルな沖縄風のメロディーを繰り返すが、2分24秒あたりからリズムが激しくなり動きが出てくる。また、ディレイ(エコー)がリズムにもメロディーにも効果的に使われている。エフェクトされたヴァイオリンをEP-4の佐藤薫が演奏している。
- The Garden Of Poppies
- 作曲:坂本龍一
- ダイナミクスがつけられたパーカッションのリズムと繰り返されるシンセベースの上で、エイドリアン・ブリューのギターが咆哮する。ドラムは坂本が叩いていると思われる。(アルバムレコーディング中に撮影された写真として、坂本・エイドリアンらが3人で1台のドラムセットを叩く場面が残っている)
- Relâche
- 作曲:坂本龍一、ロビン・スコット、エイドリアン・ブリュー
- Tell'em To Me
- 作詞:矢野顕子 / 作曲:坂本龍一
- 6/8拍子。マリンバのアンサンブルと坂本のヴォーカルによる暗いハーモニーがメインになっている。中間部では、ブリューのフリーキーなギターソロがフィーチャーされている。後に、ロビン・スコットのヴォーカルを加え「ONCE IN A LIFETIME」のタイトルで12インチ・シングル『アレンジメント』に収録。
- Living In The Dark
- 作詞:かしぶち哲郎 / 作曲:坂本龍一
- ムーンライダーズのかしぶち哲郎が作詞を担当。この曲も細野と高橋のコンビネーションが素晴らしい。
- Slat Dance
- 作曲:坂本龍一
- 隙間の多い、たゆたう様な3拍子のリズムとSEのみが前半は続く。後半から現れる完全4度のハモリの美しいメロディーが3回繰り返され、和音は解決しないままに曲を閉じる。
- Venezia
- 作詞:かしぶち哲郎 / 作曲:坂本龍一
- この曲もかしぶち哲郎が作詞。息の長いシンプルなメロディーが、従える和音の色彩を変えながら何度も何度も繰り返される。サックスの音が効果音的に使われている。冒頭からバックで聴こえる16分音符のシーケンスは、レコーディング中にトラック上よりシーケンサーとシンクロする為の情報が何故か消失した為、坂本が手弾きを行なった物。後に、ロビン・スコットのヴォーカルを加え「THE LEFT BANK」のタイトルで12インチ・シングル『アレンジメント』に収録。
- サルの家
- 作曲:坂本龍一
- リズムボックスのビートに乗って、サルが戯れる。ミキサー卓上のスイッチングで曲が構成されているようで、そのスイッチングの手つきが非常にグルーヴを感じさせる。