反射高速電子線回折
反射高速電子回折(はんしゃこうそくでんしかいせつ)とは、Reflection High Energy Electron Diffractionの略でRHEED(あーるひーど[1])とも言い、物質の表面状態を調べる技術の一つである。
真空中で電子銃により電子を加速し、加速した電子を試料表面にごく薄い角度で入射させる。電子線は試料表面で反射して、蛍光スクリーンに達し、回折図形として現れる。電子線の波長は加速電圧E=25kVのとき、λ=0.0077nmと非常に短いため、原子単位での表面状態が図形に影響する。電子線は蒸着の過程に影響しないため、分子線エピタキシー法などにおける成長中の表面構造のその場(in-situ)観察にも用いられる。
試料表面がアモルファス状になり、原子配列が揃っていないときはRHEED図形はハロー状(ぼやけたリング状)のパターンになる。また、表面が多結晶状態の場合は、非常に暗いリング状の図形となる。エピタキシャル成長により試料表面の格子面方位が揃っているときは、回折によりパターンが変わる。表面が平坦であれば、回折は面内方向にしか発生しないため、スポットが半円状に並んだパターンが現れる。また、表面が平坦で、反位相境界を含む小さな分域から出来ている場合にはストリークパターンが得られる。このストリーク状パターンの長さを測定することにより、分域の大きさを決定することが出来る。表面に原子層単位でも凹凸があれば、面直方向にも回折が発生するためドット状のパターンが現れる。 RHEEDパターン上の各スポットの強度が、成長している薄膜の相対的な表面被覆の状態によって周期的に振動するので、RHEEDは薄膜の成長をモニターするのに非常になじみの深い技術である。 ストリークやドットパターンの間隔は格子定数に影響されるので、RHEEDのパターンから表面の格子の状態を推定することもできる。