極座標系

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
円座標から転送)
移動先: 案内検索

極座標系(きょくざひょうけい、Polar coordinates system)とは、n 次元ユークリッド空間 Rn 上で定義され、1 個の動径 rn − 1 個の偏角 θ1, …, θn−1 からなる座標系のことである。点 S(0, 0, x3, …,xn) を除く直交座標は、局所的に一意的な極座標に座標変換できるが、S においてはヤコビアン が 0 となってしまうから、一意的な極座標表現は不可能である。それは、S に於ける偏角が定義できないことからも明らかである。

いろいろな極座標とその拡張

円座標 (Circular Polar Coordinates)

2 次元ユークリッド空間 R2 に於ける極座標。1 個の動径 r と 1 個の偏角 θ によってなり、最も単純な極座標である。 平面、極座標平面(または平面極座標[1])ともいう。特異点は (r, θ) = (0, θ) 即ち、xy座標での原点 (x, y) = (0, 0) である。2 次元実ベクトル空間にも定義できることから、複素数 C 上にも定義できる。この時、円座標を極形式と呼んだりもする。その場合、オイラーの公式を利用して z = re と表す。円座標平面上で偏角を限定しなければ、これはxy平面上でを描く。

  • 変換
<math>{x \choose y} ={r\cos \theta \choose r\sin \theta} ,{r \choose \theta} ={\sqrt{x^2 +y^2} \choose \theta_{x, y}}</math>
ただし、θx,y
<math>{x \choose y} =\sqrt{x^2 +y^2} {\cos \theta_{x, y} \choose \sin \theta_{x, y}},0 \leq \theta_{x,y} <2\pi</math>
なる実数

円柱座標 (Cylindrical Polar Coordinates)

円座標で (0, 0) を除く xy 平面上の全ての点を表現できるから、これに z 軸を加えれば、xyz 空間が表現できる。これを円柱座標と言う。円柱座標空間上(rθz 空間上ともいう)で、θ, z を限定しなければ、これは xyz 空間上で円柱を描く。 また、円柱座標空間上の特異点は z 軸上の全ての点である。

  • 変換
<math>\begin{pmatrix}

x\\ y\\ z \end{pmatrix} =\begin{pmatrix} r\cos \theta \\ r\sin \theta \\ z \end{pmatrix} ,\begin{pmatrix} r\\ \theta \\ z \end{pmatrix} =\begin{pmatrix} \sqrt{x^2 +y^2} \\ \theta_{x, y} \\ z \end{pmatrix}</math>

ただし、θx,y
<math>{x \choose y} =\sqrt{x^2 +y^2} {\cos \theta_{x,y} \choose \sin \theta_{x,y}} ,0\leq \theta_{x,y} <2\pi</math>
なる実数

球座標 (Spherical Polar Coordinates)

ファイル:Spherical with grid.svg
球座標による3次元ユークリッド空間内の点の表示

3 次元ユークリッド空間 R3 における極座標。球面座標(Spherical coordinates)とも呼ばれる。1 個の動径 r と 2 個の偏角 θ, φ によってなる(図を参照)。球座標において、動径を固定し、2 個の偏角を動かせば、xyz 空間上でを描く。直交座標と球座標の間の変換は次の式で与えられる。

<math>\begin{pmatrix}

x\\ y\\ z \end{pmatrix} =\begin{pmatrix} r\sin \theta \cos \varphi \\ r\sin \theta \sin \varphi \\ r\cos \theta \end{pmatrix} ,\begin{pmatrix} r\\ \theta \\ \varphi \end{pmatrix} =\begin{pmatrix} \sqrt{x^2 +y^2 +z^2} \\ \theta_{x,y,z}\\ \varphi_{x,y} \end{pmatrix}</math> ただし、θx,y,zφx,y はそれぞれ

<math>\cos \theta_{x,y,z} =\frac{z}{\sqrt{x^2 +y^2 +z^2}} \ (0\leq \theta_{x,y,z} \leq \pi),</math>
<math>\cos \varphi_{x,y} =\frac{x}{\sqrt{x^2 +y^2}} ,\ \sin \varphi_{x,y} =\frac{y}{\sqrt{x^2+y^2}} \ (0 \leq \varphi_{x,y} <2\pi)</math>

を満たす実数。z 軸上の点はこの変換の特異点であって、偏角が定まらない。

積分への応用

極座標平面での長方形は、直交座標に於ける扇形の一部となる。特に θ の長さが 2π であれば、直交座標においてはの一部となる。r を 0 から +∞ とすれば、この円は直交座標平面全体となる。従って、直交座標平面全体は、極座標平面に於ける長方形、r × θ = [0, ∞) × [0, 2π) に等しい。以上のことは広義二重積分に於いて有用である。なぜなら上記から、

<math>\int^{\infin}_{-\infin} \int^{\infin}_{-\infin} f(x,y)dxdy=\int^{2\pi}_0 \int^{\infin}_0 f(r\cos \theta ,r\sin \theta )rdrd\theta</math>

が導けるからである。この公式は、例えば次のように用いられる。

<math>\int^{\infin}_{-\infin} \int^{\infin}_{-\infin} e^{-(x^2 +y^2 )} dxdy=\int^{2\pi}_0 \int^{\infin}_0 e^{-r^2} rdrd\theta</math>

左辺の積分は、このままの状態で解くのは非常に困難だが、右辺の形にすれば、変数変換 r2r' によって、

<math>\int^{2\pi}_0 \int^{\infin}_0 e^{-r^2} rdrd\theta =\frac{1}{2} \int^{2\pi}_0 \int^{\infin}_0 e^{-r'} dr'd\theta</math>

とできるから、あとは通常の二重積分の方法に従って簡単に解け、答えは π となる。

出典

  1. 小出昭一郎 『物理入門コース2 解析力学』 1-1〜1-3節、岩波書店、1983年

関連項目

テンプレート:Link GA テンプレート:Link GA テンプレート:Link GA テンプレート:Link GA