ローマの祭り
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『ローマの祭り』(ローマのまつり、テンプレート:Lang-it-short)は、イタリアの作曲家オットリーノ・レスピーギが 1928年に完成させた交響詩。「ローマ三部作」(『ローマの噴水』、『ローマの松』、および本作)の最後を飾る作品。
演奏時間・初演
- 演奏時間:約25分
- 初演:1929年2月21日、アルトゥーロ・トスカニーニ指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック交響楽団
楽器編成
フルート3(ピッコロ持ち替え)、オーボエ2、コールアングレ1、クラリネット2、E♭管クラリネット、バスクラリネット、ファゴット2、コントラファゴット、ホルン4、トランペット4、トロンボーン3、チューバ1、ティンパニ、シンバル、タンブリン、トライアングル、テナードラム、グロッケンシュピール、シロフォン、銅鑼、ラチェット、鐘、鈴、タヴォレッタ(木槌で打つ小さな木の板)2、マンドリン、ピアノ(4手連弾)、オルガン、弦五部
構成
次の4つの部分は切れ目なく演奏される。各部にはレスピーギ自身によりコメント(標題)がつけられている。
チルチェンセス Circenses
- チルチェンセスとはアヴェ・ネローネ祭ともいい、古代ローマ帝国時代にネロが円形劇場で行った祭で、捕らえられたキリスト教徒たちが衆人環視の中で猛獣に喰い殺される残酷なショーである。咆吼する金管群が飢えた猛獣を、中間部の聖歌が猛獣に襲われるキリスト教徒の祈りを表している。
五十年祭 Il giubileo
- 古い賛美歌をモチーフとし、ロマネスク時代の祭(聖年祭)を表している。世界中の巡礼者たちがモンテ・マリオ (Monte Mario) の丘に集まり、「永遠の都・ローマ」を讃え、讃歌を歌う。それに答えて、教会の鐘がなる。
十月祭 L'Ottobrata
- ローマの城で行われるルネサンス時代の祭がモチーフ。ローマの城がぶどうでおおわれ、狩りの響き、鐘の音、愛の歌に包まれる。やがて夕暮れ時になり、甘美なセレナーデが流れる。
主顕祭 La Befana
- ナヴォーナ広場で行われる主顕祭の前夜祭がモチーフ。踊り狂う人々、手回しオルガン、物売りの声、酔っ払った人(グリッサンドを含むトロンボーン・ソロ)などが続く。強烈なサルタレロのリズムが圧倒的に高まり、狂喜乱舞のうちに全曲を終わる。
評価、作品の位置づけ
以下のような特徴指摘、あるいは評価がある。
- 『ローマの松』に比べてバンダが小規模である。
- 『ローマの噴水』『ローマの松』に比べオーケストレーションは大規模。色彩的・あざやかで派手な作品であり、通俗性が高い音楽である。
- 作曲者は生前には政治的に右寄りでオペラのピエトロ・マスカーニと共にベニート・ムッソリーニに協力したといわれる。この作品はファシズムの台頭がもたらした芸術家のイタリア礼賛と無縁ではないとみなされることもある。
- 「ローマの松」「ローマの噴水」に比べると、コンサートや録音にて演奏・収録される機会が少ない傾向にあリ、かつては「松」「噴水」を録音する一方、「祭」は録音しない指揮者も多かった(たとえば、ヘルベルト・フォン・カラヤン、フリッツ・ライナー、エルネスト・アンセルメなど)。ただし、近年は「祭」を含めた「ローマ三部作」で一枚のCDに収録することも多い(ユージン・オーマンディ、リッカルド・ムーティ、シャルル・デュトワ、ロリン・マゼールなど)。
その他
この曲を含む「ローマ三部作」はトスカニーニ指揮NBC交響楽団が演奏を残しており、1949~53年のモノラル録音であるにも関わらず、現代でも多くの人に決定盤として推薦されている。
吹奏楽編曲について
この曲は、吹奏楽編曲で演奏される機会がしばしばある(作曲者自身による吹奏楽版は存在せず、他の編曲家による譜面である。編曲譜も複数種類存在する)。特に、アマチュア吹奏楽団がコンクールにて、8分程度に抜粋短縮して演奏する例は非常に多い。
参考文献
- リコルディ社ポケットスコアとフルスコア(イタリア語)
- CBSソニー:ユージン・オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団CD (30DC788)
- ポリドール(ロンドン):シャルル・デュトワ指揮モントリオール交響楽団CD (F00L-23083)
関連項目
- ローマ三部作を成す作品群