リンゴ酸
テンプレート:Chembox リンゴ酸(林檎酸、リンゴさん、malic acid)とはヒドロキシ酸に分類される有機化合物の一種。 リンゴ酸の和名はリンゴから見つかったことに由来する。示性式は HOOC-CH(OH)-CH2-COOH、分子量は 134.09。IUPAC置換命名法では 2-ヒドロキシブタン二酸 (2-hydroxybutanedioic acid) と表される。 2位に光学中心を持ち、リンゴに多く含まれる異性体は (S)-(−)-L体 である。0.1 % 水溶液の pH は 2.82。
生化学
天然にはL-リンゴ酸が見られる。
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L-リンゴ酸 - D-Äpfelsäure.svg
D-リンゴ酸
リンゴ酸は生化学で重要な役割を果たす。C4型光合成では、カルビン回路のCO2源となる。クエン酸回路ではH2Oがフマル酸のSi面に付加することで(S)-リンゴ酸が生成する。(S)-リンゴ酸はリンゴ酸デヒドロゲナーゼによって酸化され、オキサロ酢酸となる。ピルビン酸から補充反応によって生成されることもある。
孔辺細胞では、ホスホエノールピルビン酸のカルボキシル化によっても合成される。これは細胞がカリウムを取り込む際にその対イオンとなる。細胞内の溶質の濃度が上昇すると浸透圧が低下し、水が流入して細胞が膨張することで気孔が閉じる。
用途
爽快感のある酸味を持つため、飲料や食品の酸味料として用いられる。また、pH調整剤、乳化剤など、食品工業においてさまざまな用途に利用されている。
キレート性を持つ酸であることから、金属表面の洗浄などにも用いられる。
食品、工業に使われるリンゴ酸は、多くの場合ラセミ体が用いられる。
食品との関連
リンゴ酸は1785年、カール・ヴィルヘルム・シェーレによってリンゴジュースから単離された。1787年、アントワーヌ・ラヴォアジエがラテン語mālum(リンゴ)に由来するacide maliqueという名を提唱した[1]。 リンゴの酸味に寄与する。ブドウにも存在し、ワインでは5g/l以上の濃度になることもある[2]。ブドウが熟していくと共にその量は減少するが、ワインに酸味を与える。マロラクティック発酵は、リンゴ酸をよりまろやかな乳酸に変換する。
食品添加物としては、E296というE番号が与えられている。酸味の少ないクエン酸の代用としても使われるが、過剰摂取により口の中に炎症を引き起こす可能性もある。食品添加物として欧州[3]・米国[4]・オーストラリア、ニュージーランド[5]で認可されている。
反応
発煙硫酸によって自己縮合し、ピロンであるクマリン酸(coumalic acid)を与える(クマリン(coumarin)とは異なる)[7]。
(-)-リンゴ酸はPCl5の作用で(+)-クロロコハク酸となり、(+)-クロロコハク酸は酸化銀(I)触媒により(+)-リンゴ酸となる。(+)-リンゴ酸にPCl5を作用させると(-)-クロロコハク酸となる。このことからワルデン反転が発見された。
出典
- ↑ The Origin of the Names Malic, Maleic, and Malonic Acid Jensen, William B. J. Chem. Educ. 2007, 84, 924. Abstract
- ↑ "Methods For Analysis of Musts and Wines", Ough and Amerine, John Wiley and Sons, 2nd Edition, 1988, page 67
- ↑ UK Food Standards Agency: テンプレート:Cite web
- ↑ US Food and Drug Administration: テンプレート:Cite web
- ↑ Australia New Zealand Food Standards Codeテンプレート:Cite web
- ↑ Karlheinz Miltenberger "Hydroxycarboxylic Acids, Aliphatic" in Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry,2005, Wiley-VCH, Weinheim. テンプレート:DOI
- ↑ テンプレート:OrgSynth