メカチューン
概説
メカニカルチューニングの略語と言われている。特に、レース用などの目的で、既存の自然吸気エンジン本体に改造、加工を施し、過給器等を用いず、機械加工で出力向上を図る事を指す。
量産エンジンをメカチューンで改造し大幅な出力向上を狙うのは、耐久性など出力性能以外の性質を度外視する点で、大きなリスクを負う。従って、一般にそのようなエンジンは、ドライバーに対しての負荷が高く、維持にも問題をかかえると言う点で、市街地での使用には耐えない。ただし、振動や強度等の問題点に、適確な理論に裏付けられた技術によって全て対策し製作(改造)された物は、ある一定の耐久性能を有するものもある。N車規程の耐久レースやラリーにおける技術はその例である。
これらの欠点やリスクを補うため、F-1やル・マンに代表される世界格式クラスのスプリント、耐久レースでは市販エンジンを使用せず、メーカー(コンストラクター)によるオリジナルエンジンを搭載できるカテゴリーが多く存在する。初めから目標馬力が高い設計であれば、当然高出力にも耐えうるからである。また、レギュレーションでオリジナルエンジンの使用が規制されているレースカテゴリーでも、市販エンジンと『同じ形』の部品をゼロから作り直し、使用しているチームもある。(設計図面は同じだが量産品をベースに加工するのではなく、新規に材料を選び、作製することで加工精度を非常に高く出来る為、特に振動やイナーシャに対し非常に有益な対策が出来る。)
市販車両においても近年の燃焼解析技術や、制御系技術の向上、デジタルデバイスの採用等により、市販状態でありながら125PS/Lを超えるエンジンも珍しくなく、顕著な例としては本田技研のVTECエンジン、三菱自動車のMIVECエンジンが挙げられる。
手法
吸気/排気効率の向上
カム角位相の調整、ポート加工、吸排気系の変更、吸排気流路の表面処理。流体力学の知識が必要。 デメリットとして、馬力目的に最大トルク発生回転数を高回転へシフトさせると、 低回転~中回転域でのトルクの減少(相対比として)が発生する点がある。 これは吸気脈動効果や吸気慣性効果の減少、およびバルブタイミングの特性による。 バルブタイミングについては、カム角位相の調整にくわえ、可変バルブタイミングシステムも効果的である。 だがレースでは高回転しか使用しない為、VTECなどの可変バルブタイミングリフト機能を無効にし、 高回転に特化したカムを使用する場合もある。
燃焼効率の向上
圧縮比の向上(ピストン形状の見直しやガスケット厚の変更、シリンダヘッドの面研削など)、燃焼室形状の最適化、電子制御直噴技術、吸気混合比および点火時期の最適化。 熱力学等の知識が必要。圧縮比や排気量の向上は、理論最大出力増加につながるが、ノッキング、デトネーション等によりエンジンが損傷するリスクが増しやすい。
イナーシャ、摩擦損失などのフリクションロスの低減
動的バランスの最適化、摺動抵抗の減少により出力ロスの低減を図る。材料力学、機械加工などの知識が必要。 摺動部におけるクリアランスの調整や潤滑系統の最適化を含む。 エンジン回転数上限を上げ出力増加を図ろうとする場合は、バルブスプリングのサージング現象やピストンリングのフラッタリング現象、出力上昇に伴う加振力(振動)の増大、各部品の機械的強度の相対低下等が発生し、多くの機械的対策を必要とする。テンプレート:Car-stub