ミリタリーミニチュアシリーズ
ミリタリーミニチュアシリーズは、タミヤが製作しているAFV(装甲戦闘車輌)・フィギュアを中心としたプラモデルのシリーズ。同シリーズの充実により、1/35が戦車模型の事実上の標準的スケールとなっている。MMと略される事が多い。
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1/35 ミリタリーミニチュアシリーズ
「1/35ミリタリーミニチュアシリーズ」(以下MMと略)は当初、「1/35戦車シリーズ」(走行可能なモーターライズキット)のアクセサリー的な物としてスタートした。シリーズNo.1の「ドイツ戦車兵セット」は1968年9月に発売され、以降No.3の「シュビムワーゲン」がソフトスキン(非装甲車両)として初めてシリーズに加わると大きな反響を呼び、No.9ではモーターライズ機構を除いて代わりに歩兵フィギュアを追加した「ドイツII号戦車」が発売され、それまでの動かして楽しむという戦車模型の概念に一石を投じ、ディスプレイという新たな楽しみ方を確立する。その後も同様にモーターライズ機構を廃したりフィギュアをセットする他、最初からディスプレイ専用に設計されたシャーシ部品の戦車や戦闘車輌、大砲のキットも次々と加わり、シリーズを固めていった。
1972年にはシリーズNo.17「88ミリ砲Flak36/37」を発売し精密感、ボリュームと組み易さで他社のミリタリーモデルとは一線を画す様になり、またフィギュアの出来も向上した。以後も続々と新製品が発売されるが、ベトナム戦争が終結し、ミリタリーモデルを楽しんでいた中心世代が進学・就職・結婚など人生の転機を迎える'80年代にさしかかり、またスーパーカーブームやアニメブーム等におされシリーズの展開は次第に鈍化していき「ミリタリー冬の時代」と呼ばれる時期に入ってしまった。
やがて、市場調査を兼ねた限定生産品などを発売し、ミリタリーモデルの需要が見込まれると判断したタミヤは1989年12月、No.146「タイガーI後期生産型」を発売した。このキットは、それまでのMMシリーズの戦車キットの金型の多くがモーターライズキットの物を兼ねるという制約から、スケールや精密感が一部スポイルされていたのに対し、実車に対し忠実かつ精密かつ組み立て易く設計されていた。履帯もそれまでモーターライズ兼用のポリプロピレン製の物だったのが、本作で初めてプラ製の組立式が採用された。ただし、組み立て式履帯は初心者向きではなかったため、後の新パンサー、新キングタイガーではこれを別売りにしている。また従来のベルト式も、新製品では材質が変更され接着や塗装が可能になっている。ただし、この新素材には従来品より劣化が激しく、数年でクッキー菓子の様にボロボロに割れるという従来品ではなかった現象が確認されている(2007年以降発売されたヘッツァー駆逐戦車やJS-2重戦車などではベルト式と部分連結式の双方が同梱されている)。 タイガーI以降のシリーズは俗にそれまでのシリーズに対し「新MMシリーズ」等と呼ばれ、それまで諸般の事情で模型製作から遠ざかっていた人が再び模型製作を再開する、いわゆる「出戻りモデラー」を生み出す一助になった。現在では、精密感や組易さを改善したドラゴンの製品や、AFVクラブ、トランペッター等の中国や台湾を拠点とするメーカーとの競合が激しくなっている。
かつての1/35戦車シリーズの中には、電動モーターによる走行を前提として設計していたため、電池やギアボックスの収納の関係で実際は1/32相当のもの(M4A3E8やM36、M10等)も含まれており、これらは一部を除いてMMシリーズには加えられていない。ただし近年、モーターライズ機構を廃した限定販売キットとして(MMとしてではなく)発売されることがある。 しばしばレギュラー商品の生産が一時中断されるが、そういった物に関してはスポット生産による再版で対応されている。非常に入手困難な物が手に入るようになるため多くのモデラーから概ね歓迎されてはいるが、消費者からのリクエストに応える類のものではないため、時として限定商品なども再版されてしまうため必ずしも消費者のニーズにあったものではない。そういった再版体勢に対しての苦言を2ちゃんねるなどの匿名掲示板や個人ウェブサイト、MIXIなどのSNSやその他のユーザー間の交流を通して多く聞くことができることも事実である。
近年は、サードパーティ製オプションパーツ(エッチングパーツや金属製キャタピラなど)を同梱したパッケージや、フィリピン工場で製作された塗装済み完成品も発売されている。
1/35 ミリタリーミニチュアシリーズの一覧
1/48 ミリタリーミニチュアシリーズ
海洋堂のワールドタンクミュージアムやレベル・ドラゴンの1/72モデルの登場で1/35未満の「ミニスケール」の人気が高まる中、タミヤが新たにスタートしたのが1/48MMシリーズである。
当初はケッテンクラートやキューベルワーゲンといった小型車輌からスタートし、同スケールの航空機モデルとの組み合わせが想定されていたが(名称も当初「1/48ミリタリーミニチュアビークル(MMV)」だったが、後に大型車輌の充実と共に改められた)、続いて突如「タイガーI初期型」を発表、モデラーを驚かせた。
その後も大戦物アイテムを驚異的なハイペースでリリースし続けており、更にフィギュアセットや情景用アクセサリも発売されるなど一大シリーズを形成しつつある。またサードパーティ製のエッチングパーツ等のオプション商品も充実しつつある。
シリーズの大きな特徴として、ほとんどの車輌にダイキャスト製シャーシとプラスチック製組立式キャタピラを採用している事がある。ダイキャスト製パーツは1/35でも一部導入されており(軽装甲機動車のシャーシやルクレールの転輪など)、タミヤ側は「手にした時の重量感の演出」をアピールしているが、接着に瞬間接着剤が必要な事や加工の難しい事などからモデラーの間では概ね不評である(2008年11月発売のマーダーⅢ以降の製品はプラスチック車体にウェイトを入れる形式に変化している)。特に加工性については、サスペンションアームも一体成形されているために不整地ベースへの接地加工がほとんど不可能であるという重大な欠点が生じている(塗装に関してはあらかじめサーフェイサー処理がなされているので問題無い)。一方でキャタピラは直線部分を一体化するなど組み立て易さに配慮されており、スケールを考えると従来のベルト式では見栄えが厳しい事もあって概ね好評である。
ちなみにタミヤは1970年代にも当時の新型戦車を採り上げた1/48戦車シリーズを発売しているが、こちらはモーターライズ・シングル(直進のみ)のトイ的な性格の強い物であった。ずっと後にギアボックスが金属製からミニ四駆の技術を応用したABS樹脂製となり、シャーシが各車共通となったリモコン版が発売され、現在は一部の車輌が完成品として発売されている。
タミヤがこの1/48MMシリーズの開発に注力、シフトしている事については、以下のような理由が挙げられている。
- 既に1/35では内容・価格などにおいて海外メーカー(特にドラゴンなどの中国勢)との競争が困難である事から、同社の売りである組み立て易さをアピールしやすく価格も抑えられる。しかし、1/48でもすでにホビーボスなどが追撃を開始した。
- 現代の住宅事情を鑑み、また、飛行機モデルのスタンダードスケールとの統合を企図した(2006年、静岡ホビーショーでのタミヤスタッフのコメント)
- タミヤが近年展開している塗装済み完成品にも適したサイズである事も大きいと言われている(前述のダイキャストシャーシや組立式キャタピラも完成品販売を見越した処置と見られる)。
ただし1/48アイテムの開発・生産はフィリピン工場にて行われており、従来の1/35シリーズとは別体制になっているため、1/48の開発により1/35が停滞する事は無いと表明している(アーマーモデリング誌2008年10月号の田宮会長インタビューより)。
現在のラインナップは大戦ものが主だが、2008年8月には同スケールの現用アメリカ陸軍・多用途装輪車がF-117のセットで発売され、2009年10月にはバリエーションのカーゴタイプが1/48MM初の現用アイテムとして発売されている。
1/48MMシリーズが市民権を得たことによる波及効果
バンダイも過去に機甲師団シリーズと銘打った1/48プラモデルのシリーズを販売しており、1/35MMシリーズとの競合に敗れ、また「AFV冬の時代」の到来で一旦は市場から姿を消したが、1/48MMシリーズの好調な売れ行きから再発売が検討されているという報道があったほか、ハセガワが航空機のジオラマ用アクセサリーとして第二次世界大戦当時の車両の新規開発を行う等、波及効果がスケールモデルとしては大きなものとなった。
一方で、これまでミリタリーモデリングはほぼ1/35限定の世界だったのが、1/48その他のスケールの主流化により、モデラー側も工作・塗装など従来と異なるアプローチを要求されている。