マルバネクワガタ属

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マルバネクワガタ属 (Neolucanus) は昆虫綱甲虫目クワガタムシ科に属する分類群。日本南西諸島を北限に、東アジアからインドに渡って分布する。 ツヤクワガタ属Odontolabisにまとめられることもある。

オスの場合、大歯型では大顎全体が上方に反り、先端付近の内歯で噛み合うようになっている。両歯型ではオニクワガタ属のようになり、系統発生学的には、ツヤクワガタ属だけではなく、オニクワガタ属やミヤマクワガタ属にも近いともいわれる。「丸羽根」の名の通り上翅を含む平面形はズングリとしている。

体色は全身が黒いものが多く一般的には地味なイメージがあるが、全体或いは前翅のみが褐色のものやツヤクワガタ属の一部のように斜めに黄色い模様がついたり、頭部脇にツヤクワガタのような突起が発達する種類も存在する。判別も前胸背板の後角が尖り方、大顎の内歯の大きさ、有無によって行う。

余談だが、ヤエヤママルバネクワガタのメスは体長57mmで日本最大(2002)、マキシムマルバネクワガタは体長60mmを越え、クワガタムシのメスとしては世界最大級の大きさである。

おもな種

日本

ファイル:Neolucanus okinawanus.jpg
オキナワマルバネクワガタ(国立科学博物館の展示)

日本では奄美群島以南の南西諸島に生息するためか馴染みが薄いが、最大個体は60ミリ以上になり、横幅もある。

今日知られる分類は水沼哲郎による熱心な研究[1]によるところが大きく、以前はチャイロマルバネクワガタ以外はタテヅノマルバネクワガタとして括られていた。また、一般に採集されるようになったのは沖縄アメリカ合衆国から返還された1972年以降で、おもに琉球大学の学生が最も早期から盛んに採集していた。

チャイロマルバネクワガタ Neolucanus insularis Miwa, 1929
石垣島西表島。体色が明るい茶色、体長は♂で18.8mm - 36.6mm、飼育下では35.7mm(2008年)と小型、昼行性、よく飛翔する、幼虫の食物が樹木の赤色腐朽物(フレーク)ではない、といった点で日本の他のマルバネクワガタと大きく異なる。生活史が長らく不明であったが、幼虫が林床土壌を食べて育つ生態を山口進が解明した。
アマミマルバネクワガタ N. progenetivus Y. Kurosawa, 1976
原名亜種 N.p.progenetivus
奄美大島徳之島。旧タテヅノマルバネクワガタ亜種群中最もオスの大顎の発達が悪く、大歯型は極めて稀である。体長は♂で43.3mm - 65.2mm(飼育下では68.3mm、2012)。国産マルバネクワガタの中で年間の成虫出現期が最も早い。なお環境省第4次レッドリストでは絶滅危惧II類(VU)環境省レッドリスト)に指定されている。
ウケジママルバネクワガタ N. p. hamaii Mizunuma, 1994
請島。一部のマナーの悪い採集者のため、同島は採集禁止区域になっている。1994年に追加された。なお環境省第4次レッドリストでは絶滅の可能性が2番目に高い絶滅危惧IB類(EN)環境省レッドリスト)に指定されている。
オキナワマルバネクワガタ N. okinawanus Sakaino, 1984
沖縄本島北部。黒色で艶がある。国産マルバネクワガタの最大種で体長は♂で43mm - 70mm、飼育下では71.9mm(2012年)文献によってはアマミマルバネクワガタの亜種に分類されている。なお環境省第4次レッドリストでは絶滅危惧II類(VU)環境省レッドリスト)に指定されている。
ヤエヤママルバネクワガタ N. insulicola Y. Kurosawa, 1976
原名亜種 N. i. insulicola
石垣島西表島。オキナワマルバネクワガタに似るが体色は若干茶色味を帯びる。体長は♂32.6mm - 67.0mm♀38.4mm - 57.0mm飼育下では♂69.2mm(2006年)幼虫はシイカシリュウキュウマツ等のフレークを食べて育つ。八重山諸島が生息地であるが、数は減少した。なお環境省第4次レッドリストでは準絶滅危惧(NT)環境省レッドリスト)に指定されている。
ヨナグニマルバネクワガタ N. i. donan Mizunuma, 1985
与那国島。体長は♂で35.4mm - 62.7mm、飼育下では65.0mm(2011年)。生息地はハブが生息していないため飼育用の材をとるための採集者が増えたためとそれを批判している省庁などが開発を進めたため近年生息数が壊滅的に激減し、「幻のクワガタ」とも呼ばれる。2011年に絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律に基づく国内希少野生動植物種に指定され原則採集や譲渡が禁止された。愛好家や研究者は採集品だけでなく市場に大量に出回っている飼育品の譲渡もできなくなったため野外で絶滅すれば飼育品も残らずに種自体が絶滅するとして特定国内希少野生動植物種に指定するか与那国島での採集禁止にするよう求めている。なお環境省第4次レッドリストでは絶滅の可能性が最も高い絶滅危惧IA類(CR)環境省レッドリスト)に指定されている。

日本以外

マキシムマルバネクワガタ N. maximus
原名亜種 N. m. maximus体長♂42mm - 74.2mm 飼育69.2mm(2007)
インドシナ半島
N. m. confucius
インド
N. m. fujitai
福建省
N. m. vendli
台湾
パリーマルバネクワガタ N. parryi
インドシナ半島。斜めの黄色い模様を持つが、うっすらと模様があるもの、斜めより少しふっくらとしているものなどもいる。
アカマルバネクワガタ N. swinhoei Bates, 1866
台湾N. nitidus (Saunders, 1854) に類似しているので、亜種関係もある可能性をもつ。『月刊むし』によると、与那国島の海岸で採集されたという記録があるが台湾から海流によって流れてきた可能性が高いといわれている。
デリカトゥスマルバネクワガタ N. delicatus
ベトナム。大顎は他のマルバネクワガタよりも長くなり、先端に内歯が密集する。前翅が黒くなるタイプと、パリーフタマタクワガタのように赤味が付くタイプがいる。
ギガンテウスマルバネクワガタ N. giganteus
タイ北部・ラオスベトナム北部・中国南部に分布。ほっそりとした体型で、マキシムスの次ぐらいに大きくなる。体色は黒で、前翅は飴のような光沢を持つ。
ブレビスマルバネクワガタ N. brebis
ミャンマー・タイ北部・ラオス・中国雲南省。前翅を除いた胸部が太くなり、がっちりした印象がある。
カスタノプテルスマルバネクワガタ N. castanopterus
インド北部・ネパールシッキムブータン・ミャンマー・タイ北部・中国雲南省。頭部が小さく、前翅が褐色に色づく。
バラデバマルマネクワガタ N.baladevaオス

最大体長66.3mm(飼育65.2mm) :ラティコリスマルバネクワガタN.laticolis ジャワ

脚注

  1. テンプレート:Cite journal

外部リンク

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