マネー・マネージメント・ファンド
マネー・マネジメント・ファンド(Money Management Fund、通称:MMF)は、換金性が高い追加型公社債投信の一種である。外貨建のMMFと区別するため「日本円MMF」などと言われる場合もある。
概要
1971年にアメリカで誕生した「Money Market Fund」をベースに日本で作成され、1992年5月より円建て商品である「Money Management Fund」の販売が認可された。日本では以前から販売されている「外貨建マネー・マーケット・ファンド(外貨MMF)」はベースとなった「Money Market Fund」であり、本記事の日本円MMFとは仕組みなど性質が異なるものである。
類似商品に、購入当日から解約が可能でMMFより極めて安全性が高い(一時的な資金預かり用途の)投信商品である「MRF(MoneyReserveFund)」、中期国債を中心とした安定運用を組み換金性が高い「中期国債ファンド(中国F)」などがある。
日本円MMFは、基本的に債券の償還が長期ではない日本国債・普通社債(公社債)と、コマーシャルペーパーや無担保コール・譲渡性預金といった短期金融商品を組み入れ、基準価額が1口=1円(1万口=1万円)となるように運用される。
毎日決算を行い、その日の運用損益を全額分配する実績分配型である(マイナスとなった場合は差し引かれる)。月末の最終営業日後に当月分をまとめて分配する。信託期間は無期限であるが、購入約定後30日未満に解約の場合は手数料相当の信託財産留保額が差し引かれるため、この場合は実質元本割れとなる。
1999年以降のゼロ金利政策により、1年物の定期預金・定額貯金・金銭信託と比べて高利回りである時期が続いた為、預金より僅かでも収益性が優位でリスクが低い円建MMFや中期指向の公社債投信へ資金流入が続いた。
円建MMFは投資信託の中ではローリスク・ローリターン商品であるが、後述の通りファンドの運用先によっては元本割れのリスクが存在するので、ペイオフ上限額までは円貨定期預金あるいは普通預金などの方が元本保証の確実性は高い。なお、銀行商品であっても仕組預金・通常の金融債・ヒットなどはMMFと同様に所定期間内で中途解約を行った場合は実質元本割れとなる場合がある。
販売箇所
日本で金融ビッグバンが発生する1998年以前までは証券会社に限り取り扱われてきたが、ビッグバン以降、銀行・信用金庫などの金融機関と証券仲介業者(販売会社)でも販売されている。販売会社によっては窓口販売の他、インターネットトレード・インターネットバンキング、電話注文(テレホンバンキング)でも取り扱っている。また、確定拠出型年金の運用商品としても販売金融機関(銀行・証券)によっては取り扱いがある。
かつては東海銀行・UFJ銀行のATMでMMFの購入をキャッシュカードの普通預金口座残高から振り替える形で取り扱っていたが(投資信託取引口座の開設が予め必要)、2004年頃に取りやめている。野村證券では証券総合取引口座を開設していない顧客の預かり金口座として、MRFではなくMMFが設定されるため、入金(買付)後30日以内の出金(中途解約)を行った場合は元本割れが生ずる。
購入手数料を課さないノーロード商品であり、購入当初の最小購入単位は1円、100円、1万円以上1円単位など運用会社や販売会社の定めによって区々である。なお、設定(募集)当初の基準価格は1万口あたり1万円と定めているファンドが多い。
基準価格割れ
2000年に発生した三洋証券系の投信顧問会社 三洋投信委託(現プラザアセットマネジメント)の信用不安から生じた大量解約による信託財産減少により、同社設定MMF商品の基準価格が1万口=1万円を割り込み、日本においてMMFの元本割れが初めて生じた。
2001年にマイカル(9月)・エンロン(12月)が破綻。両社の社債がデフォルトを引き起こしたため、それを組み入れていた債券運用型投資信託は評価額が大きく低下し、三洋投信・日興アセットマネジメント・明治ドレスナー・アセットマネジメント(明治生命保険とアリアンツ傘下のドレスナー銀行の合弁会社、現明治安田アセットマネジメント)など、MMFの基準価格割れを起こす運用会社が続出する事態となった。
これら各社では、日本国債の様に元本割れしない絶対的な安定性のある投資先よりも、収益性に偏重して信用リスクがある投資先を幾つか組み入れていたため一定の運用規模があり、限定的な損失で有りながら元本割れしていない他のMMF商品でも解約が一時的に増加。また、同類の投資信託である中期国債ファンドにおいても三洋投信委託のファンドが大成火災海上保険のCPがデフォルトとなり史上初の元本割れを発生したことで、投資信託の購入高が縮小する事態となった。
元本割れを起こした場合は、約款で買付を制限(新規流入を事実上停止)し払戻しのみの取り扱いとする運用会社が多いが、その様な場合は同じ運用会社で、新たに組成したMMFやそれに代替される商品を設定するケースが殆どである。