プレ・インカ
プレ・インカとは、インカ帝国以前のアンデス文明の諸文化を指す。
概要
プレ・インカは、インカ帝国以前のアンデス文明の諸文化として一括りにされているものの、広大な南米大陸の海岸部・乾燥した平野部・多湿な山間部という異なる環境をもつため、地域的な差異も大きい。明確な文字文化を持たず、連続性のある文化が残らなかったために遺物から当時をしのぶしかないケースも多く、また、新たに発見された遺跡により歴史的空白を後から補填されたケースもあり、その全容は依然として調査中である。
インカ帝国も含めて鉄器文明に到達せず、新石器時代[1]のまま過ごしたが、その一方で土器は独特の進歩を見せ、各々のプレ・インカ文化ごとに特徴ある土器が発見されている。しかし、後世の人間が副葬品として死者とともに埋められた土器を発掘、ワコと呼び習わし神聖視して祀る風習を持ったため、墓泥棒(職業的な盗掘人を「ワッケーロ」という)などにより遺跡が荒らされ、これら土器の多くもワコとして家庭に祭られたり土産物などとして販売されていたものが発見・保護され博物館に収蔵されることも珍しくない。現在、世界各地の博物館に展示されているナスカ文化の土器のほとんどがもとをただせば盗掘品といわれているなど、出土地域が不明な遺物が多い。
ナスカの地上絵で知られるナスカ文化もこのプレ・インカの一つではあるが、多くが独自の高度な文化を築きながら遺跡だけ残して消滅していることにもちなみ、考古学者から好事家や神秘主義者またはオーパーツ信奉者の注目を集め、考古学的な調査から様々な憶説・空想・サブカルチャー的な情報までもが乱れ飛んでおり、加えてラテンアメリカというイメージから、人種的にも連続しない中米の古代文化と混同する者までいる。
ただ、プレ・インカの文化・文明はヨーロッパ地域の文化・文明と完全に断絶して発展を遂げてきたこともあり、その独自性は中米の古代文化と並んで、21世紀初頭にあってなお考古学分野の重要で解明されきっていないテーマの一つである。
年代と文化の遷移
下記に主なプレ・インカ文化を年代順に列挙する。
- テンプレート:仮リンク(アンデス全域;1000B.C.頃~200B.C.頃)
- ナスカ文化(ペルー南海岸;A.D.1頃~A.D.600頃)
- ティワナク文化(チチカカ湖畔;A.D.1頃~A.D.900頃)
- モチェ文化(ペルー北海岸;A.D.100頃~A.D.700頃)
- ワリ文化(アンデス全域;A.D.800頃~A.D.1000頃)
- シカン王国(北海岸ヘケテペケ川流域;A.D.800頃~A.D.1100頃)
- チムー王国(ペルー北海岸;A.D.1000頃~A.D.1476頃)
参考文献
- 『古代インカ文明の謎-その先人たちの文化-』(著:ミロスラフ・スティングル 訳:三輪晴啓)出版:佑学社