プラークリット
テンプレート:語族 プラークリット(praakRta प्राकृत)は、古代インドにおける「俗語」を総称した呼び方。サンスクリット「洗練された言語」と対比して名づけられた語であり、「土着の、粗野な言語」を意味する。具体的にはパーリ語、テンプレート:仮リンク(半マーガディー語の意味)、テンプレート:仮リンク、テンプレート:仮リンク、テンプレート:仮リンクなどを指す。ジャイナ教の経典に用いられたプラークリットはテンプレート:仮リンクと呼ぶ。
歴史
もっとも早い刻文はアショーカ王の碑文に現れており、続いてパーリ語経典、ジャイナ教の経典にも現れ、6世紀頃まで方言群にわかれながら利用された。6世紀以降はアパブランシャ語群として更に崩れた形に分化した。テンプレート:仮リンクはサンスクリット語で「崩れた」を意味する。このアパブランシャ語群が現代インド諸語(ヒンドゥスターニー語、ベンガル語、マラーティー語、グジャラート語、オリヤー語、パンジャーブ語、コンカニ語、シンハラ語)へと発展した。サンスクリットをインドの文法学者パーニニが規定した狭義の意味に限れば、シャウラセーニー以外のプラークリットはサンスクリット起源とは言えない。しかしサンスクリットをパーニニの定義に限らず広く捉えれば、プラークリットはサンスクリットから発生したものと言うことが出来る。
演劇プラークリット
プラークリットは、インド古典劇でも利用され、サンスクリットと併用された。このようなプラークリットはテンプレート:仮リンクと呼ばれる。インドの古典劇において、サンスクリットはバラモン・王・学者・大臣・将軍等高級軍人などの男性、及び第一王妃、大臣の娘、尼僧、高級娼婦などが使用した。これに対してプラークリットは婦人・子供・地位の低い男性が用いた。
演劇プラークリットには、テンプレート:仮リンク、テンプレート:仮リンク、テンプレート:仮リンクの三種類があり使い分けされた。通常劇では、サンスクリットとシャウラセーニーが利用され、シャウラセーニーを利用する登場人物が韻文を使う時はマハーラーシュトリーが利用された。マハーラーシュトリーは抒情詩にも利用された。マーガディーは極めて地位の低い男性に用いられた。このように、同一劇の中で3種類のプラークリットが使い分けられた。なお、演劇用プラークリットは劇中に登場する、劇中言語としての口語であって、劇が作成された時代(3世紀から10世紀頃)にあって、実際の日常生活の口語ではなかった。元は口語だったが、インド古典劇の時代にあっては演劇専用口語言語として”文語化”していたものと推測されている。
シャウラセーニーは中北インド地方で前五世紀に利用された口語との説があり、中世にはカリー・ボリー語となり、現代のヒンドゥスターニー語、パンジャーブ語等へと発展した。マーガディーはマガダ地方の口語(インド東部・ベンガル・ネパール地方)、シャカが用いた言葉との説があり、アショーカ王の勅令で利用された言語で、現代のビハール語、ベンガル語、オリヤー語などの祖語となった。マハーラーシュトリー語は前500年頃から後500年の間の1000年間利用され、北はマールワー、ラージプート、南はクリシュナ川、トゥンガバドラー川付近で使われていた。現代のシンハラ語、マラーティー語、コンカニ語の祖語となった。