ブースター
ブースター(booster)は元と同種の圧力や出力などを更に加えたり増幅したりすることによって、加圧、上昇(boost)などをさせるための装置や機械である。人工衛星・宇宙船などを宇宙空間へ打ち上げるロケット(打ち上げ機)の発射直後に推力を増強するために用いられる主エンジンと同時に動作する、補助推進用のエンジンとして用いられる。多段式ロケットにおいて第0段とも称される。
推力を調整する必要が無いので固体燃料ロケットが多く使用される。固体燃料の性能が良くなかった時代には液体燃料を使用するブースターロケットもあった。現在でも高推力を要する用途においては液体燃料ブースターが使用される例もある。
ペイロードの状態に応じて推力を調整するため、主エンジンの推力に加えてブースターロケットの推力で合計推力を調整するロケットでは、同じ打ち上げロケットでもミッションによって使用されるブースターロケットの数や種類が異なる。主エンジンの周りを取り囲むようにくくりつけられているためストラップ・オン・ブースター(SOB)と呼ばれる。使用後は切り離されて投棄される(詳細は固体ロケットブースタを参照)。
ミサイル
ミサイルを所定の巡航速度まで加速するための初期加速用エンジンとして用いられる。推力調整の必要が無いので固体燃料ロケットエンジンを用いる事が多い。特にラムジェットエンジンを採用したミサイルでは、ラムジェットエンジンが動作できる速度に達するまでの加速をブースターで行うため、ブースターは必須である。またミサイルが翼による空力制御を可能にするためには、ミサイルが一定以上のスピードで飛翔していなければならない。つまり速度が遅いと針路変更もままならない。このため、必要な速度まで加速するためにブースターを使用する事も多い。
ブースターに対して巡航用エンジンはサスティナーと呼ばれる。燃焼後にブースターが切り離されてからサスティナーが動作する設計が多い。ブースターとサスティナーが同時に動作しないため、このような設計ではサスティナーの後ろにブースターが結合される。ただし縦に直線で結合すると全長が長くなるため、衛星打ち上げロケットと同様にブースターをミサイルの脇に括りつける(ストラップ・オン)設計もある。このような設計のブースターはサスティナーと同時に燃焼を開始する場合が多い。全長は短くなるが全体にかさばるため最近のVLSなどにはなじまない。このため可動ノズルによる推力偏向制御を採用して空力制御とブースターを廃し全長を短くしたミサイルもあるが機構は複雑になる。
固体ロケットとラムジェットを統合した統合ラムジェットエンジンでは、ブースターとして使用する固体ロケットエンジンの固体燃料が詰められた空間を、燃料が燃え尽きた後にラムジェットエンジンの燃焼室として併用する事で全体の設計をコンパクトにしている。
液体燃料ブースター
液体燃料ブースター(LRB)は固体ロケットブースタ(SRB)と似ており離床時にロケットの周囲に備えられる。液体燃料ブースターは固体燃料ロケットやハイブリッドロケットとは異なり推進剤として液体燃料と液体酸化剤を使用する。
固体ロケットブースターのように液体燃料ブースターもまた軌道上に投入する重量を増加させる為に使用される。固体燃料ブースターとは異なりLRBは出力を加減することが可能で同様に非常時には停止する事も可能である。これは有人宇宙船に使用する場合、安全上特に重要である。
スペースシャトル計画の初期の開発段階において複数のLRBの使用が検討された。固体燃料ブースターが原因となったチャレンジャー号爆発事故の後既存のSRBをLRBに換装する事が検討され、4社がNASAにLRBの設計案を提案したが、開発費用がかかる為、既存のSRBを改良して使う事になった。
コモン・コア・ブースター
発展型使い捨てロケット(EELV)計画でアトラス Vとデルタ IVロケット用の新しい液体燃料ロケット段としてそれぞれコモン・コア・ブースター(CCB)とコモン・ブースター・コア(CBC)が開発された。これらは単体(固体燃料ブースターを周囲に備える事も可能)若しくは3本を並列に備える事により、多種多様な用途の打ち上げ重量に対応できる。