ブタノール
テンプレート:Infobox 化合物 ブタノール(butanol)は化学式 C4H10Oで表される炭素数4の一価アルコールの総称である。ブチルアルコール(butyl alcohol)ともいう。詳しく分けると、1-ブタノール(n-ブチルアルコール、ノルマルブタノール)、2-メチル-1-プロパノール(イソブチルアルコール)、2-ブタノール(sec-ブチルアルコール)、2-メチル-2-プロパノール(tert-ブチルアルコール)など一価アルコールとしては4種の構造異性体をもち、そのうち2-ブタノールは不斉中心をもつので(R)-2-ブタノールと(S)-2-ブタノールの2種の立体異性体が存在する。
ブタノール類はいずれも可燃性であり、特に1-ブタノールは溶媒や燃料としてよく用いられ、他のブタノール類は香料や医薬品など化成品原料として用いられる。いずれも日本では消防法により危険物第4類(可燃性液体)第2石油類に指定されている。
異性体
1-ブタノールの構造異性体にはアルコールとして、第1級アルコールの2-メチル-1-プロパノール、第2級アルコールの2-ブタノール、第3級アルコールの2-メチル2-プロパノールが存在する。アルコール以外では、ジエチルエーテルを始めとして3種類のエーテルも構造異性体である。他のアルコールの場合と同様に、構造異性体はそれぞれ化学的性質が異なり、物性もそれぞれ異なる。
- 2-ブタノール
- 別名:sec-ブチルアルコール、s-ブチルアルコール
- 二級アルコール
- 沸点:100℃
- 水への溶解度:260g/L
- 光学活性を持つ
- 2-メチル-1-プロパノール
- 別名:イソブチルアルコール、i-ブチルアルコール
- 一級アルコール
- 沸点:108℃
- 水への溶解度:100g/L
- 2-メチル-2-プロパノール
- 別名:tert-ブチルアルコール、t-ブチルアルコール
- 三級アルコール
- 沸点:83℃
- 融点:25.4℃
- 水への溶解度:任意の割合で水と混合しうる。これはヒドロキシ基の親水性とアルキル鎖の疎水性のバランスによるものであり、アルコール一般の性質として説明できるものである。詳しくはアルコールの項を参照のこと。
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n -ブチルアルコール (一級アルコール) |
sec-ブチルアルコール (二級アルコール) |
イソブチルアルコール (一級アルコール) |
tert-ブチルアルコール (三級アルコール) |
いずれのブタノール類も生体物質であり広く生物体の中では少量存在する。そして他のアルコールと同じく多量では毒性発現するので飲料とはならない。
利用
1-ブタノールは有機化学や繊維生産過程で溶媒として、あるいは他の化合物生産の原料として幅広く用いられる。また塗料用シンナーとして、揮発性の小さい溶剤としてカラー塗料等にも用いられる。またブレーキ液などにも用いられることがある。 また香料のベースとして用いられることがあるが、その香料自体はアルコールの匂いが非常に強いものである。
2-ブタノールあるいは2-メチル-2-プロパノールはエステル原料として化成品の中間体原料として重要である。また2-ブタノールは酸化することでメチルエチルケトンやさらに過酸化水素と反応させメチルエチルケトンペルオキジドなど工業原料として用いられる。また、2-メチル-2-プロパノールは凍結防止剤やアンチノック剤として利用されることもある(グッドイヤー社はガソリン、2-メチル-2-プロパノール、水からなる代換ガソリンがガソリンエンジンの有害廃棄物を大幅に低下させることを報告している[1])。そして1-ブタノールはそのものを燃料として利用しうるとも考えられている。
ブタノール塩は他の化学物質の前駆体となる。例えば2-メチル-2-プロパノール (tert-ブチルアルコール) のアルカリ金属の塩はtert-ブトキシドと呼ばれる。
生産
1950年代から、ブタノール類の多くは化石燃料から生産されてきた。工業的には一級アルコールを得る方法として
- プロピレンをヒドロホルミル化すると1-ブタノールと2-メチル-1-プロパノールが生成する。
- アセトアルデヒドをアルドール縮合でクロトンアルデヒドとし触媒による水素添加で1-ブタノールとする。
- 改良Fe(CO)5触媒でプロピレンと一酸化炭素と水とを反応させて1-ブタノールと2-メチル-1-プロパノールが生成する。(Reppe法)
などが存在する[2]。
また、二級アルコールは相当するオレフィンを酸触媒下で水付加することで製造する。すなわち、1-ブテンも2-ブテンも水付加により2-ブタノールを与える(マルコニコフ則を参照のこと)。またイソブテンを硫酸触媒にして水付加することで、2-メチル-2-プロパノールが製造される。
ブタノールはバイオマス発酵により生産することも可能である。デュポン社、BP社などがバイオブタノールの生産研究を行っており、優れた燃料としての利用が考えられている。
- C2H5OH + C2H5OH → C4H9OH + H2 + 1/2 O2
工業製品の合成ブタノールの2008年度日本国内生産量は 482,244 t、工業消費量は 302,815 t である[3]。
参考文献
- ↑ K. Weissermel, H.-J. Arpe, 『工業有機化学』, 東京化学同人(1978) ISBN 4-8079-0142-7
- ↑ K.Weissermel, H-J Arpe, 『工業有機化学』, 東京化学同人(1978) ISBN 4-8079-0142-7
- ↑ 化学工業統計月報 - 経済産業省