ファロー四徴症
ファロー四徴症(ふぁろーしちょうしょう、Tetralogy of Fallot;TOF)とは、1672年にデンマーク人医師ニールス・ステンセンが提唱し、1888年、フランス人医師エティエンヌ・ルイ・アルチュール・ファローにより報告された先天性心奇形の一種である。発生の段階で肺動脈と大動脈の2つを分ける動脈幹円錐中隔が前方に偏位することで生じるものである。名前にある「四徴」とは以下の4つを意味する。
右心室からの静脈血が心室中隔欠損を通じて流れ込むので、チアノーゼを起こす。主に出産直後よりチアノーゼを起こし、全身の皮膚が青く(浅黒く)見える子供をBlue Babyと呼ぶ。
肺動脈狭窄が閉鎖に至った場合、極型ファロー四徴症といわれる。
病態
循環器の発生において肺動脈と大動脈は最初は共通の動脈幹として1つの脈管であるが、動脈幹に隆起が生じそれが螺旋状に成長し動脈幹中隔として2つの動脈を分ける、また心円錐でも左右を分ける円錐中隔が形成される。この2つの中隔が融合して動脈幹円錐中隔として右室流出路と左室流出路を分ける。この中隔が前方に偏位したものがファロー四徴症である。動脈管円錐中隔の前方偏位により肺動脈が狭窄するとともに、その分だけ大動脈が拡張する(大動脈騎乗)。一方で動脈幹円錐中隔が偏位のために心室側の洞部中隔が融合できないので心室中隔欠損を生じる。 通常のアイゼンメンジャー化していない心室中隔欠損では左室圧の方が右室圧より高く、左右短絡(左右シャント)を生じ肺高血圧となるが、ファロー四徴症の場合は肺動脈狭窄があるために肺血流量は減少するとともに右室圧と左室圧が等しくなり右左短絡(右左シャント)を生じる。ただし、通常の心臓に比べると右室圧は高いので右室肥大を生じることになる。
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正常の心臓
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ファロー四徴症の心臓。(A)薄紫に示した肺動脈の狭窄。(B)大動脈の騎乗。(C)心室中隔欠損。(D)右室肥大。
臨床症状
- チアノーゼ
- 手指の変形:太鼓バチ状指
- 赤血球増加:赤血球増加症
- しゃがみこみ:呼吸困難
- 歩行時、あるいは運動後に胸に膝をあてるようにしてしゃがみこむ。こうすることにより、心臓に戻ってくる静脈血を減らし、症状を軽くしようとする。
診断
聴診では収縮期雑音がみとめられる。 心電図では右軸変位、右室肥大を認める。 心臓超音波検査で診断。
治療
薬物治療
- 低酸素発作時
酸素投与、輸液、塩酸モルヒネ(過換気を防ぐ目的)、重炭酸ナトリウム
- 発作予防
βブロッカー
根治手術
自然治癒はしないため、手術を要する。根治手術は以前はある程度の成長をまってしたが、現在では1-2歳前後の手術が一般である。