ネット碁
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ネット碁(ネットご)は、インターネットや専用線などのコンピュータネットワークを介して行われる囲碁の対局のこと。ネット囲碁。オンラインゲームの一つ。
利用・特徴
- ネット碁のサイトには有料と無料とがあり、双方を併用しサービスに差を設けている所もある。
- ログインして申告棋力を設定し、対局を待っている相手に申し込んだり、自分が申し込みを待ったりして、合意が成立すると対局開始となる。こうした手続きを省き、対局希望者同士を自動的にマッチングするサービスを備えたサイトもある。
- 棋力の目安となるランクは囲碁の段級位制に準じたもの(英語では級をk、段をdと表記する)が大半で、対局成績によって自動的に変動する。レーティングの手法はサイトによってまちまちである。なお、海外のレーティングは、日本の碁会所に比べて厳しめといわれている。
- 他の会員の対局を観戦したり、他の会員とのチャットによる会話を楽しむことも可能なケースが多い。
- ネット碁で対戦した際の棋譜はSGFなどのファイルフォーマットで記録される事が多く、後で見直すことができる場合も多い。
- プロ棋士の公式戦を中継するサービスも同時に行われる場合がある。
- 大和証券杯ネット囲碁オープン、全日本学生囲碁名人戦など、ネット碁を用いるプロ・アマ棋戦も存在しているが、今なお少数にとどまっている。
- 漫画ヒカルの碁では、主人公に憑依している天才棋士・藤原佐為がその正体を隠したまま自在に対局できるネット碁の世界で活躍する描写がある。
利点
- 日本、韓国においても近くの碁会所などとは違い、普段打てないような遠隔地(外国在住の相手と打てることもある)の相手や見ず知らずの多くの愛好者と対局できるという利点から人気が高く、ネット碁を通じた遠隔地の囲碁愛好家とのコミュニケーションもしばしば見られる。
- ネット碁の参加者にはプロ棋士が入っていることもあり、こうしたプロ棋士と打てることも楽しみの一つである。
- 特にアマチュア県代表クラスの強豪の場合、近隣の碁会所などでは力の近い相手がいないということが起こりうるが、常時多人数を抱える大型のネット碁サイトであれば、強豪であっても自身の棋力に合った相手を見つけやすい。
- ネット碁は概ね24時間運営されていることから、深夜に対局することも可能である。深夜営業している碁会所は少ないため、仕事で忙しい人にも対局の機会を確保できる。
問題点
- マナーに欠ける打ち手がいることはネット碁に限らないが、相手の顔が見えないことから本人の自制が働きにくく、コミュニティーによる教育や是正の機会に乏しいこともあり、悪質な行為が横行する傾向にある。
- 荒らし : 対局または観戦中に暴言を吐いたり、相手を挑発したりする。
- エスケーパー : 負けそうになると投了せずに接続を切って逃げる。あるいは自分が時間切れになるまで対局を放棄する。
- サンドバッガー : 故意に棋力を過少申告したり、意図的に負けてランクを下げたりして、自分より弱い相手をいたぶるように打つ。ただし、高段の場合初期登録段位に制限があるケースが多く、また他サイトや碁会所での段位を参考に登録した結果、意図せず棋力を過少申告してしまう場合もある。
- ソフト打ち : コンピュータープログラムに代打ちさせる。市販される囲碁プログラムは現在アマ6段ほどの棋力があるため、代打ちによって上位のランクを得ることも十分可能となっている。
- なりすまし : 他人に対局してもらう。あるいは他人を詐称する。
- こうした明らかなマナー違反者に対しては報告を受け、会員資格の停止などの厳しい対応を取るサイトもある。しかし証明不可能な事例については、実質的に参加者の良心に任されているのが実情である。