ナクソス (レコードレーベル)
テンプレート:Portal クラシック音楽 ナクソス(NAXOS)は、1987年にドイツの実業家のテンプレート:仮リンクが、夫人である日本人ヴァイオリニストの西崎崇子とともに香港に設立したクラシック音楽系のレコードレーベル。
目次
来歴・特徴
ナクソスが活動を始める以前の大手レーベルは、有名なスター演奏家を起用することで販売数を伸ばしていた。しかし、ナクソスはこれとは逆に、無名でも実力のある演奏家を起用することで価格を低く抑えることを志した。初期は演奏や録音に関して一部にかなりの質のばらつきが見られ、「安かろう悪かろう」というイメージがあったものの、レーベル創設から十数年が経過した現在では、そういった懸念もほぼ払拭されつつある。
大手レーベルが『運命』、『新世界』などといった一部の超有名曲の知名度に頼りきっていた状況にあったのに対し、ナクソスは知名度は低くとも良質な曲であれば積極的に取り上げ、そのような曲の開拓をしていった。その最たる例がヴァシリー・カリンニコフの『交響曲第1番』であり、ナクソスにおいて記録的なロングヒットとなった。もっとも、ナクソスも創業の初期には、一般的な有名作品の録音から始めている。そして、会社の知名度が消費者に浸透するにつれて、隠れた名曲の開拓活動も軌道に乗っていった。
ナクソスの最大のポリシーとして、「一度市場に出したCDは廃盤にしない」点がある。しかし最近は、極初期の録音は質の問題もあるのか、入手できないものもある(最近、「できるだけ廃盤にしない」に変わった)。
ナクソスには姉妹レーベルとして「マルコ・ポーロ」(MARCO POLO)も存在する。このレーベルは「時代の空白を埋める」をモットーとして掲げており、ナクソスの取り上げるレパートリーに比べると、さらにマニアックな作品の録音が多い。しかし、ナクソスでもその手の録音は発売できることに伴い、近年は活動を大幅に縮小している。
日本の総代理店は株式会社アイヴィ(愛知県豊明市)だったが、2007年9月末を以って解散し、Naxos Global Distribution ltd.の子会社ナクソス・ジャパン(旧:ナクソス・デジタル・ジャパン)に日本代理店の権利を譲渡することとなった。
主な演奏家
ナクソスが発掘したと云える演奏家の中でも、ピアニストのイェネ・ヤンドー、チェリストのマリア・クリーゲルなどは、会社の創業初期から看板として活躍してきた人たちである。また、創業者クラウス・ハイマンの夫人である西崎崇子のヴァイオリンによる録音も多い。
指揮者では、アントン・ブルックナーの交響曲全集録音に起用したゲオルク・ティントナーがよく知られている。創業初期を支えてきた指揮者たちも、アントニ・ヴィトがヘンリク・ミコワイ・グレツキの交響曲第3番『嘆きの歌の交響曲』をごく早い時期の1994年に発表し、ケネス・シャーマーホーンは2004年に恩師レナード・バーンスタインの『ウエスト・サイド物語』の全曲録音を発表した。
ピアノ連弾デュオのジルケ・トーラ・マティースとクリスティアン・ケーンのコンビは、アントニン・ドヴォルザークやヨハネス・ブラームスの4手ピアノ作品全集録音に取り組んできた。70歳代後半を過ぎてから見いだされたティントナーは極端な例としても、他の会社でチャンスに恵まれなかった演奏家たちが、ナクソスで開花したケースは多い。
ナクソスのレコード業界での評価が上がるにつれて、著名な音楽家がナクソスで録音をする機会も増加した。そうしたケースで最も成功したのは、ノルウェーの名ピアニスト、アイナル・ステーン=ノックレベルグによるエドヴァルド・グリーグの「ピアノ独奏曲全集」(全14枚組)であろう。他に、ルーシー・ファン・ダールによるヨハン・ゼバスティアン・バッハの『無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ』などがある。
「国際コンクールの優勝者は、どのような理由であっても支援する」というのは実は活動初期にピエール=アラン・ヴォロンダをフォローしたころからのポリシーだが、近年はこの傾向を推し進め、副賞にNAXOS一枚分のCDデビューを取り付ける国際コンクールが急増した。それに伴い最も恩恵を受けたのがピアノで、ピアノ演奏の最上位レヴェルを維持するアーティストが、次々とNAXOSからデビューしている。
また貴重な音源として、セルゲイ・ラフマニノフ自身が演奏した彼のピアノ協奏曲全曲などのCDも販売している(RCAレコードから復刻されていた)。
種々のプロジェクト
ナクソスでもマニアックな作品が発売可能になったことに伴い、複数のプロジェクトが始動できることになった。以下はほんの一例。かつてのナクソスは著作権の切れない現代音楽系には手を出せないという批判があったが、現在は存命の作曲家もかなりカヴァーしている。
- American Classics
- Spanish Classics
- 華人作曲家系列
- Wind Band Classics
日本作曲家選輯
- ナクソスが力を入れていたプロジェクトの中に、『日本作曲家選輯』と名づけられた日本人作曲家のシリーズがある。このシリーズには日本のクラシック・ファンにも知られていなかった作品が多く収録された。第1弾として発売されたのは伊福部昭の『日本狂詩曲』や、外山雄三『管弦楽のためのラプソディ』などを収録したアルバムであった。その後、橋本國彦の『交響曲第1番ニ調』、山田耕筰の交響曲『かちどきと平和』、大澤壽人の交響曲第3番と『ピアノ協奏曲第3番「神風協奏曲」』、芥川也寸志、武満徹、諸井三郎、矢代秋雄、黛敏郎、松平頼則らの作品をリリースしている。アイヴィからナクソス・ジャパンへの引継ぎと前後して、2007年12月の第22弾を最後にリリースが途絶えていたが、2010年12月に3年ぶりに松村禎三作品集がリリースされた。
CD一覧
※2011年12月現在。リリース順。
- 1. 日本管弦楽名曲集
- 2. 矢代秋雄
- 3.大栗裕
- ヴァイオリン協奏曲
- 大阪俗謡による幻想曲
- 管弦楽のための神話 - 天の岩屋戸の物語による
- 大阪のわらべうたによる狂詩曲
- 下野竜也指揮 大阪フィルハーモニー交響楽団 高木和弘(ヴァイオリン)
- 4.橋本國彦
- 5.武満徹室内楽作品集
- そして、それが風であることを知った
- 雨の樹
- 海へ
- ブライス
- 巡り
- ヴォイス(声)
- エア
- 雨の呪文
- ニュー・ミュージック・コンサーツ・アンサンブル ロバート・エイトケン(フルート)
- 6.松平頼則
- ピアノとオーケストラのための主題と変奏
- ダンス・サクレとダンス・フィナル
- 左舞
- 右舞
- 高関健指揮 大阪センチュリー交響楽団 野平一郎(ピアノ)
- 7.山田耕筰
- 序曲 ニ長調
- 交響曲「かちどきと平和」
- 交響詩「暗い扉」
- 交響詩「曼陀羅の華」
- 8.大澤壽人
- ピアノ協奏曲第3番「神風協奏曲」
- 交響曲第3番
- ドミトリ・ヤブロンスキー指揮 ロシア・フィルハーモニー管弦楽団 エカテリーナ・サランツェヴァ(ピアノ)
- 9.芥川也寸志
- 10.諸井三郎
- こどものための小交響曲 変ロ調(シンフォニエッタ)
- 交響的二楽章
- 交響曲第3番
- 11.伊福部昭
- シンフォニア・タプカーラ
- ピアノと管絃楽のためのリトミカ・オスティナータ
- SF交響ファンタジー 第1番
- ドミトリ・ヤブロンスキー指揮 ロシア・フィルハーモニー管弦楽団 エカテリーナ・サランツェヴァ(ピアノ)
- 12.黛敏郎
- 13.深井史郎
- パロディ的な四楽章
- バレエ音楽「創造」
- 交響的映像「ジャワの唄声」
- 14.別宮貞雄
- 15.早坂文雄
- ピアノ協奏曲
- 左方の舞と右方の舞
- 序曲 ニ調
- ドミトリ・ヤブロンスキー指揮 ロシア・フィルハーモニー管弦楽団 岡田博美(ピアノ)
- 16.大木正夫
- 交響曲第5番「ヒロシマ」
- 日本狂詩曲
- 17.武満徹
- 精霊の庭
- ソリチュード・ソノール
- 3つの映画音楽
- 夢の時
- 鳥は星形の庭に降りる
- 18.山田耕筰
- 19.安部幸明
- 交響曲第1番
- シンフォニエッタ
- アルト・サキソフォーンとオーケストラのための嬉遊曲
- ドミトリ・ヤブロンスキー指揮 ロシア・フィルハーモニー管弦楽団 アレクセイ・ヴォルコフ(サキソフォーン)
- 20.須賀田礒太郎
- 交響的序曲 作品6
- 双龍交遊之舞 作品8
- バレエ音楽「生命の律動」 作品25
- 東洋組曲「砂漠の情景」 作品10より「東洋の舞姫」
- 21.武満徹ピアノ作品集
- ロマンス
- 2つのレント
- 遮られない休息
- ピアノ・ディスタンス
- フォー・アウェイ
- 閉じた眼 - 瀧口修造の追憶に
- 閉じた眼II
- 雨の樹素描
- 雨の樹素描II - オリヴィエ・メシアンの追憶に
- こどものためのピアノ小品
- リタニ - マイケル・ヴァイナーの追憶に
- 福間洸太郎(ピアノ)
- 22.大澤壽人
- ピアノ協奏曲第2番
- 交響曲第2番
- ドミトリ・ヤブロンスキー指揮 ロシア・フィルハーモニー管弦楽団 エカテリーナ・サランツェヴァ(ピアノ)
- 23.細川俊夫フルート作品集
- 垂直の歌I
- 線I
- リート
- 断章II
- 航海V
- 黒田節(細川俊夫による編曲)
- コルベイン・ビャルナソン(フルート)他
- 24.松村禎三
- 交響曲第1番
- 交響曲第2番
- ゲッセマネの夜に
- 湯浅卓雄指揮 アイルランド国立交響楽団 神谷郁代(ピアノ)
- 25.橋本國彦
- 交響曲第2番
- 三つの和讃
- 感傷的諧謔
- 湯浅卓雄指揮 藝大フィルハーモニア 福島明也(バリトン)
- 26.山田一雄
- 大管弦楽のための小交響楽詩「若者のうたへる歌」
- 交響的木曾 作品12
- 交響組曲「印度」
- おほむたから (大みたから) 作品20
- 27.細川俊夫
最近の動向
このような活動は今や多くの音楽家や聴衆から支持され、クラシックのCDの売上がドイツ・グラモフォンを上回り世界一となり、現在では最も力のあるレーベルのひとつに成長している。1999年には廉価盤専門の会社として初めて、イギリスの音楽雑誌・グラモフォンの「レーベル・オブ・ザ・イヤー」を受賞し、レーベルとしての地位を確固たるものとした。少なくとも、音楽史や現代音楽のCDまでもが1000円(アイヴィからナクソス・ジャパンに引き継がれた現在は国内盤1枚組1200円)で入手できるというのは、かつてでは考えられないことであった。
近年ではナクソスの価格をさらに下回る廉価盤のクラシック音楽レーベルが乱立したため、価格面は一枚1000円前後を死守して質の向上へ焦点を定めた感がある。スターシステムの影響を嫌い、有名・無名といった概念に惑わされない聴き手がインターネット時代に入って急増したことにより、時代の展開を反映した慎重なリリースを続けている。前述の『日本作曲家選輯』や「アメリカン・クラシックス」はその代表的な例と言えよう。また、レパートリー増強のために、他レーベルの音源をライセンス販売するケースも出てきている。
日本ではナクソス・デジタル・ジャパン(2007年10月よりナクソス・ジャパンに改称)により、ナクソスはもちろん、ヘンスラーやBIS、CHANDOSといった有名レーベル280以上を含めた定額音楽配信サービス「ナクソス・ミュージック・ライブラリー」(NML)が2005年11月15日より開始された。クラウス・ハイマンは今後も様々なレーベルに参加を呼びかけ、サービスの強化に努めるとしている。ただし、音質が128kbpsとCDより低く、一続きの曲に便宜的につけたトラックの部分で演奏が止まってしまうなどの問題点が指摘されている[1]。
2014年7月1日には、前日まで東京放送ホールディングス(TBSHD)が運営してきたクラシック音楽専門インターネットラジオ局「OTTAVA」を引き継いだ。もともとナクソスはOTTAVAへクラシック音楽の音源を提供してきた経緯があり、2014年4月にTBSHDが同年6月末でOTTAVAの放送休止を発表した事を受け、ナクソスが運営の継承を申し出た。結果、TBSHDから「OTTAVA」の商標やドメインも含めて一切の権利を譲り受けた。これによりスタジオがこれまでの東京・赤坂サカスからナクソス・ジャパンの本社がある東京・三軒茶屋に移転したほか、同年秋からタイムテーブルを刷新する。
ナクソスに登場する主な演奏家リスト
オーケストラ
指揮者
ソリスト(弦楽器)
ソリスト(鍵盤楽器)
アンサンブル
ナクソスの扱う音楽のジャンル
- クラシック音楽
- ジャズ