チチカカ湖
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チチカカ湖(チチカカこ、テンプレート:Lang-es)またはティティカカ湖は、アンデス山中のペルー南部とボリビア西部にまたがる淡水湖。アルティプラーノの北部に位置する。湖の中央は、南緯約16度、西経約69度で、標高は3810mほどである(Kolata 1996:24)。湖面の60%がペルー領で40%がボリビア領となっている。「汽船などが航行可能な湖として世界最高所」と言われる[1]。数少ない古代湖でもある。
概要
複数の河川が湖に注ぎ込むが、湖から流れ出すのは大きな河川ではデサグワデーロ川があり、アルティプラーノの南部にあるポーポ湖へと連なっている。
湖には、チチカカ島やルーナ島、タキーレ島、アマンタニ島、太陽の島、月の島、スリキ島、スアシ島など41の大小の島々がある。またペルー側にあるプーノ市街の沿岸や沖合にはウル族(Uros)がトトラと呼ばれる葦を多数重ね合わせた浮島に居住している[1]。かつては小舟もトトラで作っていた。彼らは現在でも浮島に居住しながら、漁や観光客を相手の商売で生計を立てている。チチカカ湖やその周辺には、他にもケチュア族やアイマラ族といった、先住民族が居住しており、漁業や都市部での就労の他、島では農耕などに携わって生計をたてて暮らしている[1]。
1998年8月にボリビア側の領域800km²がラムサール条約登録地となった。
また、この湖にはチリとの戦争で海を失い、内陸国となったボリビアの海軍基地がある。
地理的条件および気象条件
湖の面積はおよそ8562km²、容積903km³あり、大きい湖 Lago Grande と、小さな湖(あるいはウィニャイマルカ湖)Lago Pequeño(Lago WiñaymarkaあるいはLago Huiñaymarca)に分かれる。
Lago Grande はおよそ面積7130km²、Lago Pequeño はおよそ1430m²ほどある(Boulangé and Aquize Jaen 1981 および Comisión Mixta Peruana Boliviana cited in Kolata 1996:26)。ただし、調査者により、面積や最深部は最大で数十メートルほどの誤差がある。この二つの湖はティキーナの海峡の幅約800mほどのところでつながっている。Lago Grande は、深さ最大で285mあり、約2/3が150m以上の深さであるが、Lago Pequeño は最大でも深さ40mほどしかなく、ほとんどが5-10mほどの深さしかない。
チチカカ湖盆地の平均気温は、湖岸で約0°C、湖中央で8 - 10°Cほどあり(Dejoux 1992:67)、平均降水量は、湖岸で400 - 800mm、湖中央で最大1500mmほどある(前掲書:69)。標高は高いが熱帯に属しているため、年間を通して日照時間は相対的に安定している。湖は全体的には閉鎖系として機能している。実際、河川によって湖から外部へ排出されている流出量は、湖水全体の消失量の5%以下しかない。また、熱帯で標高が高いため湖水の蒸発が激しく、そのため塩分の量が多く1リットルあたり約1グラムほどある。チチカカ湖の湖水の蒸発は、結果的に、この地域全体の気候の温暖化に寄与している。湖水の蒸発によって、地域全体が蒸気に包まれた熱貯蔵効果を持つため、チチカカ湖盆地は、標高が高いにもかかわらず比較的暖かく安定した気候を保っている。
水産資源
外来種
北米原産のニジマス(スペイン語ではTrucha arco iris)やヨーロッパ原産のブラウントラウト(スペイン語ではTrucha de arroyo)、アルゼンチン原産の ペヘレイ といった魚類が水産資源として外部から移入されている。
ニジマス (Salmo gairdneri Richardson,1836→現在はOncorhynchus mykiss (Walbaum, 1792)) が1941-42年に、ペヘレイ (Basilichthys bonariensis (Valenciennes 1835)) が1955-56年に、移入される。
ボリビア側にあるティキーナという湖畔には、日本の援助で作られたマスの養殖場がある。[1] ただし、ニジマスは他からもたらされた外来種であったため、30cm近くまで成長する在来種のカラチの大形種 Orestias cuvieri Valenciennes,1846 が絶滅してしまったといわれている。しかしながら、そのこと自体は確認もされておらず、逆に反証もされていないという。
チチカカ湖に棲息する生物についてはまだ研究が進んでいない点も多く、分類、記載されていない種類の魚もあると考えられている。
在来種
- 魚類
- チチカカ湖では、カダヤシ目のキプリノドン科に分類される狭義の卵生メダカ類、オレスティアス属 Orestias のカラチ( Orestias agassissi Valenciennes,1846 など) やイスピ (O. pentlandii Valenciennes,1846 や O. ispi Lauzanne,1981 など) といった在来固有種の魚が捕獲でき、現在でもから揚げなどにして食用にされている(卵生メダカ類といっても10~20cm前後まで成長する)。このカラチと思われる図像が、ティワナク遺跡の出土遺物に描かれている。
- また、南米に広く棲息する、ヒルナマズ科Trichomycteridae(いわゆるカンディル類を含む科) の一種で、 現地でマウリと呼ばれるナマズ(Trichomycterus dispar (Tschudi,1846))がいる。チチカカ湖には、このヒルナマズ科のうちT.rivulatusおよびT.disparの2種が棲息しているといわれている。マウリも食用にされ、ティワナク遺跡にある彫刻の中にも描かれている。
- 両生類
- 爬虫類
- 全長40-50cmほどのヘビ、Tachymenis peruvianaも棲息している。このヘビと思われる図像が、ティワナク遺跡出土遺物の中に描かれている。
- その他
- かつて考古学者でボリビア研究者のポスナンスキー(Arthur Posnansky)は、チチカカ湖の漁師から手渡されたとされる1個体の乾燥標本に基いて、世界で唯一の淡水生タツノオトシゴの一種である"Hippocampus titicacaensis Posnansky,1943"を記録した。標高3000m以上の淡水湖にタツノオトシゴ類が生息するとすれば極めて特異なことであるが、彼はチチカカ湖はかつて海とつながっていた時期があり、タツノオトシゴの存在もその傍証であると考えていた。しかしこの記録以降はまったく確認されないことなどから、実際には商人が薬用として持ち込んだ海産種の誤認ではないかと言われており、彼の記録も正式な種の記載とは認められていない。ただしティワナク村にある博物館には、タツノオトシゴが先スペイン期の遺物として展示されており、ポスナンスキーの記録にいくばくかの信憑性を与えているかのようにも見える。しかし、それでもなお、この博物館に展示されている遺物のほとんどについては、それらが発掘された時の詳しい出土状況の説明が加えられていないという問題もある。実際に、この村の博物館には、偽物がいくつか展示されており、このタツノオトシゴも偽物ではないかと言われているが、調べた者はいない。
参考文献
- Dejoux, C. and A. Iltis (ed.)
- 1992 - Lake Titicaca : a synthesis of limnological knowledge. Dordrecht : Kluwer Academic Publishers.
- Kolata, Alan L. [2]
- 1996 - Tiwanaku and its Hinterland: Archaeology and Paleoecology of an Andean Civilization.Vol.1 Agroecology. (A. L. Kolata, ed.), Smithsonian Institution Press, Washington and London.
- Orlove, Benjamin S.
- 2002 - Lines in the water : nature and culture at Lake Titicaca. University of California Press , Berkeley.
- テンプレート:Cite journal
- 世界一番紀行「世界で一番高い湖~ペルー ティティカカ湖~」