ツキヨタケ
ツキヨタケは、ハラタケ目ホウライタケ科ツキヨタケ属に属するキノコの一種。現在の学名はOmphalotus guepiniformis(詳細は下参照)。夏から秋にかけてブナやナラ等の広葉樹の枯れ木に群生する。標高がやや高い場所では多く見られるキノコである。ワタリ、ワシタケ等の地方名がある。
特徴
紫褐色または黄褐色のかさで、柄は短く、つば状の突起がある。新鮮なものはツキヨタケ中に含まれる成分であるランプテロフラビンの効果によって、暗闇で白色のひだが青白から蛍光緑に発光するが、熟成が進むと発光しない場合もある。柄を裂くと、紫褐色のシミがあるので他の食用キノコと見分けられるが、まれにシミのないものもあるので注意が必要である。色が地味で肉厚なので、おいしそうに見えることから、食用キノコと間違い誤食し中毒に至ることが多い。日本での毒キノコ中毒例の半数以上がツキヨタケによるものといわれるほどである。また、大きさはかなりばらついており、大きいものでは25cmほどのものもある。
分布
朝鮮半島、ロシア極東地方、中国東北部、ヨーロッパ、北アメリカなどに分布する。
有毒種
主要毒成分はセスキテルペンのイルジンS(Illudin)などとされるが研究途上にある。食後約30分から3時間程度で嘔吐や下痢などの食中毒の症状が現れ、見るものが青く見える幻覚症状を伴うことがある。最悪の場合、脱水症状などで死に至ることもある。
日本では古くから毒キノコとして知られており、『今昔物語集』では「和太利(わたり)」という名で登場し、和太利による毒殺未遂事件が取り上げられている(巻二十八・第十八話「金峰山の別当、毒茸を食ひて酔はぬ事」)。
成分
- 毒性分(胃腸系の中毒)イルジンS(illudin S)、イルジンM(illudin M)。</br>(細胞毒)dehydroilludin M、ネオイルジンA(neoilludin A)、ネオイルジンB(neoilludin B)[1]
- illudin Sの毒性:LD50:マウス(腹腔 内)50mg/kg[1]。
- 発光物質 従来、ジヒドロイルジンS(dihydroilludin S)。デオキシイルジンM(deoxyilludine M)も発光物質と考えられていたが、ランプテロフラビンであることが判明している[2]。
- 抗菌物質 レクチン
- 色素 アトロメチン、テレホール酸、ジロシアニン
中毒症状
摂食後30分~3時間で発症し消化器系の下痢、嘔吐が中心症状であるが、重篤な場合は、痙攣、脱水、アシドーシスショックなどを起こす。死亡例も少ないが報告されている。
治療
医療機関による処置が必要で、消化器系の症状に対しては、催吐、胃洗浄、吸着剤投与など。更に、補液、重症例では血液吸着 DHP(Direct Hemoperfusion、直接血液灌流法)による毒素の吸着。
年 | 発生件数 | 摂食者総数 | 患者数 |
---|---|---|---|
2000年 | 20件 | 91人以上 | 91人 |
2001年 | 6件 | 80人 | 67人 |
2002年 | 21件 | 117人 | 98人 |
2003年 | 14件 | 55人 | 52人 |
2004年 | 25件 | 93人 | 91人 |
2005年 | 16件 | 73人 | 66人 |
2006年 | 21件 | 90人 | 83人 |
2007年 | 20件 | 99人 | 91人 |
2008年 | 20件 | 97人 | 85人 |
2009年 | 22件 | 74人 | 68人 |
学名について
従来のツキヨタケの学名(Lampteromyces japonicus(Kawam.) Sing.)は、1947年にロルフ・シンガーによって新たに一属一種として記載されたものである。しかし、2002年になってヨーロッパや北アメリカに分布するOmphalotus属との類似性が指摘された[3](この場合、先名権により学名はOmphalotus japonicusとなる[3])。そして、根田仁による標本の比較検討の結果、ツキヨタケはOmphalotus guepiniformisと同定された[4]。これにより、従来のLampteromycesはシノニムとなった。
日本では現在この学名が用いられているが、Omphalotus oleariusの英語版記事などではOmphalotus japonicusとして紹介されており、学名については現在も議論されている。
なお、Omphalotus属は欧米およびオーストラリアに分布し、発光性およびツキヨタケ同様イルジン(本来、Omphalotus illudensから発見された)を含む毒キノコが多い。特に、Omphalotus oleariusはJack O'Lanternの名前で知られている。
伝統的にキシメジ科とされていたが、分子系統学の結果、キシメジ科から分離され、ツキヨタケ科を経て現在はホウライタケ科に分類される。
類似の食用キノコ
幼菌はシイタケに、成菌はムキタケ、ヒラタケに類似し、特にムキタケとは同一場所に生える場合もあり、間違え採集することも多い。
出典
脚注
- ↑ 以下の位置に戻る: 1.0 1.1 ツキヨタケ - 医薬品情報21
- 元の位置に戻る ↑ 月夜茸の発光物質ランプテロフラビンの構造と合成研究 天然有機化合物討論会講演要旨集(31)、396-403、1989-09-1
- ↑ 以下の位置に戻る: 3.0 3.1 長沢栄史 監修 『フィールドベスト図鑑14 日本の毒きのこ』 学習研究社、2003年10月4日初版発行、ISBN 4-05-401882-3、142 - 143頁
- 元の位置に戻る ↑ Mycoscince 45巻3号(2004年)収載論文要旨 - 日本菌学会
関連項目
- キノコ
- en:Omphalotus olearius - ツキヨタケと類縁種であり、同じ毒(Illudin)を含む。
- ツキヨタケ科 - ツキヨタケ属を含んでいた科。現在ではホウライタケ科のシノニムとされる。
外部リンク
- テンプレート:PDFlink - 財団法人 日本中毒情報センター
- テンプレート:PDFlink - 宮崎県衛生環境研究所