スープカレー
スープカレーは、日本のカレー料理のひとつ。札幌の発祥であり、そのヒントになったのは中国・朝鮮の薬膳スープ、南インド・スリランカ・インドネシア・タイなどの汁気の多いカレー等である。
札幌スープカレー
1971年に札幌市の喫茶店「アジャンタ」が発売した薬膳カリィがオリジナルとされる。1993年に「マジックスパイス」[1]がそれにソトアヤムというインドネシア料理のエッセンスを加えて「スープカレー」と名付けて売りだしたところ、行列ができるほどの人気店となり、注目された。2002年にはスープカレー店が同市に200店以上も乱立し、スープカレーブームが起こった。2003年、神奈川県の「横濱カレーミュージアム」にマジックスパイスが出店したことにより、スープカレーが全国的に知られるようになった[2]。
東京・大阪・名古屋などにも札幌由来のスープカレー店が開店しており、CoCo壱番屋のようなカレーチェーン店も冬季限定商品として全国的に発売している。レトルト商品や家庭用の「スープカレーの素」もベル食品やハウス食品などによって全国的に発売されている。
特徴
「スパイスの効いたさらさらのスープに大きな具材が特徴」[3]である。札幌のスープカレーに共通する特徴を挙げると次のようになる。
- 動物や野菜から取ったダシに、スパイスペーストを合わせてスープを作る。「トマト系スープカレー」では、フォン・ド・ボー(仔牛のダシ)を使ったり、炒めたバジルとその香味オイルをたっぷり浮かべることが多い。イタリアンやフレンチを学んだシェフにより採りいれられた。
- 具はスープと別に調理する。肉はもともとチキンレッグが基本だったが、現在ではほかに魚介類・豚角煮・ラムチョップなどが選択できることが多い。これに素揚げしたジャガイモ、ニンジン、ピーマン、オクラ、カボチャなどの野菜が組み合わされる。
店舗
アジャンタ薬膳カリィ店:スープカレー店の多くの店主が「大きな影響を受けた店」として名前を挙げている店である[4]。店主の辰尻宗男(1934年〜2009年)は薬売りの行商で有名な富山県の生まれで、幼少時に札幌に移り住んだ。1971年に喫茶店を開店、家に伝わっていた漢方の薬膳スープと、インドのスパイス料理を融合した「薬膳カリィ」を考案し、一日20食限定で出したところ、口コミで評判となった。はじめは具無しだったが、1975年に「もったいないから出汁に使った鶏肉も出して」という客のリクエストにより具入りとなったという。
スリランカ狂我国:1984年に開店。ダシ(肉)の旨味を強調する「スリランカカレー」を出して人気となった(インド本国は宗教的な理由により、肉に由来する旨味について基本的に禁欲的である)。
木多郎:1985年に開店。「トマト系スープカレー」のルーツであり、はじめて素揚げ野菜を使った。
マジックスパイス:1993年に開店。初めて「スープカレー」という呼称を使った店である。インドネシアの「ソトアヤム」をヒントに開発したカレーが評判となり、スープカレーブームを牽引する役割を担った。同時期にはほかにも納豆カレーで有名になった「村上カレー店 プルプル」(1993年開店)[5]、多種類の野菜を盛る「ベンベラネットワークカンパニー」(1994年開店)、旨味と辛さが強烈な「Voyage」(1996年開店)など、個性的なスープカレー店が数多く開店した。
注釈
参考文献
- 『北海道スープカレー読本』 樺沢紫苑、亜璃西社、2004年。ISBN 978-4900541542
- 『カレーの雑学』 井上岳久、日東書院本社、2007年。ISBN 978-4528014299
- 『日本一のカレーグランプリ』 一個人編集部編、KKベストセラーズ、2010年。ISBN 978-4584166123