スポーツチャンバラ

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テンプレート:出典の明記 スポーツチャンバラとは、1969年、田邊哲人によって始められた[1]。日本において遊戯として存在したチャンバラごっこと小太刀護身道を基にし、エアーソフト剣という武器とアクリル製の面という防具によって安全性を確保した競技である。略称はスポチャン

概要

テンプレート:出典の明記  遊び道具として現代のようなテレビゲームが存在しなかった頃、友人達と遊ぶ遊びとしてチャンバラごっこがあった。男の子も女の子もみな、棒きれを探してきては剣に見立て、それでよくチャンバラごっこをしていた。しかし、時代は進み次第に「危険だ」「怪我をする」などと言われるようになるとともに、遊びも近代化して行きチャンバラごっこをする子供は少なくなった。

 そのような背景の中、1969年に田邊哲人により、より安全に、しかも健康的に、という観点から、小太刀護身道を基にルールや用具の開発が進められた。現在においても、進化し続けている。

 ルールはいたって簡単で、十分な威力で相手の身体のどこでも良いので剣で叩く(斬る)というのである。つまり、「どこを打ってもよいが、どこを打たれてもいけない」

 1人対1人で行う「対戦」から、1人対多人数、多人数対多人数といった多人数対戦の「乱戦」、より人数を増やして30人対30人や50人対50人の「合戦」といった対戦方式もある。また、より遊び心を付け加えた30人程度で行い、周りにいる全員が敵と想定し戦う「サバイバル」(=バトルロイヤル)がある。

 用具は、面と剣、楯があり、剣は安全と公平さを期すため、全世界共通のエアー(空気)を使うエアーソフト剣。面は透明アクリル製フェイス、目や耳といった、衝撃に弱い部位を保護するように作られている。また、得物(武器)にも色々種類があり、短刀・小太刀・長剣・杖・棒・槍と、自分の好みのものを選ぶことが出来る。

 これらの得物を使い、各種目ごとに分かれて戦う。種目も、短刀の部(小太刀の使用可)、小太刀の部、楯小太刀の部(楯と小太刀を持って戦う)、楯長剣の部(楯と長剣を持って戦う)、長剣の部、両手(諸手)長剣の部(試合中は攻撃動作、防御動作としての片手持ちを禁止)、二刀の部(小太刀と長剣を持って戦う)、異種の部(どの得物を使ってもよい)があるので、大会の規模で最大三種目と上限が決められることはあるものの、好きな種目に参加することができる。

国内競技団体は日本スポーツチャンバラ協会。国際競技団体は国際スポーツチャンバラ協会、日本レクリエーション協会と日本ワールドゲームズ協会に所属。

剣道との差異

 剣道は江戸時代中期に最も安価で弾力性のある材質であった竹を模擬刀に使用し、以前の木刀(あるいは真剣)による剣術の修行に比べれば格段に安全な競技(あるいは剣術の鍛錬手段)として開発された。一方のスポチャンは現代に開発されたこともあり武器の前の部分を空気で膨らませる専用ゴムチューブを布で覆う(エアーソフト剣)のさまざまな武器(槍・棒・杖・長剣・小太刀・短刀)を使用する

 この違いにより競技における安全性の向上からスポーツチャンバラはルール的に自由度の高いものとなっている。まず、剣道は有効打撃部分が防具のある面と胴と小手と喉の4箇所(年少者の喉の突きは禁止)に制限されている。スポチャンは顔を透明のプラスチックで守る面(プロテクター)を被る必要はあるが、相手の身体のどの部分に当ててもいい。

 剣道は剣術の修行の手段として開発されたこともあり、竹刀が防具部分に当れば一本となるのではなく、打撃が刀であった場合に相手に致命傷を与えたであろう有効打であると審判が判断しないと一本とならない。この判断には主観が伴い、剣道の完全なスポーツ化(あるいは非武道化)および日本国外の普及の歯止めとなっている。一方でスポチャンは子どもの遊びを原点に生まれたスポーツであり逆に相手のどの身体のどの部分でも十分な威力で当れば有効打となり、空気で膨らませた武器がポンと音を出すため一本の判定が子供でも容易にでき、観客にも分かり易い。

 また剣道においては防具があっても竹刀で叩かれれば痛いし喉を突かれるあるいは打撃が防具以外の場所に当れば傷を負うこともあり、また身体を衝突させるなどの激しい動きが存在するなど身体的負担が大きい。一方でエアーソフトの武器は取扱いが容易で、叩かれて痛いこともなく転んだり柄の硬い部分があたることを除けば怪我をすることも少ない。

 また剣道のような大掛りで比較的高価な防具を揃える必要がない。そのうえ、防具の装着が容易なため準備から稽古開始までの時間が短い。さらに試合は6〜9メートル四方の空間か、練習ならそれ以下でも事足りる。また剣道のように激突することもないので屋外でも遊べるため、練習場が容易に確保できる。極端に言えば昔のチャンバラ遊び同様、友人達と公園等の空間で二本の武器を交代で使って遊ぶことも可能である。子どもの指導において、安全確保に留意すればよいし、あてられてはいけないと単純なルールであるので指導もやりやすい。また子どもの観点から見て武器が軽量で扱い易いなだけでなく、背やリーチの長い年長者と対抗する場合も足などの下部を叩くことが出来るだけでなく、武器の長短でハンデつけをすることも出来るので子どもから大人まで一緒に参加できる。

子どもの遊びを原点に生まれたスポチャンであっても礼節を重んじ、幼児期から少年期、青年期への礼儀を教えるという役割も担っている。

ルール

コートは6~9メートル四方の正方形。

主に1分一本勝負。しかし、決勝戦といった特別な場合は3分3本勝負となる。

コート内から両足が出たら「場外反則」となり、2回で反則負けとなる。しかし、剣を落とした場合にそのままでは負けてしまうと判断した時、あえて場外に出るといった作戦として使われる場合がある。

反則

  • 両足がコートから出てしまうと「場外反則」となり、2回で反則負けとなる。
  • 剣の柄(持つ部分)が相手にあたると危険行為として反則になる。
  • 故意に蹴ったり、殴ったり、足を掛けたりすると反則。

戦略

打気三処

  • 先の先
相手よりも先に動作を始め、相手よりも先に剣をあてる戦法。
  • 後の先
相手の起こりを察知し、すかさず相手よりも先に剣をあてる戦法。
  • 後の後
相手の起こりを察知するが、まだ動かない。相手の剣を避ける、受けるなどで見切り相手に剣をあてる戦法。

用具(得物)

  • 短刀
長さは45cm。リーチが短い。実力に差が有る場合にハンデとして使用されることもある。2009年8月より剣の長さが60cm以下となり、従来使われてきた短刀と小太刀を両方とも使用できるようになった。唯一、牽制目的での蹴りの使用が認められているが、「蹴りなどの真正打撃」は協会側は禁止と公言しておらず、大会によって有効か禁止かが分かれるので事前の確認が必要となる。ただ、世界選手権においては、2005年以降、蹴りは危険行為として認められていない。。
「面突き」と「胴突き」の突きのみの攻撃、「面斬り」と「胴斬り」は打撃行為として、2回で反則負けとなる。
  • 小太刀
長さは60cm。習い始めたらまず手にする剣である。軽くて扱いやすく、素早く攻防の切替えができる。戦い方は隙を突き攻撃するか、カウンターを取るのが主であろう。
  • 長剣
長さは100cm。小太刀と同様に、習い始めて間もなく手にする剣である。リーチが長いため遠間からの攻撃ができる。その反面、大振りになってしまいがちで、相手に攻撃を察知されやすく、慣れるまでは、いささか扱いにくいと感じるところもある。
短槍の部は長剣を槍のように用いる。
長さは140cm。両端に40cmずつ刃がついており、多方向からの攻撃が可能。しかし、扱いが難しい上に柄の部分が当たって怪我をすることもある。柄の部分が当たると反則負けである。
210cmと非常に長い。二刀よりも回転力が鈍く、槍よりもリーチが短いので、俄仕込みの棒使いではなかなかいい成績は収め難いのが現状。しかし、上手に扱うことができれば、攻防一体で強い得物であると言える。扱いにくい反面、上手く使えれば非常に強いという相反する要素から、愛好家も少なくない。
杖同様、柄が当たれば反則負けである。
  • 槍(薙刀)
長さは190cm。最もリーチの長い得物で、精度抜群の突きは非常に強力である。しかも、重いということを考慮すれば誰にでも扱え、ある程度戦える得物である。

競技種目(個人戦)

  • 基本動作の部
  • 短刀の部
  • 小太刀の部
  • 長剣フリーの部
  • 長剣両手(両手長剣)の部
長剣を剣道のように両手で扱う種目。
  • 二刀の部
小太刀と長剣を用いる種目。
  • 楯小太刀の部
小太刀と楯を用いる種目。楯は防御に使用でき、そのため攻防一体の試合展開になることが多い。
  • 楯長剣の部
長剣と楯を用いる種目。
  • 槍の部
  • 棒の部
  • 杖の部
  • 短槍の部
長剣を槍のように持ち戦う種目。
  • 得物自由(異種)の部

競技種目(団体戦)

  • 団体戦
  • 合戦
  • 護身道(ペア)

主な大会

  • 世界スポーツチャンバラ選手権大会
  • 全日本スポーツチャンバラ選手権大会
  • 全国レクリエーション大会
  • 各都道府県大会
  • 各市区町村大会
  • 全国少年少女大会(高校生以下の選手が対象)
  • 全日本学生大会(大学生・短大生が対象)

過去の統一世界チャンピオンおよび全日本チャンピオンは統一世界チャンピオン(国際スポーツチャンバラ協会ウェブサイト)に掲載されている。

文化作品への登場

参考文献

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関連項目


外部リンク


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  1. テンプレート:Cite web