ジャンプカット
ジャンプカット(英語:jump cut)とは、映画の編集技法の一種である。画面の連続性を無視して、カットを繋ぎ合わせること。
概要
コーヒーを飲み終えて立ち上がるシーンを例に取る。通常の場合なら以下の通りになる。
- コーヒーカップを手に取る
- 口元に運ぶ
- コーヒーを飲み干す
- コーヒーカップを置く
- 立ち上がる
普通ならば以上の通りに、順序を追って動作の繋がりが分かるように編集・撮影する。ところが、ジャンプカットを用いると以下の通りになる。
- コーヒーカップを手に取る
- コーヒーカップを置く
- 立ち上がる
以上の様に、最低限度の関連性を残しただけで、飛び飛びの画面が構成されることになる。
勿論、上の例は単なる一例に過ぎない。コーヒーカップを手に取った後、いきなり立ち上がるシーンに繋げる場合もあるかもしれない。その繋ぎ方の妙、ずれの具合こそがジャンプショットの楽しさ、面白みであり、映像作家の個性が発揮される部分なのだ。
作品例
勝手にしやがれ
ジャンプショットは、ジャン=リュック・ゴダールが『勝手にしやがれ』で初めて用いたと言われている。本人が半ば伝説的に語ったところによると、ラッシュ時点では上映予定時間の倍以上の長さがあり、プロデューサーから半分に縮めるようにとの指示があった。そのためランダムに切り張りをした結果、後にジャンプカットと呼ばれる事になる分断されたものができあがった、と。
本当にランダムに切り張りしたかどうかは定かではないし、作品を観る限り意識的に繋がりを無視したとしか思えないような部分も少なくない。しかし、その経緯はさておき、そこから生み出された独特のスピード感は観客を説得するのに充分なだけのものはあった。
ダンサー・イン・ザ・ダーク
ラース・フォン・トリアーは『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(2000年)に於いて、幻想シーン(ミュージカル部分)以外のほぼ全てをジャンプショットで構成するという離れ業を行った。
2001年宇宙の旅
あらゆる映画の中で、最も長い時間の経過が表現されたジャンプショットを写した映画は、スタンリー・キューブリックの大金字塔『2001年宇宙の旅』である。
太古の大昔に、月を見る者(モノリスから智恵を貰ったヒトザル)が悠々と草原を歩き、獣の骨を天空に投げ、青空にゆっくり浮かぶ骨が一回、二回と写された直後、青空にはロケットが飛び、一気に400万年の時間が経過する。映画史に於いて、特筆に価するジャンプショットと言える。