クイックディスク
クイックディスク (Quick Disk, QD) は磁気ディスクの一種。ドライブをミツミ電機が、メディアを日立マクセルが開発し、1984年に発表された。
容量は片面64キロバイト、両面128キロバイト。
特徴
同心円状に複数のトラックがあるフロッピーディスクと異なり、クイックディスクには、レコードの溝のように、渦巻状のトラックが1本だけ存在する。3.5インチおよび3インチフロッピーディスクに比べ安価で小型低容量な用途として開発された。当時パーソナルユースでの補助記憶装置として主流だったデータレコーダーの磁気テープを、そのままディスク状にしたようなものと言える。
ディスクサイズは2.8インチ。γ-酸化鉄磁性体が両面に塗布されており、裏返しを行うことで両面が使える。ジャケットは78×78×3mm、プラスチック製でシャッターはなく、紙製のスリーブに入れて保存する。ライトプロテクトはツメを折り取ることにより行う。3.5インチマイクロフロッピーディスクより小さく、3インチコンパクトフロッピーディスクより薄い[1]。ドライブの記録ヘッドにはメタル磁性体用のものを使用しており、隣のトラックとは充分な間隔があるためフロッピーディスク用と異なり消去ギャップがない。
アンフォーマット時の容量は片面64キロバイト、両面で128キロバイト。最大記録密度は4410BPI。トラック密度は59TPI。ディスク回転数は423rpm。MFM記録[2]。コントローラICは富士通製MB87013とi8251の組み合わせもしくはZ80-SIO単独の採用例が多く、CRCによるエラー確認をしている。
クイックディスクでは、片面全部を順に一気に読み出しまたは書き込みするシーケンシャルアクセスのみが可能で、任意部分へのランダムアクセスは不可能である。これは、ドライブの機構がフロッピーディスクに比べて単純化されており、ヘッドは「スイープ」しか行えず、「シーク」が不可能なためである。片面すべてを読み出しまたは書き込みするのに8秒[3]かかる。もっとも、64キロバイトのDRAMをバッファとして、「DRAMに読み込み→DRAM上でのランダムアクセス→書き出し」という方法を取ることで、結果的にランダムアクセスを実現出来るが、ディスク上の1バイトを書き換えるだけでも16秒(読み込み8秒+書き出し8秒)かかる点が違う上、64キロバイトのDRAMを実装する分コストがかかる[4]。
用途や構造が類似した製品に、シャープポケットコンピュータシリーズ用の2.5インチポケットディスクがあるが、互換性はない。
採用システム
パソコンではシャープ MZ-1500に内蔵ドライブ、MZ-700、MZ-2000/2200に外部ドライブがある。MSXにLogitec、CASIOブランドで外部ドライブがある。
MIDI機材ではヤマハ、ローランド、コルグ、AKAI、河合楽器製作所の音源ユニット、シンセサイザー、サンプラー、シーケンサ、データファイラに内蔵および外部ドライブとして採用された。
日本語ワードプロセッサーではシャープ、カシオ計算機、キヤノンの初期の一部の機種で外部ドライブがある。
また任天堂のファミリーコンピュータ ディスクシステムに、ジャケット形状を変更し「ファミリーコンピュータディスクカード」の名称で採用された。本来のクイックディスクよりもジャケットが厚く、シャッターを付けたカードもある。模倣品を防ぐためジャケット面に商標を用いたアンチローディング機構を施してある。