オープンウォータースイミング
オープンウォータースイミング(英語:open water swimming)は、海や川、湖など自然の水の中で行なわれる長距離の水泳競技である。英語での名称の頭文字をとってOWSと略される。
OWSの世界のトップ選手には競泳や水球の経験者が多いが、競技では天候や潮汐、生物など外部からのさまざまな影響を受けやすいため、より速く泳ぐという技術ばかりでなく、危機管理も含めて自然の中で泳ぐための知識や経験も必要とされる。他方、アウトドアでのレクリエーションとして、一般の人々の間にも愛好者が増えているスポーツである。2008年の北京オリンピックより夏季オリンピック正式競技に採用されている。
呼称
OWSは日本では臨海学校などで行われてきた遠泳と混同されがちであるが、この両者は目的が異なるもので区別すべきである(詳細は遠泳を参照)。
このほかオーシャンスイミングやラフウォータースイミングなどの呼称を使っている大会や団体もあるが定着にはいたっていない。
歴史
1980年代、国際水泳連盟がオープンウォーターにおけるオーストラリアの水泳大会を基礎に、競技規則を作成、整理して誕生した競技である。以降、ヨーロッパやアメリカ、オセアニア地域でさまざまな競技会が開催されるにいたった。日本では1995年8月6日に静岡県熱海市で国内初のOWSと銘打った大会が開かれ180人の一般の水泳愛好者が参加し、現在も「熱海OWS」として一般社団法人日本国際オープンウォータースイミング協会に引き継がれ毎年7月初旬の日曜日に開催されている(2010年で第16回を数える)。翌年の1996年8月10日には本格的な競技大会として福岡国際オープンウォータースイミング競技大会が福岡市の大原海水浴場で開催された。[1]この競技会を国内初のOWS競技大会としている教本もある。
21世紀に入り、競泳の長距離選手がトレーニングの一環としてOWSに取り組むケースが増加した。このような選手を競泳とOWSの2種目の泳者という意味で、デュアル・スイマーと呼んでいる。デュアル・スイマーの登場はOWSの5km・10km種目のスピード化につながった。
国内では、2012年ロンドン五輪で、貴田裕美・平井康翔が初めて日本代表に選出された。
種目
国際水泳連盟の定義によると、OWSのうち、最長10km以下の距離を泳ぐものをロングディスタンススイミングと呼び、これに対して10kmを超えるものをマラソンスイミングという[2][3]。
世界オープンウォータースイミング選手権(世界OWS選手権)では男女ともに5km、10km、25kmで競技が行われている。世界選手権でも2001年よりこの形式である。オリンピックでは10kmのみが行われる。
10kmがトップ選手で2時間程度であり、陸上競技で言うところのフルマラソン程度の距離となる。
市民レースも多数開催されている。市民レースの場合、大半が5km以下であり、10kmを開催しているのは湘南オープンウォータースイミングなど。
服装
いずれの場合も、2010年から国際水泳連盟が施行している水着規則で承認されたものを用いなければならない。
水着が擦れて痛むことがあるため、競技前にワセリンやラノリンの軟膏を塗る。また、日焼けを防ぐための日焼け止めもつける。
競技施設
ブイを設置してコースを示す。
競技会
世界選手権では1991年のパース大会から、夏季オリンピックでは2008年の北京大会以降、正式競技とされている。世界OWS選手権やワールドカップもある。2006年からはパンパシフィック選手権にも採用。アジア競技大会では2010年まで採用されておらず、アジアビーチゲームズにて行われている。日本国内では、日本水泳連盟の主催で、エリートレースのOWSジャパンオープン館山が千葉県館山市で行われている。
日本各地で4月から10月にかけて、一般の選手が参加できる大会が開催されている。
大会名 | 都道府県 | 開催月 | 距離 | 制限時間 | 定員 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
真鶴町・岩海岸オープンウォータースイム(5月) | 神奈川 | 5月 | 0.4km 0.8km |
15分 30分 |
200人 | |
中海OWS | 鳥取 | 6月 | 3km | 2時間 | 200人 | |
南伊豆・弓ヶ浜オープンウォータースイム | 静岡 | 6月 | 0.5km 1km 2km |
20分 40分 1時間20分 |
800人 | |
葉山オープンウォータースイム | 千葉 | 7月 | 1.5km 3km 4.5km |
45分 |
400人 | |
屋久島OWS | 鹿児島 | 7月 | 1km 2.5km 5km |
150人 150人 100人 |
||
真鶴町・岩海岸オープンウォータースイム(7月) | 神奈川 | 7月 | 0.4km 1.5km 3km |
15分 1時間 2時間 |
1000人 | |
新島オープンウォータースイミング | 東京 | 7月 | 1.5km 3km 4.5km |
1時間 2時間 3時間 |
100人 100人 100人 |
|
ラフウォータースイム・イン・鎌倉 | 神奈川 | 7月 | 0.8km 1.5km 3km |
1時間 1時間 2時間 |
250人 250人 250人 |
|
熱海ジャパングランプリ | 静岡 | 7月 | 0.5km 1km 3.2km |
20分 40分 1時間30分 |
||
館山OWS | 千葉 | 7月 | 1km 3km 5km |
40分 1時間20分 2時間30分 |
350人 250人 150人 |
|
オープンウォータースイミングジャパンオープン | 千葉 | 7月 | 5km 10km |
OWS標準記録を突破した人のエリートレース | ||
佐渡OWS | 新潟 | 8月 | 1km 2km 5km |
1時間 1時間30分 2時間30分 |
200人 200人 50人 |
|
四万十川水泳マラソン大会 | 高知 | 8月 | 3.5km 5km |
450人 | ||
ひめじ家島OWS | 兵庫 | 8月 | 1km 3.2km |
25分 1時間40分 |
150人 450人 |
|
湘南OWS | 神奈川 | 8月 | 2.5km 10km |
1時間30分 3時間30分 |
1000人 300人 |
|
三浦遠泳大会 | 神奈川 | 8月 | 4km | 2時間30分 | 900人 | |
南伊豆・弓ヶ浜OWS国際マスターズ | 静岡 | 9月 | 0.5km 1km 3km |
20分 40分 2時間 |
1000人 | |
せとうちOWS | 岡山 | 9月 | 0.5km 1km 2km 3km |
1時間 1時間30分 1時間30分 |
60人 150人 100人 |
|
とくしま宍喰オープンウォータースイム | 徳島 | 10月 | 1.5km 3km |
40分 1時間30分 |
120人 120人 |
OWS検定
日本水泳連盟がOWS検定を行っている[4]。1〜5級まである。それぞれ出場種目の目安は10km以下、5km以下、3km以下、1.5km以下、1km以下となる。色々なテスト項目があるが、1級の場合、1500m自由形を22分30秒以内で泳げて、400m個人メドレーを完泳できる必要がある。
脚注
外部リンク
- 日本国際オープンウォータースイミング協会 - 国内で年間12レース程度を主催する一般社団法人。
- 日本水泳連盟 - OWS委員会が普及活動を行っている。
- 日本スポーツコミュニケーション協会 - OWS普及のためにOWSやアクアスロン大会やOWS国際マスターズ大会の運営を行っている。
- 全国OWS連盟
- ↑ 日本水泳連盟編『オープンウォータースイミング教本』大修館書店、2006年、pp. 2-3.
- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ OWS|公益財団法人日本水泳連盟 公式ホームページ