ウィリー・ウィリー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

ウィリー・ウィリー(英語:willy willy)は、塵旋風 (dust devil) のことを表すオーストラリアの先住民アボリジニ言葉である。かつてはオーストラリアの北部や西部に襲来する熱帯低気圧の名称としても使われた。

日本では、「発達した熱帯低気圧の名称の一種で、日本で言う台風と同じ気象現象である」のような形で紹介され、オーストラリアでの熱帯低気圧の名称だと説明されることが多いが、これは現在では誤りである。オーストラリア周辺の熱帯低気圧は、一般的にサイクロン (cyclone) と呼ばれ、こちらが「台風のオーストラリアでの呼称」にあたる(英語圏では cyclone は低気圧全般を指す語でもあるため、誤解のないように tropical cyclone (熱帯低気圧)と言い換えたり、後述の海域・勢力別名称を用いたりすることが多い)。

ただし、「サイクロン」も、熱帯低気圧が存在する海域別に、その勢力ごとに名称がつけられている。例えば「トロピカル・ロー」 (tropical low) や「シビア・トロピカル・サイクロン」 (severe tropical cyclone) といった名称がある。詳細は熱帯低気圧#観測機関別の分類を参照。また、個々のサイクロンにはそれぞれ、海域別にオーストラリア気象局フィジー気象局が、あらかじめリスト化されていた名称を発生順に付けている。例えば、2005年3月の「イングリッド」 (Ingrid) や2002年12月から2003年1月の「ゾーイ」 (Zoe) などがある。詳細は熱帯低気圧#命名を参照。

ウィリー・ウィリーが示す概念は、学術的には塵旋風とよばれる、つむじ風あるいは旋風などにあたる現象である。竜巻についても、学術的には塵旋風と異なるものの、形状が似ていることからしばしばウィリー・ウィリーに含まれることがある。

オーストラリアでウィリー・ウィリーが熱帯低気圧の名称として使われたのは1930年代までであり、新聞や気象局の公式文書でも頻繁に使われていた。しかしその後、この用語法は急速に廃れた。一方、日本ではこの変化が認識されず、古い情報が繰り返し引用された。このため、気象の専門書、地理学の資料などで「ウィリー・ウィリーは熱帯低気圧」という記述が長期にわたって残ることになり、学校の授業でも教えられ続けた。

出典

  • Peters, Pam (1995). The Cambridge Australian English Style Guide. Cambridge, New York: Cambridge University Press, 11. ISBN 0-521-43401-7.
  • 小口高・財城真寿美 (2009). ウィリー・ウィリーは熱帯低気圧ではない - 用語法の変化に乗り遅れた日本. 地理(古今書院), 54-9, 102-110. 要約

関連項目

テンプレート:AU-stub