アルス・エレクトロニカ
アルス・エレクトロニカ(Ars Electronica)は、オーストリアのリンツで開催される芸術・先端技術・文化の祭典で、メディアアートに関する世界的なイベント。「インターナショナル・ブルックナー・フェスティバル」の一環として1979年に始まり、1986年には独立したイベントとして例年開催されるようになった。1995年までのディレクターはペーター・ヴァイベル。
毎年のフェスティバル(展覧会、パフォーマンス公演、作品上映、シンポジウム)のほかにアルス・エレクトロニカは、メディアセンターや美術館・博物館としての機能を持つ、「アルス・エレクトロニカ・センター」(Ars Electronica Center)を1996年から運営している。また制作のためのアトリエや、芸術や技術の未来を研究する機能のある「フューチャーラブ」(Ars Electronica Futurelab)も設けている。
1987年からは「アルス・エレクトロニカ賞」(Prix Ars Electronica)を主催し、メディアアートに革新をもたらした者を表彰している。ゴールデン・ニカ賞は「コンピューター界のオスカー」とも呼ばれ、広く知られている。日本からも審査員やアドバイザーが参加している。
芸術祭
アルス・エレクトロニカ サイバーアーツ・フェスティバルは世界のデジタルアート界で最も権威ある行事となっており、1987年からは例年、テーマを掲げて開催している。
- 1987年 - フリー・サウンド(Free Sound)
- 1988年 - シーンの芸術(The Art of Scene)
- 1989年 - ネットワークシステムにおいて(In the Network of Systems)
- 1990年 - デジタルの夢 - 仮想世界(Digital Dreams - Virtual Worlds)
- 1991年 - コントロール不能(Out of Control)
- 1992年 - 内とナノ - 内面からの世界(Endo & Nano - The World From Within)
- 1993年 - 遺伝子の芸術 - 人工生命(Genetic Art - Artifical Life)
- 1994年 - 知能的環境(Intelligent Environment)
- 1995年 - ワイヤードの世界へようこそ(Welcome to the Wired World - Mythos Information)
- 1996年 - ミームシス - 進化の未来(Memesis - The Future of Evolution)
- 1997年 - 肉体要因 - 情報機械・人間(FleshFactor - Informationsmaschine Mensch)
- 1998年 - 情報戦争 - 情報.権力.戦争(Infowar - information.macht.krieg)
- 1999年 - 生命科学(LifeScience)
- 2000年 - ネクスト・セックス - 生殖力のある余剰物の時代の性(NEXT SEX - Sex in the Age of its Procreative Superfluousness)
- 2001年 - 乗っ取り - 明日の芸術をするのは誰か('Takeover' - Who's doing the art of tomorrow)
- 2002年 - アンプラグド - 地球規模の衝突の情景としての芸術('Unplugged' - Art as the Scene of Global Conflicts)
- 2003年 - コード - 私たちの時代の言語('Code' - The Language of Our Time)
- 2004年 - タイムシフト - 25年後の世界('Timeshift - The World in 25 Years')
- 2005年 - ハイブリッド - パラドックスを生きる('HYBRID - Living in a paradox')
- 2006年 - シンプリシティ - 複雑さの芸術('SIMPLICITY - the art of complexity')
- 2007年 - グッバイプライバシー - すばらしい新世界へようこそ (GOODBYE PRIVACY – Welcome to the Brave New World!)
- 2008年 - 新しい文化経済 - 知的財産権の限界(A New Cultural Economy - The Limits of Intellectual Property)
- 2009年 - 人間性 - 人類世(HUMAN NATURE - The Anthropocene)
- 2010年 - 修復 (REPAIR - ready to pull the lifeline)
アルス・エレクトロニカ賞
アルス・エレクトロニカ サイバーアーツ・フェスティバルでは毎年7部門でアルス・エレクトロニカ賞を授与する。受賞者は6月に発表され、ニューヨークとリンツで授賞式が行われる。
部門としては2008年現在、
- コンピュータアニメーション / 映画 / VFX (Computer Animation / Film / VFX 、3DCGや2DCGなどを利用したアニメーション・映画・CF・ミュージックビデオ、およびVFXを対象とする部門)
- デジタルミュージック(Digital Musics)
- ハイブリッドアート (Hybrid Art、メディアアートなどに彫刻、建築、インスタレーション、パフォーマンスアート、社会運動、研究活動、評論、ポップカルチャーその他を複合させた作品を対象とする部門)
- インタラクティブアート (Interactive Art)
- デジタルコミュニティー (Digital Communities、革新的なネットコミュニティを対象とする部門)
- U-19 (u19 – freestyle computing、19歳以下のアーティストのための部門)
の6部門のほか、メディアアートリサーチ賞(Media.Art.Research Award、メディアアートの研究や評論に関する賞)が存在する。2006年4月現在ではネットビジョン、インタラクティブアート、コンピュータアニメーション、ビジュアルエフェクト、デジタルミュージック、デジタルコミュニティーズ、u19、ネクストアイデア(その他のどの部門にも入らない新しい作品のための部門)の8部門があったが、これらの部門は頻繁に見直されている。
これらの部門では、グランプリとなる「ゴールデン・ニカ賞」(Golden Nicas)が1作品に、準グランプリとなる「優秀賞」(Awards of Distinction)が2作品に、佳作となる「栄誉賞」(Honoray Mentions)が12作品にそれぞれ贈られる。
主な受賞者
- SjQ++ - 2013年 デジタルミュージック部門 準グランプリ
- 木村 卓 - 2008年 コンピューターアニメーション部門 準グランプリ
- 平川紀道 - 2008年 インタラクティブアート部門 準グランプリ
- 三輪眞弘 - 2007年 デジタルミュージック部門 ゴールデン・ニカ賞
- エキソニモ - 2006年 ネットビジョン部門 ゴールデン・ニカ賞
- ウィキペディア - 2004年 コミュニティ部門 ゴールデン・ニカ賞
- クリエイティブ・コモンズ - 2004年 ネットビジョン部門 ゴールデン・ニカ賞
- Astro Twin(吉田アミ、ユタカワサキ)・Cosmos(吉田アミ、Sachiko M) - 2003年 デジタルミュージック部門 ゴールデン・ニカ賞
- 明和電機 - 2003年 インタラクティブアート部門 準グランプリ
- 刀根康尚 - 2002年 デジタルミュージック部門 ゴールデン・ニカ賞
- 池田亮司 - 2001年 デジタルミュージック部門 ゴールデン・ニカ賞
- 西島治樹 - 2001年 インタラクティブアート部門 準グランプリ
- ニール・スティーヴンスン - 2000年 ドットネット部門 ゴールデン・ニカ賞
- リーナス・トーバルズ - 1999年 ドットネット部門 ゴールデン・ニカ賞
- 坂本龍一・岩井俊雄 - 1997年 インタラクティブアート部門 ゴールデン・ニカ賞
- センソリウム - 1997年 ネットワーク部門 ゴールデン・ニカ賞
- 藤幡正樹 - 1996年 インタラクティブ・アート部門 ゴールデン・ニカ賞
- ティム・バーナーズ=リー - 1995年 インタラクティブアート部門 ゴールデン・ニカ賞
- パスカル・ルラン Pascal ROULIN - 1993年 コンピューターアニメーション部門 ゴールデン・ニカ賞
- ピーター・ガブリエル - 1987年 コンピュータミュージック部門 ゴールデン・ニカ賞
補足
- 上記の受賞者に加え、日本からはニコニコ動画が2008年度「デジタルコミュニティー部門」で栄誉賞を受賞している。
参考
2010年2月にアルス・エレクトロニカ30年を記念して「サイバーアーツジャパン―アルスエレクトロニカの30年」と題する特集展が東京都現代美術館で開催された。