広軌

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広軌(こうき、Broad gauge)は、鉄道線路のレール間隔をあらわす軌間標準軌の1435mm(4フィートインチ)を超えるものをさす。

軌間は、広ければ広いほど安定性が高くなり横風に対する安全性は増す。ただし、曲線での左右の車輪の回転数の差は軌間が広いほど大きいため、最小半径は大きくしなければならない。左右の車輪を独立して回転できるようにすることで、この問題を克服したタルゴのような例もある。

速度の向上との関連性については、蒸気機関車の場合、動輪直径を大きくできるため軌間は広いほうが有利であるが、電気機関車などの近代的動力車であれば、多少の軌間の違いはそれほど大きなハンデにはならないとされる。

広軌鉄道を保有している国

ファイル:Rail gauge world.png
各国の軌間。緑色が広軌

英国では、グレート・ウェスタン鉄道1838年以来2140mm(7フィート¼インチ)の広軌の先駆けであり、1890年代まで、この軌間を維持していた。

今日でも多くの国が広軌鉄道を保有している。

大抵の非標準軌間は、既存の鉄道路線間の相互運用を目的として採用されたものである。

インドでは、1800mm以上の広軌を主張する技術者と標準軌を主張する英国政府側で意見の対立があり、妥協案として1676mmとなったという。

グレート・ウェスタン鉄道では、イザムバード・キングダム・ブルネルの考案した2140mmゲージにより、車両の安定性を増し、高速化できることを期待したが、同社は初期の機関車の設計に問題があり、広軌の利点を幾分損なうこととなった。また、懸架装置の発展が早く進み、どのみち10年か20年のうちに標準軌での速度が広軌での速度に追いつくことになった。1600mmと1676mm軌間においては、幅の広い分だけ蒸気機関のシリンダを大きくでき、出力を増やすことができたが、標準軌でもシリンダを外側に配置することでこの問題を解決することができた。

アメリカのピッツバーグやフィラデルフィアの路面電車、地下鉄の軌間は、アメリカ国内で軌間の統一がなされていなかった19世紀中ごろに建設された馬車鉄道の軌間に由来する。その後19世紀終わりまでに幹線鉄道の軌間は標準軌へ統一されたが、市街鉄道の場合、市街の併用軌道上への貨物列車の進入を阻止したいという市当局の思惑から、標準軌と異なる軌道幅が支持され、20世紀初頭建設の路面電車を含め、5フィート前後のさまざまな軌間が採用される結果となった。

一方BART(Bay Area Rapid Transport)では、より軽量な車両がより長い高架区間で強風で煽られて転倒することを防ぐためさらに広い軌間としている。

ナチス・ドイツでは、ブライトシュプールバーンと呼ばれる、軌間3,000mmの巨大列車計画があった。

日本における広軌の定義

日本では、地方鉄道法により私鉄も旧国鉄線の1067mmの狭軌を超える軌間の敷設が制限されたため、狭軌が日本の標準軌間になっていた。このため1067mmを超える軌間をすべて広軌と呼ぶのが一般的だった時期がある[2]

  • 標準軌の1435mm(新幹線)を広軌と記述した、昭和中期ごろ(東海道新幹線の開業直前まで)までの国鉄公式文書がある。
  • 近鉄名古屋線の標準軌化当時は、広軌化と記述されていた。

JR化後は国際的な広軌との混同を防ぐため、公式文書で1435mm軌間を標準軌と記述するのが基本になり[3]、広軌とは表現しなくなった。

日本国内に国際的な広軌(軌間が1435mmを超える)営業用路線は2010年現在存在しない。

工場構内鉄道として製鉄所で広軌を採用したケースがある。1676mm軌間がJFEスチール東日本製鉄所・京浜地区(旧称・扇島地区)に用いられているほか、1435㎜軌間も各地の製鉄所で用いられている[4][5](いずれも非電化)。製鉄所構内で広軌や標準軌を採用した理由は、高炉で製造された銑鉄の輸送は製鋼工場までの閉じた輸送なことと、製鉄所が立地する埋め立て地の軟弱地盤で重量物を安定輸送する設計が容易なことによる。

脚注

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関連項目

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  • このため、今でも過去と同様に1435mm軌間を広軌と表現する人もある。混同を防ぐために、1067mmを国鉄標準軌、1435mm国際標準軌という表現も用いられていた。
  • 近年は新幹線網の拡大で多くの地域に1435mm軌間が広まり、かつてほど特殊でなくなった。
  • 1435mm軌間もJFEスチール西日本製鉄所・福山地区や新日本製鐵君津製鉄所・堺製鉄所などで採用。
  • 鉄道ピクトリアル No.797(2007年12月号)「製鉄所の鉄道」、No.805(2008年7月号) 「続・製鉄所の鉄道」石本祐吉