トケイソウ
トケイソウ(時計草、パッションフラワー、Passion flower)とはトケイソウ科・トケイソウ属(Passiflora)に分類される植物の総称であり、狭義には Passiflora caerulea と言う種の和名である。
特徴
種の数は約500、栽培品種はそれらが掛け合わされてできるためさらに数が多い。栽培品種には驚くべき数のさまざまな色、形のトケイソウが存在する。先に述べた花弁とガクがそれぞれピンクと白という Passiflora x belotii という栽培品種も存在する。ぱっと見には花弁とガクの区別はつかないので、白とピンクが互い違いになった花ビラのように見える。それとは対照的に、副冠も花弁もガクも全部白というのが右の写真で示す Passiflora caerulea 'Constance Elliot' である(子房柱の右に写っているのは、ハチである)。
中央アメリカや南アメリカの熱帯・亜熱帯域が原産地だが、世界中で観賞用に広く栽培される。つる植物で、庭先などに植えられる。挿し芽することで増やすことができる。
名前
和名は3つに分裂した雌しべが時計の長針、短針、秒針のように見える特徴のある花を咲かせることに由来する。
英名 passion flower は「キリストの受難の花」の意味で、イエズス会の宣教師らによってラテン語で flos passionis と呼ばれていたのを訳したものである。 16世紀、原産地である中南米に派遣された彼らは、この花をかつてアッシジの聖フランチェスコが夢に見たという「十字架上の花」と信じ、キリスト教の布教に利用した。 彼らによればこの植物はキリストの受難を象徴する形をしており、花の子房柱は十字架、3つに分裂した雌しべが釘、副冠は茨の冠、5枚の花弁と萼は合わせて10人の使徒、巻きひげはムチ、葉は槍であるなどと言われた。
属名は造語だが、やはり上記比喩に倣ったもの。
なお、英単語 passion には「情熱」の意味もあるが、この植物の名称での passion は「受難」の意味であって、「情熱」の意味ではない。
トケイソウ属
500種以上が存在し、以下は代表的なもの。
- Passiflora alata(ブラジルトケイソウ…実は食用[1])
- Passiflora amalocarpa
- Passiflora amethystina
- Passiflora aurantia
- Passiflora caerulea(狭義のトケイソウ)
- Passiflora capsularis
- Passiflora coccinea(ベニバナトケイソウ、Scarlet passion flower、Red passion flower)
- Passiflora edulis(パッションフルーツ)
- Passiflora foetida(クサトケイソウ、Wild water lemon)
- Passiflora helleri
- Passiflora holosericea
- Passiflora incarnata(チャボトケイソウ、Purple Passionflower)
- Passiflora karwinskii
- Passiflora ligularis(グラナディラ (Granadilla) …実は食用)
- Passiflora mollissima
- Passiflora mucronata
- Passiflora murucuja
- Passiflora quadrangularis(オオナガミクダモノトケイソウ、Giant granadilla…実は食用[2])
- Passiflora racemosa(ホザキトケイソウ)
- Passiflora serratifolia
- Passiflora tenuifila
- Passiflora tulae
- Passiflora vitifolia
- Passiflora yucatanensis
トケイソウの利用
一般にパッションフルーツと呼ばれる物はクダモノトケイソウ(Passiflora edulis)の実で、これ以外にもP. ligularis、P. mollissima、P. quadrangularis等が食用(果汁の採取)目的で栽培されることがある。またパッションフラワーはハーブとして、鎮痛・精神安定・抗痙攣・不眠の緩和・血圧の降下・ヒステリーやノイローゼの緩和・更年期障害など「精神や痛みを静める」働きがあるといわれている。
脚注
外部リンク