バンクーバー・スカイトレイン
バンクーバー・スカイトレイン(テンプレート:Lang-en-short)は、カナダのバンクーバーの中心街と、バーナビー、ニューウェストミンスター、サレー、リッチモンドなどのバンクーバー周辺都市やバンクーバー国際空港とを結ぶ鉄道系の公共輸送機関。メトロバンクーバーの交通行政を所管するトランスリンクと呼ばれる組織が運営している。
目次
概説
スカイトレインは、カナダの鉄道車両製造技術とコンピューター制御技術を世界に誇示するために、1986年のバンクーバー国際交通博覧会(Expo 86)に関連して、中規模都市のためのマス・トランジット・システム(大量輸送機関)のモデルとして計画・完成された。開通当時のルートは、バンクーバー市のウォーターフロント駅とニューウェストミンスター市のニューウェストミンスター駅間のみであった。なお、この交通博を記念して、基幹となっている部分の線をエキスポ・ラインと呼んでいる。
編成は2両、あるいは4両となっている。列車はコンピュータ制御で自動運転され、一般の鉄道で使われている固定式の閉塞を用いていないため、列車同士が非常に近づくことができ、2分から5分という短い間隔で列車がやってくる。ドバイ・メトロに次いで世界で2番目に長い距離を走る無人(コンピュータ制御)電車である。
車両は、鉄車輪と鉄レールで支持・案内されるが、駆動や制動は車上のリニアモーターで行う鉄輪式リニアモーターカー方式が採用されている。インフラ関係の建設は、SNC-Lavalin社が行っている。
路線網
供用中のものは3路線あり、バンクーバーの中心にあるウォーターフロント駅からキングジョージ駅までを結ぶエキスポ・ライン、ウォーターフロント駅からVCC-クラーク駅までを6の字運転(ウォーターフロント駅からコロンビア駅まではエキスポ・ラインと線路を共有)するミレニアム・ライン、さらに2010年のバンクーバーオリンピックの開催に合わせて整備されたカナダ・ライン(計画段階では、RAV・ライン=Richmond-Airport-Vancouver Rapid Transit Lineと呼ばれていた)からなっている。
エキスポ・ライン、ミレニアム・ラインではバンクーバー中心部(ダウンタウン)で地下を走りそのほかの地域では高架になっている。カナダ・ラインはバンクーバー市内の住宅地を通るため、ほとんどが地下となり、空港には高架で入る。
計画中のものでは、ミレニアム・ラインはバンクーバー市外にあるブリティッシュコロンビア大学(UBC)までの延伸が検討されている。また、コキットラム市を走るライトレール方式の新線として計画されているエバーグリーン・ラインは、2010年末の着工、2014年完成が見込まれている。
駅構成
エキスポ・ライン(Expo Line)
ウォーターフロント駅 - バラード駅 - グランビル駅 - スタジアム-チャイナタウン駅 - メイン・ストリート-サイエンス・ワールド駅 - コマーシャル・ブロードウェイ駅 - ナナイモ駅 - 29番アベニュー駅 - ジョイス・コリングウッド駅 - パターソン駅 - メトロタウン駅 - ロイヤルオーク駅 - エドモンズ駅 - 22番ストリート駅 - ニュー・ウエストミンスター駅 - コロンビア駅 - スコット・ロード駅 - ゲートウェイ駅 - サリー・セントラル駅 - キング・ジョージ駅
ミレニアム・ライン(Millennium Line)
(ウォーターフロント駅とコロンビア駅の間は、エキスポ・ラインと共通) コロンビア駅 - ザッパートン駅 - ブレイド駅 - ローヒード・タウンセンター駅 - プロダクション・ウェイ-ユニバーシティ駅 - レイク・シティ・ウェイ駅 - スパーリング-バーナビー・レイク駅 - ホルドム駅 - ブレントウッド・タウンセンター駅 - ギルモア駅 - ルパート駅 - レフリュー駅 - コマーシャル・ブロードウェイ駅 - VCC-クラーク駅
カナダ・ライン(Canada Line)
- 始点より分岐駅(ブリッジポート駅)まで
ウォーターフロント駅 - バンクーバーシティセンター駅 - イエールタウン・ラウンドハウス駅 - オリンピックビレッジ駅 - ブロードウェイ・シティホール駅 - キングエドワード駅 - 33番アベニュー駅(将来計画) - オークリッジ・41番アベニュー駅 - ランガラ・49番アベニュー駅 - 57番アベニュー駅(将来計画) -マリンドライブ駅 - ブリッジポート駅
- 分岐駅よりリッチモンド中心街方面
ブリッジポート駅 - アバディーン駅 - ランズダウン駅 - リッチモンド・ブリグハウス駅
- 分岐駅より空港方面
ブリッジポート駅 - テンプルトン駅 - シーアイランドセンター駅 - YVRエアポート駅
エバーグリーン・ライン(Evergreen Line)(計画中)
ローヒード・タウンセンター -- バーキットラム -- ポートムーディ -- アイオコ -- コキットラム・セントラル -- ダグラス・カレッジ
供用路線の主要データ
路線 | 開業年 | 延長(km) | 駅数 | ターミナル駅 | 車両 | 閉塞方式 | 運行間隔(分) | 旅行時間(分) | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ピーク | オフピーク | |||||||||
エキスポ・ライン | 1985 | 28.9 | 20 | ウォーターフロント | キング・ジョージ | 鉄輪式リニアモーター駆動 | コンピュータ制御 | 2.7 | 6 – 8 | 39 |
ミレニアム・ライン* | 2002 | 20.3 | 13 | ウォーターフロント | VCC-クラーク | 同上 | 同上 | 5.4 | 6 – 8 | 27 |
カナダ・ライン | 2009 | 19.2 | 16 | ウォーターフロント | リッチモンド・ブリグハウス / YVRエアポート |
鉄輪式通常モーター駆動 | 3.8** | 3.8 – 10** | 25 / 26 | |
* ミレニアム・ラインは、ウォーターフロント駅とコロンビア駅の間(15駅区間、21 km)はエキスポ・ラインと路線を共用しており、その部分も含めた旅行時間としては57分となる。 ** カナダ・ラインでは、リッチモンド中心街方面との運行および空港方面との運行がそれぞれ交互に行われる。そのため、分岐駅より先の区間での運行頻度は、分岐駅までの区間の1/2となる。 |
- エキスポ・ラインおよびミレニアム・ライン
- 複線区間:全線
特徴
電車内、駅構内はすべてバリアフリーで、全駅にエレベータ設置。電車とホームの間は2cmから5cmと狭いので、車椅子でも手助けなしに乗降できる。コンピュータ制御なので、時間が来ると車内で発車サイン音が鳴り、ドアが自動的に閉まる。人が挟まれたり、無理矢理乗り込もうとするとドアが開いていると感知し、再びドアを少し開ける。
駅には駅員もいないことからあまり治安が良くない交通機関とされたため全駅構内に防犯カメラを設置しスカイトレイン警察隊(鉄道警察)が結成された。この警察隊は、普通の警察官と同じ法律による拘束力があり犯人逮捕も出来る。当初この警察隊は拳銃を所持しないはずだったが、最終的には所持することになった。車内には無音アラームという身に危険が迫った場合でも犯人に気づかれること無く通報できるシステムがある。窓枠の黄色いストラップ上のボタンを押すことで作動し、数分で警察隊が現場に急行するとされている。
電車内では禁煙、飲食禁止、スピーカでのラジオ禁止になっているが、携帯電話の使用は制限されておらず、車内にはしばしば着信音や話し声が響いている(なお、携帯電話の車内での通話がマナー違反とされるのは日本以外にほとんど例がない)。ペットを乗せる場合は小さいケージに入れないといけない。
エキスポ・ラインおよびミレニアム・ラインは、車両はリニアモータ駆動、無人運転(コンピュータ制御)による先進交通システムで、最高時速は90km/h。ピーク時を除いて、1車両につき2台まで自転車を乗せることができる。電車が来ると、駅のホームにある電光掲示板に路線名と行き先が交互に表示されるが、接近放送などは一切ない。古い車両には方向幕などは設置されていないが、停車中に車内の自動放送が路線名と行き先を案内する。電光掲示板は、電車が来ない時には時計と案内スクロールの交互表示となっている。また、治安上の理由から、駅には化粧室が設けられていない。
カナダ・ラインは、車両は通常モーターによる駆動で、最高時速は80km/h。
運賃
運賃はゾーン制である。駅のコンコース、またはホームにある券売機できっぷを購入して乗車する。但し、スカイトレインの駅には改札が無く、駅員もいない。切符のチェックは、たまに職員が抜き打ちチェックをすることがある。特に休日は、職員と警察が駅にいる。無賃乗車の罰金は、150カナダドルほど。
一度お金を払えば90分間トランスリンクの乗り物であるスカイトレイン・バス・シーバスなどは購入したゾーン内を乗り降り自由にできる。
スカイトレインの自動券売機は、1セントを除くすべてのコインと紙幣が使える。デビットカード、クレジットカードも使える。また6ヶ国語切り替えに対応しており、日本語表示の際にはタイトル部に明朝体で「単一運賃の即時購入」と表示される。
普通乗車券で空港内の3駅から出発する場合の運賃は5ドル増しとなる。
大人
運賃は、移動エリアによって2.50~10.00カナダドル。支払い時に受け取る切符(トランスファー・チケット)を所持する事で、同一料金エリア内での乗り降りが自由となる。更に、平日の午後6:30以降と土日祝日は空港のあるシー・アイランドから乗車した場合を除き一律2.50カナダドルでどこでも行ける。
子供とシニア(65歳以上)
運賃は、移動エリアによって1.75~8.50カナダドル。支払い時に受け取る切符を所持する事で、同一料金エリア内での乗り降りが自由となる。更に、子供またはシニア用の定期券を所持している場合や平日の午後6:30以降と土日祝日は一律1.75カナダドルでどこでも行ける。
使用車両
エキスポ・ラインおよびミレニアム・ライン
車両はいずれも2両固定編成となっており、通常は同形式を繋いだ4両編成で運転される。車番は 001-002 や 211-212 のように連番となっているが、どちらの車両の数が小さいかは、車両によってまちまちである。
Mark I
片側2ドアの12m車両である。エキスポライン開業時である1984年から、キング・ジョージ駅延伸の1994年までに、計150両が製造された。2両固定編成であり、最大6両で運転できる。
- 外観 : 前面形状は窓を埋めたような形状で、車体断面は車体上部向かって絞られている。前照灯は丸型のものが下方に、尾灯は上方に設置されている。先頭部分が機械室になっており、その結果、前面の窓は貫通扉にしかなく、前面展望性は非常に悪い。塗装は、白いボディーに赤と青のラインが配われているが、一部Mark IIに準じた色に塗り替えられている。
- 内装 : 白色の壁に赤い仕切り板が用いられており、ドア内側も赤く塗装されている。ドア横の仕切り板にはアクリル板が設置されており、横に立った人と接触しないようになっている。また、シートは一人分に分かれた藍色のビニル素材のものであり、クッション性がある。蛍光灯は広告と一体化した電球色のものであり、車内は若干暗い。編成によって、センターポールが設置されているものもある。天井には、大きなファンデリアが設置されている。
- メーカー : アーバン・トランスポーテーション、ディベロップメント・コーポレーション
- ドア : 外釣り式の片側2ドアとなっている。
- シート配置 : 車両中央を向く形の集団見合型セミクロスシートとなっており、先頭部の貫通扉部分には、折りたたみ式の補助シートが設けられている。
- 制御装置 : GTO素子VVVFインバータ
- その他 : 車両間は繋がっていないため、走行中に他の車両へ移動することは不可能。また、車内には路線図があるが、案内表示器などは設置されていない。
Mark II
ミレニアムライン開業時の2002年から、計60両が製造された。
- 外観 : 大きめな縦長一枚窓の、丸い形状の前面となっている。前面下部に四角い前照灯があり、尾灯は窓の上部に一体化している。塗装は、白いボディーの側面に青と黄色の弧状のラインやSkyTrainのロゴが描かれており、前面窓の下に、TRANS LINKの文字が入っている。先頭部の窓脇は、Mark I同様機械室となっている。
- 内装 : 全体的にホワイトでまとめられている。手すりの形状は、曲線を帯びており、上部が黄色く塗られている。シートは布製の藍色で、Mark Iよりも座り心地が改善されている。蛍光灯は、広告と一体となったものの他にダウンライトが設置されているため、Mark Iよりも明るくなった。
- メーカー : ボンバルディア・トランスポーテーション
- ドア : 外釣り式の片側3ドアとなっており、幅がMark Iよりも若干広い。
- シート配置 : ほとんどの座席は、進行方向右側は進行方向を、左側は逆向きを向く形のクロスシートとなっており、先頭部には前面展望用の一人がけのシート、その脇には中央向きの一人がけシートがそれぞれある。また、先頭部付近に車椅子スペースが用意されている。
- 制御装置 : IGBT素子VVVFインバータ
- 車両間が繋がっており、走行中に他の車両へ移動することが可能であるが、4両運転時での編成間の移動はできない。また、車内には路線図があるが、案内表示器などは設置されていない。