ディンゴ
テンプレート:生物分類表 ディンゴ(学名:Canis lupus dingo、英語名:Dingo)は、オーストラリア大陸とその周辺に生息する、タイリクオオカミの1亜種であり、広義で言うところの野犬の一種。
生息域
アボリジニがオーストラリアに移住する際、一緒に連れてきたと考えられている(ただしその時期は最終氷期終了以降、数千年前と思われる。ディンゴが最終氷期時にオーストラリア大陸と繋がっていたタスマニア島にまで生息域を広げられなかったのは、最終氷期の終わりにオーストラリア大陸とタスマニア島が海面上昇で切り離された後にディンゴがオーストラリア大陸に入ったためであるとみられている)。ディンゴはアボリジニに家畜として飼われていたものの子孫である。同じタイリクオオカミの亜種であるイエイヌとは亜種レベルの違いであり混血ができるため、現在では交雑が進んでディンゴ・ハイブリッドとなっており純血を保つものは少ないといわれ、フレーザー島に生息するディンゴはオーストラリア東部では最も純血である[1]。東南アジアの在来犬とは遺伝的に非常に近いため、広義では、これらもディンゴに含まれる。
呼称
C. l. dingoには学名、一般名ともに複数の呼称が与えられており、ディンゴがもっとも普通に使われる呼称である。さらに、オーストラリア大陸においてはwild dogが使われることもしばしばある。wild dogと呼ばれるときはディンゴのみならず、野犬や、野犬との混血種を指す[2][3]。
学名
最初の公式な学名は1792年につけられたCanis antarcticusであり、以降、ディンゴの学名は数回にわたり変更されている[4]。
イエイヌの一亜種として、かつイエイヌがオオカミとは別の種として扱われ、ディンゴの学名Canis familiaris dingoが50年以上にわたり使い続けられてきたが、現在の分類学では、Canis lupus dingoとしてイエイヌとは別のタイリクオオカミの一亜種と見なされている[2]。Mammal Species of the Worldの現行の版においては、イエイヌとしてこれらの両亜種を分類している[4]。その上、オオカミやイヌから別種としてCanis dingoとして分類されたり[5][6]、Canis lupus familiaris dingoとして扱い、イエイヌの品種として扱われる場合がある[7]。
一般名
ディンゴという名称はもっとも一般的に用いられている言葉である。この言葉の起源はニューサウスウェールズ州へのヨーロッパ人の入植初期にまでさかのぼり、ポート・ジャクソン湾のアボリジニの一部族が彼らの飼育していた犬に対して使用していたtingoに由来するとされる[8]。
ディンゴは異なるアボリジニの族により、JoogongやMirigung、Noggum、Boolomo、Papa-Inura、Wantibirri、Maliki、Kal、Dwer-da、Kurpany、Aringka、Palangamwari、Repeti、Warrigalなど様々な名称で呼ばれている[2]。またそれと同時に、ディンゴがどのように生活しているかによっても、呼称が異なる場合がある。たとえばYarralin族は飼育しているディンゴをWalakuと呼び、野生のディンゴをNgurakinと呼んでいる[9]。ディンゴの生息している地域により、オーストラリアのディンゴはしばしば高山ディンゴ(alpine dingoes)、砂漠ディンゴ(desert dingoes)、北部ディンゴ(northern dingoes)、ケープヨークディンゴ(Cape York dingoes)や熱帯ディンゴ(tropical dingoes)などと呼ばれることもある。また近年ではオーストラリア犬(Australian native dog)と呼んだり[10]、Canis lupusの亜種であることから、オーストラリアオオカミ(Australian wolf)と呼ぶこともある[11]。
生物的特徴
体長(頭胴長)約103cmで、多くは黄褐色の体毛と垂直に立った耳をもつ。中型から大型犬ほどの大きさで、性質は獰猛。オーストラリアの砂漠、草原、温帯林、林縁部に生息する。繁殖期には群れをつくり生活する。イエイヌとは違って吠えない。繁殖期は年に一度である。一部のディンゴはアボリジニのキャンプで飼われ、残飯の処理や抱いて寝ることで毛布代わりに使われていたという。
固有種であったフクロオオカミとはほぼ同じ体格・食性をしており、オーストラリア大陸ではニッチ(生態的地位)の上で競合した結果、フクロオオカミが絶滅し、ディンゴの生息しないタスマニア島にのみ残っていた。ディンゴがニッチの競合で勝ち残った理由として、単独で狩りをするフクロオオカミに対し、ディンゴは群れで狩りをするため生存競争に有利であったことによると考えられている。また、タスマニアデビルがオーストラリア大陸で絶滅し、タスマニアにのみ残っていることも、ディンゴの影響と考えられているテンプレート:要出典。
分布
オーストラリア大陸、ニューギニア、インドネシア、マレーシア、タイ、ミャンマーなど[12][13]。
分類
現在(2000年代後半)の分類学的知見では、タイリクオオカミの1亜種 (Canis lupus dingo ) とする分類説と、独立種 (Canis dingo ) とする分類説が並立している。かつてはイエイヌを独立種として取り扱い、ディンゴをその1亜種 (Canis familiaris dingo ) と見なすなど、非常に多くの学説が存在した。
- ITIS(統合分類学情報システム)データベース
シノニム
ディンゴのシノニム(異名)を示す。太字で示したものは今(2000年代後半)も支持されている。
- Canis antarcticus テンプレート:AUY
- Canis australiae テンプレート:AUY
- Canis dingo テンプレート:AUY
- Canis dingoides テンプレート:AUY
- Canis familiaris australasiae テンプレート:AUY
- Canis familiaris dingo テンプレート:AUY
- Canis familiaris novaehollandiae テンプレート:AUY
- Canis hallstromi テンプレート:AUY
- Canis macdonnellensis Matschie, 1915
- Canis papuensis テンプレート:AUY
- Canis tenggerana Kohlbrugge, 1896
- Canis tanggerana harappensis Prashad, 1936 [14]
人間との関わり
ヒツジなどの家畜を襲う被害がたびたび報告されている。そのため、毎年多くのディンゴが駆除され、この行為は環境保護団体から非難されている。オーストラリア南東部には「ディンゴ・フェンス」(英語版[en]、および右の画像を参照)」と呼ばれる総延長5,320kmにも及ぶフェンスが設けられているが、これはディンゴがヒツジなどを襲うという被害が相次ぐため、当地域へのディンゴの進出を阻止するためのものである[15]。
また、家畜や農作物だけでなく、近年は人間が襲われることもあり、食い殺されたりされるなどという被害が過去十年で6件以上報告されている。人間が被害にあった一番有名な例は1980年に巨大岩石ウルル(英語名エアーズロック)近くのキャンプ場で生後間もない女児・アザリアが行方不明となり、この際に母親が殺害したとして終身刑になったが母親は一貫して無罪を主張、この件について30年以上経った2012年6月12日に地元検視当局は被害者の女児はディンゴによってさらわれた後に死亡したとの最終結論に至る。なおこの事件では女児の母親が1982年に殺人罪として終身刑判決を受けた後に女児の着衣がディンゴの生息地において見つかり結果として逆転無罪となっている(遺体は2012年においてまで未発見のままである)[16]。
画像
- Nullarbor Dingo.jpg
通常の体毛を持つディンゴ
- Rare shot of white dingo.jpg
白色の体毛を持つディンゴ
- Das Rudel heult.jpg
遠吠えをするディンゴたち
- Dingowelpen Berlin.JPG
ディンゴの子供(ベルリンの動物園)
- Look at me dad.jpg
ディンゴの子供と、その父親
- Dogfence.jpg
ディンゴフェンス
- 1080PoisonWarning gobeirne.png
ディンゴ駆除にも使用されたモノフルオロ酢酸ナトリウム1080毒餌使用の警告看板
- Dead-wild-dogs-fence.jpg
野生犬の死骸をフェンスに引っ掛けて、ディンゴを遠ざける試み
- Singing dingo.jpg
ペットとして飼われるディンゴ
- Meh C-Bear.jpg
カーリーベアと名付けられたペットのディンゴ
- SleepingDomesticatedDingo.jpg
眠っているペットのディンゴ
脚注
テンプレート:Sister テンプレート:Sister テンプレート:Sister テンプレート:脚注ヘルプ テンプレート:Reflist
関連項目
テンプレート:Animal-stubテンプレート:Link GA- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ 2.0 2.1 2.2 テンプレート:Cite web
- ↑ Since interbreeding of dingoes and other domestic dogs is regarded as widespread, occasionally hard to detect, and because no distinguishing feature is regarded as completely reliable, it is not clear whether the observed dogs are dingoes or not. Furthermore in some topics there is no distinction made between dingoes and other domestic dogs. Due to these problems the article will only use the terms "dingo" and "dingo-hybrid" (respectively "dingo-crossbreed") when the used literature named the respective dogs as such. Otherwise the terms dog or wild dog have been taken over from the used literature.
- ↑ 4.0 4.1 Wozencraft, W. Christopher (16 November 2005). "Order Carnivora (pp. 532-628)". in Wilson, Don E., and Reeder, DeeAnn M., eds. Mammal Species of the World: A Taxonomic and Geographic Reference (3rd ed.). Baltimore: Johns Hopkins University Press, 2 vols. (2142 pp.). pp. 575–577. ISBN 978-0-8018-8221-0
- ↑ テンプレート:Cite book
- ↑ テンプレート:Cite book
- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ テンプレート:Cite book
- ↑ テンプレート:Cite book
- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ 引用エラー: 無効な
<ref>
タグです。 「iucn
」という名前の引用句に対するテキストが指定されていません - ↑ D.W.マクドナルド 『動物大百科1 食肉類』 平凡社 1986 ISBN 4-582-54501-7 p97
- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ Dingoes - EPA Queensland Government、Dingo fence
- ↑ [http://sankei.jp.msn.com/world/news/120612/asi12061214270002-n1.htm 女児失踪は野犬が連れ去り 豪、32年前の事件で結論 2012.6.12 14:24]