日韓共同宣言
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「日韓共同宣言 21世紀に向けた新たな日韓パートナーシップ」(にっかんきょうどうせんげん 21せいきにむけたあらたなにっかんパートナーシップ)は、1998年10月8日に日本国内閣総理大臣 小渕恵三と大韓民国大統領 金大中が、1965年の日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約によって国交が結ばれて以来、過去の両国の関係を総括し、現在の友好協力関係を再確認するとともに、これからあるべき日韓関係について意見を出し合い、新たな日韓パートナーシップを構築するとの共通の決意を宣言した文書。2001年7月18日、韓国議会は日韓共同宣言の破棄を韓国政府に求める全会一致の決議を行った[1]。
宣言内容
日韓関係
- 2002 FIFAワールドカップの成功に向けた両国国民の協力を支援し、この開催を契機として、文化及びスポーツ交流を一層活発に進めていく
- 在日韓国人が、日韓両国国民の相互交流・相互理解のための架け橋としての役割を担い得るとの認識に立ち、その地位の向上のため、引き続き両国間の協議を継続していく
- 中高生の交流事業の新設を始め政府間の留学生や青少年の交流プログラムの充実を図るとともに、両国の青少年を対象としてワーキング・ホリデー制度を1999年4月から導入する
- 金は、韓国において日本文化を開放していくとの方針を伝達
- 日韓逃亡犯罪人引渡条約の締結のための話し合いを開始するとともに、麻薬・覚せい剤対策を始めとする国際組織犯罪対策の分野での協力を一層強化する
- 首脳間のこれまでの緊密な相互訪問・協議を維持・強化し、定期的に行うとともに、外務大臣を始めとする各分野の閣僚級協議を更に強化していく
経済
- 二国間での経済政策協議をより強化するとともに、WTO、OECD、APEC等多国間の場での両国の政策協調を一層進めていくと意見が一致した
- 日本によるこれまでの金融、投資、技術移転等の多岐にわたる対韓国経済支援を評価する
- 小渕は韓国の経済困難の克服に向けた努力を引き続き支持する
- 両首脳は、財政投融資を適切に活用した韓国に対する日本輸出入銀行による融資について基本的合意に達したことを歓迎した
漁業問題
- 両首脳は、両国間の大きな懸案であった日韓漁業協定交渉が基本合意に達したことを心から歓迎するとともに、国連海洋法条約を基礎とした新たな漁業秩序の下で、漁業分野における両国の関係が円滑に進展することへの期待を表明した
国際
- 国際連合の役割が強化されるべきであり、これは安保理の機能強化、国連の事務局組織の効率化、安定的な財政基盤の確保、国連平和維持活動の強化、途上国の経済・社会開発への協力等を通じて実現できればいいと意見が一致した
- 軍縮及び不拡散の重要性、とりわけ、いかなる種類の大量破壊兵器であれ、その拡散が国際社会の平和と安全に対する脅威であることを強調するとともに、この分野における両国間の協力を一層強化する
北朝鮮有事
- 両首脳は、朝鮮半島の平和と安定のためには、北朝鮮が改革と開放を指向するとともに、対話を通じたより建設的な姿勢をとることが極めて重要であるとの認識を共有した(小渕は、金の融和的な対北朝鮮政策に対し支持を表明した)
- 両首脳は、1994年10月に米国と北朝鮮との間で署名された「合意された枠組み」及び朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)を、北朝鮮の核計画の推進を阻むための最も現実的かつ効果的なメカニズムとして維持していくことの重要性を確認した
- 北朝鮮のミサイル開発が放置されれば、日本、韓国及び北東アジア地域全体の平和と安全に悪影響を及ぼすと意見が一致した
- 両首脳は、1992年2月に発効した南北間の和解と不可侵及び交流・協力に関する合意書の履行及び四者会合の順調な進展が望ましい
環境問題
挙げられる問題点
- 日本側から、韓国に対して北朝鮮による日本人拉致問題に対して、協力を仰がなかった
- 在日韓国人の国籍の処遇に対する根本的な対処を話し合わなかった
- 日韓双方が領有権を主張する竹島(韓国名:独島(ドクト))に関して、何ら話し合いを持たなかった
- 過去の歴史に対する日本の謝罪と賠償について、韓国政府の自国民への説明の足りなさに対する何らかの要求
脚注
- ↑ 対日関係全面見直し決議、韓国国会が採択 朝日新聞 2001年7月18日