カワサキ・GPZ900R

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ファイル:1984 Kawasaki GPz900R.jpg
GPZ900R Ninja A1 初期型
ファイル:GPZ900R A16Ninja.jpg
GPZ900R Ninja A16 Final Edition

カワサキ・GPZ900R(ジーピーゼットきゅうひゃくアール)は、1984年に市販された川崎重工業オートバイ、新世代スポーツツアラーである。北米市場むけの仕様にはNinja(ニンジャ)のペットネームが付けられた。

概要

それまでカワサキのスポーツバイクの最上位機種であったGPZ1100は、Z-1以来の伝統を持つ空冷4気筒エンジンを採用していたが、これ以上の性能向上は望めず、重量が大きすぎるため運動性を損なっていた。

小型で高出力なエンジンとコンパクトな車体を組み合わせることによって、GPz1100以上の動力性能とワンクラス下の俊敏さを併せ持ったロードスポーツを実現すべく、GPZ900Rが開発された。エンジンは全く新しく設計された水冷第1世代で、908cc排気量で115psを発揮し、当時としては一流の性能だった。また、それを支える車体はラバーマウントを持たずにリジッド締結としたハイテンションスチール(高張力鋼)製で、ダウンチューブを廃止した代わりにエンジンそのものをストレスメンバーとして使用する、ダイヤモンド式フレームを採用し、低重心化に貢献していた。また、空気抵抗を抑えるフルフェアリングと16インチフロントホイールの採用も当時は目新しい点だったと言える。

結果としてGPZ900Rの最高速度は250km/hをマークし、GPz1100よりも馬力では若干劣りながらも、最高速度・加速・コーナリングなどすべての面でGPz1100を上回る性能を持つ軽快なスポーツ車が誕生した。

なお、同一の車体構成でボア・ストロークをダウンしたエンジンを搭載するGPZ750 ( 748cc / 77ps・G1-G3 ) が姉妹車種としてあり、北米を除く各国に輸出された。日本国内では750cc超の大排気量車の販売が1991年まで自主規制されていた関係上、国内市場向けとしては750ccモデルのみの販売となった。しかしオリジナルを求めるユーザーの需要も多く、多数のGPZ900Rが逆輸入と言う形をとって日本国内で登録された。

生産終了された2000年代以降も旧車ファンから一定の支持を集めている。BMW・K100RS1983年)の模倣との声があるテンプレート:誰2

車歴

A1(1984年)

  • 全く新しい機種として市場に投入
  • WGPチャンピオンでカワサキ・ワークスであったコーク・バリントンのデモンストレーションと高性能で注目を集める
  • 乾燥重量228kg
  • 車体ロゴは「GPz900R」と表記(正確には「Z900R」の部分のロゴが小さい)
  • カラーリングは(BLU)ルミナスポラリスブルー×ギャラクシーシルバー、ファイヤークラッカーレッド×メタリックグレーストーン
  • フレーム№ZX900A-000001~ , ZX900A-015004~ , JKAZX2A1=EA000001~

A2(1985年)

  • カラーリング変更 ルミナスポラリスブルー×ギャラクシーシルバー、ファイヤークラッカーレッド×エボニー、ライムグリーン×ポーラホワイト(南アフリカ仕様)、ファイヤークラッカーレッド×ギャラクシーシルバー
  • 映画『トップガン』(1986年公開)において主人公の愛車として登場したのはこの「A2」モデルである。
  • 北米仕様はハンドルが高く、ステップも前方にセットされているのが特徴。
  • フレーム№ZX900A-015001~015003 , ZX900A-015501~ , JKAZX2A1=FA015001~

A3(1986年)

  • 北米仕様は最高出力を110psに落としトルク特性を向上、その他ヨーロッパ・南アフリカ・オーストラリアはフルパワーのままで115ps、西ドイツ、フランス等の馬力規制のある国は100ps
  • 北米仕様「Ninja」最終型
  • 潤滑系を強化するためシリンダーヘッドまわりのオイルラインを拡大化
  • 車体ロゴを「GPZ900R」と表記
  • フロントフォークのアウターチューブとブレーキキャリパーがシルバーに変更(A1およびA2はブラック)
  • カラーリング変更(EBY)エボニー×ファイヤークラッカーレッド、ファイヤークラッカーレッド×パールアルペンホワイト
  • フレーム№ZX900A-031001~035100 , JKAZX2A1=GA031001~

A4(1987年)

  • カラーリング変更 ファイヤークラッカーレッド×ギャラクシーシルバー
  • フレーム№ZX900A-035101~

A5(1988年)

  • ディスクローターGPz1000RXと共通化(放熱孔 50穴 → 80穴)
  • カムチェーンテンショナーの構造をノッチ式に改良
  • カラーリング変更 エボニー×パールコスミックグレー(赤ライン)
  • ホイールの塗装色をレッドに変更(A1からA4まではブラックとヘアラインシルバーとのツートーン)。
  • 欧州仕様のみ製造
  • フレーム№ZX900A-038501~

A6(1989年)

  • 冬季におけるガソリンの霧化性能を向上させるべく、ラジエーター液をキャブレターに循環させるキャブヒーターが装備される。
  • カラーリング変更 エボニー×パールコスミックグレー(金ライン)
  • ホイールのカラーを単色のゴールドメタリックに変更(A5までは塗装色とヘアラインシルバーとのツートーン)。
  • 欧州仕様のみの製造
  • フロントホイール16インチ時代の最終モデル
  • フレーム№ZX900A-042001~ , JKAZX2A1=KA042001~

A7(1990年)

  • フルパワー車のエンジン出力が108psに落とされる
  • 乾燥重量が234kgに増加
  • メーターパネルデザイン変更によりアンメーターの廃止
  • バックミラーのデザイン変更
  • シートスポンジの材質変更
  • ステップラバーのデザイン変更
  • ディマスイッチ変更(デザインおよびウインカープッシュキャンセル化)
  • ホイールデザインおよびサイズ変更 (F:2.50-16 → 3.00-17、R:3.00-18 → 3.50-18)
  • タイヤサイズの変更 (F:120/80-16 → 120/70-17、R:130/80-18 → 150/70-18)
  • ブレーキキャリパーの変更 (F:片押し1ポット → 対向4ポット、R:片押し1ポット → 片押し2ポット)
  • ブレーキローターの変更 (F:280 φ → 300 φ、R:270 φ → 250 φ)
  • フロントフォークの変更 (38 φ → 41 φ)、AVDS(フロントフォーク沈み込み防止機能)廃止
  • サイレンサー長変更 (30mm位長くなる)
  • カラーリング変更 エボニー×パールコスミックグレー、エボニー×ファイヤークラッカーレッド
  • フレーム№ZX900A-048001~ , JKAZX2A1=LA048001~

A8(1991年)

  • 日本での750cc超のオートバイの自主規制が撤廃され日本仕様が発売。日本仕様は最高出力86ps/9,000rpm・最大トルク7.3kg/6,500rpm リミッター180km/h作動、さらにロングマフラーの採用、ヘッドライト常時点灯。輸出仕様はA7と同一。
  • キャブレターボディがシルバーに変更(A7まではブラック)
  • カラーリングはA7と同一
  • フレーム№ZX900A-056001~ , JKAZX2A1=MA056001~
  • フレーム№ZX900A-058183~ZX900A-059848(日本国内仕様)

A9(1992年)

  • アッパーカウルにはKawasakiのロゴに変わり、Ninjaのロゴ
  • カラーリング変更は日本仕様のみ、ルミナスポラリスブルー×ギャラクシーシルバー、ファイヤークラッカーレッド×メタリックグレーストーン。輸出仕様はA8のまま生産。
  • フレーム№ZX900A-063001~ZX900A-063892(日本国内仕様)

A10(1993年)

  • 日本仕様のホイールのカラーを単色のガンメタルグレーに変更(A6からA9まではゴールドメタリック)。輸出仕様はA8のまま生産、欧州仕様生産最終年。
  • 以後5年間全く変更せずに販売
  • フレーム№ZX900A-068001~078000
  • フレーム№ZX900A-068921~070887(日本国内仕様)

A11(1998年)

  • カラーリング変更 ライムグリーン×パールアルペンホワイト、ファイヤークラッカーレッド×メタリックグレーストーン。日本国内・日本国外ともに共通のカラーリング。
  • 日本国内仕様のタイヤの速度レンジを日本国外仕様と同じV規格へ変更
  • グリップのデザインをZRX1100と共通化
  • ヘッドライト常時点灯(日本国内/日本国外とも)
  • フレームNo.ZX900A-078001~ZX900A-080555(日本国内仕様/マレーシア仕様)

A12(1999年)

  • A7以来の大幅な変更(カラーリングの変更はなし)
  • フロントブレーキキャリパーを6ポッドに変更
  • リヤサスペンションガス封入式ショック搭載、リンク比を変更。
  • タイヤラジアルに変更
  • フロントフォークインナーチューブガード追加
  • 日本国内仕様最終型(排出ガスや騒音規制の問題で生産終了になる/生産は2002年まで)
  • フレームNo.ZX900A-085001~ZX900A-087079(日本国内仕様/マレーシア仕様)

A13(2000年)

  • カラーリング変更 ファイヤークラッカーレッド×メタリックグレーストーン、パールクロームイエロー×ブラックパール(イエローの日本総輸入販売台数328台テンプレート:要出典
  • マレーシア仕様のみ生産
  • フレームNo.ZX900A-090001~ZX900A-090474

A14(2001年)

  • カラーリング変更 エボニー×パールコスミックグレー、ライムグリーン×ポーラホワイト
  • エボニー×パールコスミックグレーのみホイールに単色のゴールドメタリックを採用(A6 - A8と共通)。ライムグリーン×ポーラホワイトは従来通りガンメタリックグレー。を継続
  • マレーシア仕様のみ生産
  • フレームNo.ZX900A-092001~ZX900A-092690

A15(2002年)

  • 排出ガス規制をクリアする為、二次空気導入装置「KCA(カワサキ・クリーン・エア)」採用。
  • マレーシア仕様のみ生産
  • フレームNo.ZX900A-095001~

A16(2003年) 

  • 最終モデルには「Final Edition」のエンブレムあり(正規代理店販売の商品のみ)。並行輸入販売の商品にはこのエンブレムはない。
  • カラーリング変更 ルミナスポラリスブルー×ギャラクシーシルバー、ファイヤークラッカーレッド×メタリックグレーストーン
  • 初期型のA1のカラーラインナップ「赤・金ライン・灰」「青・赤ライン・銀」とほぼ共通しているが、ラインのデザインが太い、ホイールカラーの違い(A1のブラックとヘアラインシルバーに対し、A16は「赤」のガンメタルブルーと「青」のゴールドメタリック)など、まったく同じではない。
  • マレーシア仕様のみ生産
  • フレームNo.ZX900A-097001~ZX900A-097162(?)

エンジン

カワサキの本格的水冷エンジンとして第1世代に当たるこのエンジンは、幅を詰めるためウエットライナースリーブを直接冷却する)という他社ではあまり見られない構造を持つ。吸気をよりストレートにして効率を高めるため、カムチェーンは左端にレイアウトする「サイドカムチェーン」方式をオートバイ用の横置き直列4気筒エンジンで最初に採用した(カムチェーンを左に寄せるとサイドスタンドで立てた際にシリンダヘッドカバーに雨水が溜まるため、後のエンジンでは右端にするのが一般的となった)。

トランスミッションは、Z系と同じくクランクウェブが1次減速のプライマリーギヤを兼ねるほか、クランクシャフトはジャーナルの1箇所をキャップで抑える構造とし、エンジン幅の抑制に努めている。フレームにラバーを介さずに直接マウントするリジッドマウントを採用するため、防振対策からこれも4気筒エンジンでは当時まだ珍しかった2次振動バランサー(1軸式)を装備している。

シリンダーヘッドは1カム2バルブ駆動のロッカーアームDOHCであり、このカムシャフトとロッカーアームのスリッパー面間の潤滑不良から「カジリ」を生じやすく、弱点の一つに挙げられる。始動直後に大きくレーシングしたり、暖機と称して長時間アイドリングさせているとなりやすい。実際に日本以外ではこの問題はほとんど出なかったというテンプレート:要出典

なお、カワサキは1983年をもってレース活動を一時休止したために実戦投入には至らなかったが、姉妹車種のGPZ750RをベースとしたTTーF1用レーシングマシンも平行して開発されており、キットパーツとして日本国内外に供給された。

主要諸元

  • エンジン:水冷4ストロークDOHC4バルブ並列4気筒 ( 908cc )
  • 最高出力:115ps/9,500 rpm
  • 最大トルク:8.7kg-m/8,500 rpm
  • 乾燥重量:228kg
  • タイヤサイズ:F120/80V16 R130/80V18

スペックは1984年式(A1)のもの。当時は各国仕様によって最高出力が変更されており、仕向先によって110ps / 69psの仕様も存在した。

各種対策・リコール

  • ロッカーアーム材質変更(A13あたりから)
  • クランクケースボルトサイズ変更(A7から)
  • カムチェーンテンショナー ラチェット式に変更(A7から)
  • スターター ワンウェイクラッチ強化(A10から)

外部リンク


テンプレート:Kawasaki