学士会
一般社団法人学士会(がくしかい)は、日本の社団法人。旧帝国大学系大学の出身者等を主な会員とする、大学の枠を超えた一種の同窓会組織である。
概要
学士会は、次の資格を備えた正会員と学生会員(1の大学に在学する者)により構成される組織である[1]。
- 東京大学、京都大学、東北大学、九州大学、北海道大学、大阪大学、名古屋大学及びその前身の帝国大学、京城帝国大学、台北帝国大学出身の学士
- 前記大学の大学院出身の修士、または博士(専門職学位を含む)
- 前記大学の学長、教授、准教授またはその職にあったもの
学士会は、1886年(明治19年)、帝国大学(現在の東京大学)の卒業生の同窓会組織として創立された。名称に「学士」とあるが、会が創立された当時、学士の称号[2]を与えられたのが帝国大学の卒業生に限られたためである。
著名な歴代理事長には、元東京大学総長の南原繁(在任:1964年(昭和39年)11月 - 1974年(昭和49年)5月)、日本学士院長を兼ねた有澤廣巳(在任:1974年(昭和49年)10月 - 1988年(昭和63年)3月)、元最高裁判所判事の團藤重光(在任:1993年(平成5年)7月 - 2009年(平成21年)6月)などが、著名な評議員(役員)には元日本銀行総裁の三重野康などがいる。
2008年より学士会若手交流会が発足。
沿革
創立は1886年(明治19年)4月18日。帝国大学(現在の東京大学)を卒業した学士たちが、小石川植物園で開いた「加藤弘之先生 謝恩会」の席上、このような卒業生の親睦会を継続したいという気運をきっかけとして、同年7月に創設された。初代理事長は、阪谷芳郎(貴族院議員)。創立時の主な会員には、外山正一(理科大学教授)、矢田部良吉(理科大学教授)、阪谷芳郎(明治17年文卒)、嘉納治五郎(明治14年文卒)などがいた。
その後、1897年(明治30年)に京都帝国大学(現在の京都大学)、1907年(明治40年)に東北帝国大学(現在の東北大学)、1911年(明治44年)には九州帝国大学(現在の九州大学)が帝国大学令に基づいて順次創立され、各帝国大学の卒業生にも学士号が与えられて、学士会に入会した。1918年(大正7年)には大学令(大正7年勅令第388号)が公布(翌年施行)されて私立学校も大学を設置し、新たな大学の卒業生に学士号が与えられることとなった[3]。しかし、学士会の名称はそのままに、その後、1918年(大正7年)に北海道帝国大学(現在の北海道大学)、1924年(大正13年)に京城帝国大学(1945年実質的に廃止)、1928年(昭和3年)に台北帝国大学(1945年実質的に廃止)、1931年(昭和6年)に大阪帝国大学(現在の大阪大学)、1939年(昭和14年)に名古屋帝国大学(現在の名古屋大学)が帝国大学令に基づいて順次創立され、各帝国大学の卒業生が入会した。
現状
会員数は約5万4000人[4]。現理事長は元東京大学教授の松尾浩也(在任:2011年(平成23年)6月 - )。
本部は千代田区神田錦町の学士会館本館にある。館内には会議室、飲食店、美容院などの設備がある。現在ある敷地は官立東京英語学校で、その跡地に空校舎に入った東京府中学校があった場所。都心の一等地に立地するが、戦前建築のため施設が老朽化し、トレーニング・ジム等の青年・壮年層向けの施設が存在しないため利用する年齢層は限られている。いずれも会員の学会活動や同窓会、結婚式、講演会の開催[5]などに利用されている。会員向けの行事も、功なり名を遂げた学者・著名人の食事付き講演会(夕食会・午餐会)や、落語会など高齢者向きのレパートリーになっている。
卒業式の時に積極的に入会勧誘が行われるが、入会のインセンティブを高めるためにメールアドレス[6]を付与し、卒業後入会した場合、同アドレスを継続して使用することを認める制度を設けている。かつては会員向けのクレジットカード『学士会カード』[7]を発行したり、会員向けの転職・就職サポート学士会ACS[8]を開設したりしていたが現在は閉鎖されている。各大学OB向けのサイトを立ち上げたりしている。この他会員にはホテルの割引制度がある。
分館
文京区本郷(東大構内)には学士会分館が存在し、夏季には野外ビアホールが盛況したが、東京大学の「赤門周辺地区の再開発計画」により2009年3月を以て閉鎖された。これに伴い東京大学本郷キャンパスの山上会館内に、学士会本郷分室が設置された。
歴代理事長
代 | 氏名 | 在任時期 | 出身大学・所属大学 | 専門分野 |
---|---|---|---|---|
初代 | 阪谷芳郎 | 1920年 - 1937年9月 | 東京帝国大学 | (財政家・政治家) |
第2代 | 山田三良 | 1937年テンプレート:09月 - 1958年11月 | 帝国大学・東京帝国大学 | 国際私法 |
第3代 | 岩田宙造 | 1958年11月 - 1964年11月 | 東京帝国大学 | (弁護士・政治家) |
第4代 | 南原繁 | 1964年11月 - 1974年5月 | 東京帝国大学・東京大学 | 政治学 |
第5代 | 有澤廣巳 | 1974年10月 - 1988年3月 | 東京帝国大学・法政大学 | 経済学 |
第6代 | 吉識雅夫 | 1988年テンプレート:04月 - 1993年6月 | 東京帝国大学・東京理科大学 | 船舶工学 |
第7代 | 團藤重光 | 1993年テンプレート:07月 - 2009年6月 | 東京帝国大学 | 刑事法 |
第8代 | 井口洋夫 | 2009年テンプレート:06月 - 2011年6月 | 東京大学 | 有機化学 |
第9代 | 松尾浩也 | 2011年テンプレート:06月 - 現職 | 東京大学 | 刑事法 |
関連項目
- 学閥
- 同窓会
- 学友会
- 学歴貴族
- アイビー・プラス (アイビーリーグ8校に、MITとスタンフォード大学を加えた全10校による同窓生組織)[2]。
- 君島一郎[9](銀行家、野球研究家。学士会館が日本野球発祥の地であることを研究・発表)
- 三田会、交詢社(同種の性格の慶應義塾大学出身者の倶楽部)
- 如水会(同種の性格の一橋大学出身者の倶楽部)
脚注
- ↑ 紹介|学士会について|学士会とは、一般社団法人学士会。
- ↑ 1886年(明治19年)に帝国大学令(明治19年勅令第3号)が公布施行され、「学士」は学位ではなく称号とされた。
- ↑ 大学令の公布前にも、早稲田大学、慶應義塾大学部(現在の慶應義塾大学)など、「大学」を称した私立学校は存在した。しかし、法的には専門学校令(明治36年勅令第61号)に基づく専門学校(旧制専門学校)であり、卒業生に学士は与えられなかった。
- ↑ 平成二十四年度事業報告書、一般社団法人学士会。
- ↑ 参加者は高齢者が多い。
- ↑ 生涯メールアドレス「****@gakushikai.jp」。但し日本国内の多くの旧帝国大学は卒業生に独自に生涯メールアドレスを付与しているためインセンティブとしてはそれほど強くはない。
- ↑ 2012.2現在、『学士会カード』の新規申し込みは受け付けていない[1]。
- ↑ ただし2007年6月現在、開設されていたのは東大OBと京大OBを対象としたサイトのみ
- ↑ デザイナーの君島一郎とは別人である。