ルイベ
ルイベは、魚介類の料理の一種。冷凍保存した魚を凍ったままで味わう。北海道の郷土料理として有名である。
概要
元来はアイヌ料理の一種で、名称はアイヌ語の「ル・イペ」( ru・ipe 融けた食べ物)に由来する。晩秋から初冬にかけて捕獲した鮭を雪に埋めて冷凍保存し、食べる際には凍ったまま小刀で切り分け、火で炙って融けかけたところで塩をふりかけて味わう。冷凍することで保存性が高まると同時に、広節裂頭条虫(サナダムシ)、アニサキスなどの寄生虫が死滅する。さらに冷凍したときに水分が抜ける過程で脂も落ち、サケ独特の脂(と匂い)を感じにくくなり、その分サケ自体の風味が増すともいう。鮭以外にもコマイなど様々な魚がルイベに加工されたが、外気で保存されたルイベは凍結と乾燥を繰り返した干物のような状態の食品だった。
アイヌ出身の言語学者・知里真志保は自著『和人わ船お食う』にて、
- 「イペ」(ipe)は本来は「食べ物」を意味していましたが、後に「魚」の意味になっているのです。同様な言葉に「チェプ」(chep)があります。これも「魚」を意味することばですが、本来は chi-e-p 、〔我らが・食う・物〕のことで、「食べ物」を意味する言葉です。それが魚を意味する言葉にもなっています。
と解説している。
現在では、サケまたはマスを使ったルイベが、北海道の郷土料理とされている。材料を一度冷凍し、解凍しないままその身を刺身のように薄く切りわさび醤油などで食べる。サケやマス以外にニジマスやヒメマスなどを使用することもあり、イカの沖漬けはしばしば凍らせた状態で食べられるが、これもルイベと呼ばれることがある。
海外の例
凍った生の魚を食べる習慣はアイヌに限ったものではなく、他の極東アジアの民族にも見られる。例えば、中国黒竜江省のホジェン族(ナナイ)は、スリアクと呼ぶ薄切りの凍った魚を食べる。
ロシアではストロガニナというルイベによく似た料理が存在している。これは上記の調理法がシベリヤや極東地域経由でロシア人に伝播したものと見られる。材料としては魚類の他、牛肉や馬肉、(魚類や肉類の生食に抵抗がある場合には)生ハムが用いられる事が特徴であり、鉋やナイフで薄く削った凍った肉を塩やコショウ、香味野菜で調味して食する。つまみやザクースカと呼ばれるオードブルに用いられる。