ざざむし
ざざむし(ざざ虫)とは、長野県伊那市などで、清流に住むカワゲラ、トビケラ等の水生昆虫の幼虫を食用とする(昆虫食)時の総称である[1] 。主に佃煮や揚げ物などにして食する。
名称
「ざーざー」した所にいる虫、あるいは浅瀬(ざざ)[2]にいる虫というのが語源と言われている。
種類
かつて河川に水利ダムや砂防ダムがなかった頃は、カワゲラの幼虫が主体だったと言われているが、現在、ざざむしの佃煮として市販されているものは、クロカワムシとも呼ばれるヒゲナガカワトビケラの幼虫が主である。ヒゲナガカワトビケラの幼虫は水中のプランクトンやデトリタスを巣の入り口に張った網で捕らえて食べるため、こうした餌がダムに蓄積された水の中で増えたことが、この種組成の入れ替わりの原因と考えられている。食用にしたときの味覚は、かつてのカワゲラが主体であったときよりヒゲナガカワトビケラが主体となった今日のほうが向上していると言われる。 市販に出ることはないが、ヘビトンボの幼虫も、地元では「ざざむし」として食されている。
少々ならず古い情報であるが、下記参考文献[3]に鳥居酉蔵によるざざむしの構成種分析結果がある。数値は生体重100匁あたりの比率である。
- ヒゲナガカワトビケラ幼虫 72.85%
- シマトビケラの1種幼虫 14.22%
- チャバネヒゲナガカワトビケラ幼虫 5.87%
- ヘビトンボ幼虫 5.73%
- カワゲラの1種幼虫 0.21%
- ヒラタドロムシの1種幼虫 0.21%
- ナベブタムシ 0.28%
- カワエグリトビケラの1種幼虫 0.14%
- ナガレトビケラの1種幼虫 0.07%
- ミズムシ 0.28%
- シナノビル(?) 0.14%
捕獲
漁期は冬で、12月から2月までの3か月に設定されている。ざざむしを取ることを、地元では「ざざ虫踏み」と呼ぶ。天竜川上流漁業協同組合では入漁料を払って「虫踏み許可証」の取得が必要となる。漁業として取る場合には、胸まである胴長をはき、足の裏にはかんじきを付けて川の中に入り、四つ手という、十字に組んだ竹に網をつけた漁具を使って漁獲するのが伝統となっている。四つ手を川下側の水中に据え、鍬で上流側の石を裏返し、かんじきで踏み動かしてざざむしを水中に流し、網の中に捕集する。藻などのごみも網に入るので、網の付いた選別器に入れて、ざざむしだけが下に落ちるようにして分離する。個人的な漁では、石の裏にいるざざむしを直接ピンセットで捕獲することも行われている。
利用
伊那市では、佃煮に調理したもの(ざざむしの佃煮)が名物郷土料理となっている。ほかに、油で素揚げにし、塩を振るなどして食べることも行われる。
脚注
- ↑ 尚学図書編、『日本方言大辞典』p994には「川螻蛄などの川虫。長野県諏訪、佐久」の方言と記載がある。
- ↑ 尚学図書編、『日本方言大辞典』p992に「長野県上伊那郡・飯田市付近」の方言と記載がある。
- ↑ 安松,1965