積集合
数学において、集合族の共通部分(きょうつうぶぶん、intersection)、積集合(せきしゅうごう)あるいは演算的に集合の交わり(まじわり、meet)、積(せき)とは、与えられた集合の集まり(族)全てに共通に含まれているような要素を全て集めることにより得られる集合のことである。
- 直積集合 (Cartesian product) は共通部分とは別の概念であるが、直積のことを単に積と呼ぶこともある。
定義
集合 A, B の共通部分は A ∩ B と記される。つまり
- x ∈ A ∩ B ⇔ x ∈ A かつ x ∈ B
あるいは
- <math>A \cap B := \{x \mid x \in A \mbox{ and } x \in B\}</math>
が A と B の共通部分の定義である。共通部分に含まれるような元の存在しないとき、A と B は互いに素であるまたは交わりを持たない (disjoint) という。また、集合の(空でない)族
- <math>\mathfrak{M} = \{ M_{\lambda} \}_{\lambda \in \Lambda}</math>
に対して、その共通部分を集合族に属する全ての集合に属する元、つまり
- <math>x \in M_\lambda \mbox{ for all } \lambda \in \Lambda</math>
となる x の全体であると定義して
- <math>\bigcap \mathfrak{M}, \quad \bigcap_{\lambda \in \Lambda} M_{\lambda}</math>
などで表す。添字集合 Λ が有限集合であるときは
- <math>M_1 \cap M_2 \cap \cdots \cap M_k</math>
などとも記す。与えられた集合族の共通部分が空集合となるとき、つまり全ての集合に共通に含まれる元が一つも存在しないとき、その集合族は交わりを持たないという。
例
P = {1, 3, 5, 7, 9} (10 以下の奇数の集合)、Q = {2, 3, 5, 7} (10 以下の素数の集合)とすると、P ∩ Q = {3, 5, 7} である。また、R = {2, 4, 6, 8, 10} (10 以下の偶数の集合)とすると P と R には共通の要素が存在しないから P ∩ R は空集合である。
実数からなる開区間の族 M = {(0, 1 + 1/n) | n は 1 以上の自然数} の共通部分は半開区間 (0, 1] である:
- <math>\bigcap \mathbf{M}
= \bigcap_{n=1}^{\infty} \left(0,\, 1 + \frac{1}{n}\right) = (0, 1].
</math> 実際、(0, 1] はどの区間にも含まれるので共通部分に含まれることは直ちに言える。一方、1 < x とするならば x = 1 + ε となる正の実数 ε が取れるが、1 / ε < n なる自然数は必ず存在して、x はそのような n に対する (0, 1 + 1 / n) に属さない。したがって上記の等式が成立する。また、同様の区間族 L = {(0, 1 − 1/n) | n は 1 以上の自然数} は n = 1 に対応する区間が空集合であるので共通部分 ∩ L も空集合、つまり L は交わりを持たない。