ストリーミング

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ストリーミング (streaming) とは、主に音声動画などのマルチメディアファイルを転送・再生するダウンロード方式の一種である。

通常、ファイルはダウンロード完了後に開く動作が行われるが、動画のようなサイズの大きいファイルを再生する際にはダウンロードに非常に時間がかかってしまい、特にライブ配信では大きな支障が出る。そこで、ファイルをダウンロードしながら、同時に再生をすることにより、ユーザーの待ち時間が大幅に短縮される。この方式を大まかに「ストリーミング」と称することが多い。

また、ストリーミング形式では配信目的のためにコピーガードが用意されていることが多く、映像や音楽をファイルに保存することを困難にさせることができる。ただし、コピーガードは視聴者の見られる環境を狭め、視聴者の合法的な利用を妨害し、競合他社の製品も排除するという設計の欠陥を故意に作り出すため批判されており (Defective by Design)、何時でも何処でもどんなデバイスでもオンデマンドで見られることを目指すニューメディア (New media) には使われないことが多い。

プログレッシブダウンロード

類似した転送方式にプログレッシブダウンロードがある。ファイルをダウンロードしながら再生するという点ではストリーミングと同じだが、HTTPによる転送が可能であるため、別途ベンダロックインのストリーミングサーバを購入する必要がない、リバースプロキシコンテンツデリバリネットワークとの相性が良いなど、安価に大規模配信できるという大きな利点がある。一方でストリーミングと異なり、再生後、ハードディスクの一時フォルダにマルチメディアファイルがアクセス可能な状態で残ってしまうため、著作権保護の観点からサービス提供者に忌避された時期があった。プログレッシブダウンロードが可能な代表的なファイル形式として、Flash動画などが挙げられる。YouTubeニコニコ動画などの投稿型動画配信サイトを始め、無料コンテンツ配信でも一般的に利用されている。最近は、プログレッシブダウンロードに帯域制御などを追加したストリーミング技術も出てきており(Microsoft Smooth Streaming、Adobe Dynamic Streaming、HTTP Live Streaming、MPEG-DASHなど)、Gyao!Yahoo!などが採用している[1]

ストリーミング専用プロトコル

IETFで標準化されており、RealMedia / QuickTime / Windows Mediaを含む多くのプレーヤーで見ることができる。
Windows Mediaのストリーミング配信に使用される。EUの独占禁止法による問題から、楕円曲線暗号を使ったDRMを含むプロトコル仕様が公開されている。MMSを再生できるプレーヤーは多いが、互換性に問題があるものもある。
  • Microsoft Smooth Streaming
MicrosoftによるSiverlight用のストリーミング・プロトコル。HTTPプログレッシブダウンロード技術を用いている[2]VLC 2.1以降がこの再生に対応している。
アドビシステムズによるFlash Video用のストリーミング・プロトコル。リバースエンジニアリングによって仕様が解析されているため、多くのオープンソースソフトウェアがこの再生及び送出に対応している。
  • Adobe HTTP Dynamic Streaming (HDS)
アドビシステムズによるHTTPベースのFlash Video用ストリーミング・プロトコル。ファイルを分割しフラグメント毎にダウンロードするという手法を使っている。FFmpegの開発版がHDSフラグメントの生成に対応している。
アップルによるHTTPベースのストリーミング・プロトコル。標準化を目指して仕様が公開されており、多くのサーバーやクライアントが対応している。
  • MPEG-DASH (Dynamic Adaptive Streaming over HTTP)
MPEGによって開発されたHTTPベースのストリーミング技術。VLCとGPACが再生に対応しているほか、dash.jsを使うことによってHTML5のMedia Source APIに対応しているブラウザでも再生することができる。
HTML5のメディア要素(video要素及びaudio要素)を拡張し、ストリーミングに対応させるための仕様案。Google、Microsoft及びNetflixが標準化を進めており、Chrome 23以降(Android版は除く)及びIE11以降がこの再生に対応している。

主なストリーミングサーバ

アドビシステムズが提供しているWindows・Linux向けのストリーミングサーバ。コピーガードが有効な動画を、PCにおける普及率が高いマルチプラットフォームのFlash Playerに配信する唯一の手段であったため、現在のデファクトスタンダードとなっている。また、Flash Playerが使えないiOSへの配信にも対応しており、Protected HLSプロトコルを使うことによってブラウザから再生可能にできる。同じくFlash Playerが使えないAndroid 4.1への配信には、再生側にAdobe Air製のアプリをインストールさせる必要がある。なお、コピーガードを使うにはプロフェッショナル版以上を使う必要がある。バージョンによって最大同時接続数やプロセス数にライセンス的な制限があるため、大規模配信する場合にはサーバー一台に対して複数ライセンスを購入し、ライセンスをスタックする必要がある。
  • Red5
Javaで書かれたオープンソースのFlash Player向けマルチプラットフォーム・ストリーミングサーバ。ライセンスはApache License 2.0 (LGPLv3から変更された)。RTMPによる動画配信、RTMPEによる暗号化動画配信だけでなく、Flashの共有オブジェクトやRemotingなどにも対応している。ただし、プログラミング言語はJavaであり、FMS向けにActionScriptで書かれたサーバーサイドスクリプトは直接動かすことができない。
  • IIS Media Services
マイクロソフトが提供しているWindows向けのストリーミングサーバであり、Windows Media サービスの後継製品。コンテンツ開発用エンコーダ等も無償で配布されている。コピーガードが有効な動画は、Microsoft製品以外での視聴ができないため、Windows以外のPCやモバイルデバイス等への配信が難しい。
  • Helix Universal Server
リアルネットワークスが販売しており、RealServerの後継製品となっている。配信可能なメディア種類がReal Media、Windows Media、Quick Timeと豊富であり、プラットフォームとするOS種類もWindows NT、Windows 2000、LinuxFreeBSDSolarisHP-UX等幅広い。
他社製品のコピーガードには対応していない。独自のコピーガードHelix DRMがあるものの、これを使うとReal Player以外では見ることはできないため、使われることは少ない。なお、リアルネットワークスはプレーヤ側において、DRMの相互運用性を確保するために、他社製品のコピーガードに対応しようとHarmony技術を開発したことがあるものの、アップルからの訴訟の可能性によって開発を停止している。
  • Helix DNA Server
リアルネットワークスが開発したHelix Universal Serverのオープンソース版。独自のライセンスを適用している。
Winampの開発、配布先と知られているNullsoftが無償で提供している。
プラットフォームはWindows 95/98/Me/NT/2000/XP/2003からFreeBSD、 Linux、Mac OS X サーバ、そしてSolaris 2.x サーバ(Sparc版)と対応OSも幅広く、バイナリーでの配布となっている。
MP3形式のデータをストリーミング送信可能である。また、プラグイン導入済みWinampとSHOUTcastサーバの組合せでライブ送信が行なえる。
MP3形式のストリーミングが可能なオープンソースのストリーミングサーバー。
  • Darwin Streaming Server
  • QuickTime Streaming Server
  • VLS (VideoLAN Server)
VideoLANプロジェクトで開発されているオープンソースのストリーミングサーバー。現在、VLSのほとんどの機能はVLCにも実装されている。
  • VLC (VideoLAN Client)
VideoLANプロジェクトで開発されているオープンソースのマルチメディアプレーヤ。GUIインターフェースだけでなく、コマンドインターフェースやWebインターフェースも持っており、ストリーミングにも対応している。HTTP、MMSH、RTSP、Icecastなどのプロトコルでストリーミング出力が可能。
  • FFserver
FFmpegに含まれているオープンソースのストリーミングサーバー。HTTPとRTSPに対応している。
P2P技術を使ったオープンソースのストリーミングシステム。送信機能は無く、中継機能のみ持っている。RTSPやMMSの中継に対応している。

ライブストリーミング

ストリーミング技術を応用し、DVカメラなどを使い、コンピュータのネットワーク上に流すことでライブ配信すること(ライブストリーミング)も可能になった。これにより、景勝地・被災地・(彗星を初めとする)天体観測のライブカメラ映像・アマチュアバンドのライブ映像・既存メディア(ラジオやテレビ)、これらもネット上でリアルタイム放送する事が可能となった。従来から存在したテレビメディアの様な複雑な放送認可手続き・審査・取得も必要としない為、ネットにて擬似的なラジオ放送、およびTV放送を開局可能であり、個人や小規模な各種法人団体、既存のラジオ放送局(放送局スタジオ内のライブカメラ映像とセットで流してTV放送化)も積極的に参入している。前述の通り、(放送コンテンツの著作権関係さえクリアしていれば)規制の殆ど存在しないメディア形態である為、機材さえ用意すれば刑務所の中までネットワーク中継をすることも可能である。

短所としては、下記が挙げられる。

  • ライブストリーミングの場合、既存放送メディア同様、視聴者が放送時間を忘れて目的の番組を見逃す事がありえる。
  • ライブストリーミングと非ライブストリーミング(放送時間の制約が無いオンデマンド・コンテンツのストリーミング送信)共通の欠点として、ネットTV放送側が映像画質の仕様を策定する際に多くの視聴者獲得を優先させる(低スペックPCや低速ナローバンド通信回線接続PCでも視聴に耐える様、画質・画像サイズ・映像フレーム数を低めにする)か否か判断に悩まされる。

ライブストリーミング配信プラットフォーム

ライブストリーミング配信のためのプラットフォームが存在する。 サービスの詳細については、ライブ配信を参照。

音声のみは、インターネットラジオ#利用者による放送配信が可能なものを参照。

関連項目

参考文献

  1. 9 特別インタビュー - ヤフーに聞く、Silverlight採用の理由
  2. MSDN IIS Smooth Streaming について