音の壁
テンプレート:出典の明記 音の壁(おとのかべ)、あるいは音速の壁とは、航空機にとって、音速(マッハ1)付近の速度で飛行が困難となる状況を表す。公式記録として音の壁を突破した最初の人物は、チャック・イェーガーとされる。
概要
飛行速度が音速に近づくにつれて、空気の圧縮性の影響から生ずる造波抗力の急増、翼表面に生じる衝撃波の後流における流れの剥離、その他空力変化や空力弾性的な問題が生ずる。第二次世界大戦ごろから1950年代の飛行機にとって、音速を超えることがひとつの課題であった。そのため音速を「音の壁」と称し、音速を超える事を「音の壁を突破する」と形容するようになった。
なお、音の壁がことさら強調されたのは、航空機の分野である。砲弾、銃弾に関しては、既に19世紀にはその速度は音速を超えていた。
ジェットエンジンの登場と性能向上による推力の増加、後退翼やエリアルール等による抗力の低減技術により超音速飛行が実現した。
有人機が初めて音速を超えた公式記録は、1947年10月14日、チャック・イェーガーの操縦するX-1実験機によるものである。それまでは、「物体が音速を超える瞬間には、様々な現象が起きるのではないか?」とする説が数多くあり、「大気中には『音速の壁』という見えない壁が存在するために、物体が音速を超えることは不可能である」という理論を唱える人々さえいた。
実験パイロットだったチャック・イェーガーも、あらゆる現象を懸念していた。しかし、「音速の壁」を越えるのはさほど難しいことではなかった。
実際の所、航空機の機体周囲の空気の流れは一様ではないため、機体自体の速度がマッハ0.7〜1.3の間においては、周囲の気流は音速を超える部分、超えない部分が混在する。そのため「音の壁」と形容されるものの、実際には壁と呼ぶような明確な境界線は存在しない。
イェーガー以前に音速を突破したとの主張
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- 土井武夫は著書において、三式戦闘機が音速を突破したケースがあると耳にしたと著しているが、真偽は不明。同機において1945年2月17日、荒蒔義次少佐が1,000km/hを超えたと言われる記録があり、このことを指している可能性があるが、1000km/hは音速には届いていない。
- アメリカ人のジョージ・ウェルチ (George Welch) は、イェーガーが音の壁を突破する二週間前の10月1日に、XP-86で音速を破ったという説もある。なおXP-86の最高速度は音速に達していないため、急降下での加速によると思われる。この件についてアメリカ空軍は、イェーガーとX-1は"水平飛行"で音速を突破した最初の例だと述べている。
「音の壁」を破った音
テンプレート:Main 1971年7月30日、日本(全日空機雫石衝突事故)。自衛隊機と空中衝突した旅客機が、墜落時に音の壁を破った。盛岡市内の病院屋上では、この時のものと思われる大きな音が聞かれている。
関連項目
- プラントル・グロワート・シンギュラリティ(機体のまわりに生ずる楕円形の雲について)
- デ・ハビランド DH.108
- D-558-2 (航空機)
- DFS 346
- マイルズ M.52
- Bisnovat 5
- シュナイダー・トロフィー・レース
- 自動車の速度記録
- 超音速
- ソニックブーム
- 熱の壁テンプレート:Aviation-stub